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つながりを創る:南アルプス市市民活動センターコーディネーター新津幸さん(1)

10月18日(金)に開催された第3回の地方創生Miraiサロン。今回は「つながりを創る」をテーマに、現在、南アルプス市市民活動センターのコーディネーターをはじめ、様々な地域活動に携わっている新津幸さんをゲストにお招きしました。

息子2人娘1人の子ども達の写真からスタート。10代で結婚出産し、まだまだ自分自身が遊びたい年代に子育てを経験した。今から20年ほど前、子育てのお母さんと言えば家事をやって子どもの面倒を見るのが当たり前、子どもを預けておしゃれをして遊びに行くなどもってのほかという価値観が主流の中で、「うちらうちら」とばかりに、自分らしくギャルママを貫いてきた。それは、決して家事や子育ての手を抜くということではなく、やることはきちんとやった上で、自分自身も楽しむ時間を持ちたいという、ある意味で誰もが抱く普通の想いだった。

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一方で、生きづらさを感じていたという。母親が子どもを連れてはじめて公園に遊びに行く「公園デビュー」でも、まわりの母親とは距離を置く関係であった。その頃、仲良くなった同じくギャルママのえりなちゃんから、今では懐かしい携帯電話の「iモード」を使うと、いろんな友だちができるということを知り、早速ホームページをつくってみた。すると、ホームページを通じて少しずつ若いママの輪が広がっていった。そこで、「ロマンティックマザーズスタイル(通称、「ロマスタ」)というママサークルを立ち上げ、南アルプスの空き家となっていた祖母の古民家を改装して、月1回親子が集まるイベントを開催した。イベントといっても、みんなで折り紙を折ったり畑で収穫体験したりと、新津さん曰く「活動は結構地味」だったという。また、夏は、ママ達がいくつかのグループに分かれ、古民家の庭にプールを置いたりブースを出したりと、みんなで一緒にイベントを創ってきた。

このあたりが、今の市民活動につながる活動の原点なのかもしれない。

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いざ活動を始めてみると、祖母の家なので賃料こそかからないものの、どうしても光熱費はかかる。そこで、市の子育て支援課に何か支援が得られないのかと相談に行ったのが、行政との初めての出会いだったという。しかし、まだ市民主導で子育てサークルを立ち上げること自体珍しかった時代に、支援が欲しければ行政サービスを使えと門前払いに遭った。そこで、行政はダメだと見切りをつけて、自分たちでステッカーやバッグなどのグッズをつくって稼ぐことを始めた。活動が100人規模まで拡大していた中には、デザインができる人や実家が印刷関係の人がいたことが強みになった。

活動を始めて3年ほど経ち、よくコピー機を利用させてもらっていた「南アルプス市市民活動センター」で、職員の方に「こんなのがあるから応募してみたら」と言われて、賞金100万円に釣られて応募したのが「よみうり子育て応援団大賞」。なんとそこで、奨励賞を獲得してしまう。

すると、山梨県や国の目にとまり、内閣府や文部科学省などのイベントにも声がかかるようになった。その頃到来した「ママサークルブーム」の波に乗り、創刊されたばかりのギャルママ向けの雑誌『I LOVE mama』で、ママサークルのつくり方を担当することになる。そしてロマスタは、全国のママサークルの中で憧れの存在になっていった。その証拠に、東京から南アルプスの古民家を見学に来るバスツアーまであったという。

しかし、その取組は決して浮き足立ったものではなかった。単にママだけで楽しくやろうというものではなく、そこには子育てという軸がしっかりとあり、地域に認められる存在になっていこうという思いが強くあった。そのこともあり、全国から集まってくるママサークルの皆さんも、その想いに共感した人たちであり、反対に想いを共有できない人は離れていったという。

一方の行政側は、何を考えていたのか。行政には、これまでの支援の枠からこぼれていたママたちを、サークルを通じてどのように支援していくかという目的があった。それに対して、「助けてあげるということではない」と新津さんは言う。子育ては楽しいもの、それを伝えて広げていきたいというのが基本的な考えであった。振り返ると、新津さん自身も、子育てをしながら自分が自分らしくいられることを大切にしてきた。活動は広がったとしても、その想いは変わらずにあった。

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このように、全国規模で活躍していた新津さんであったが、なぜ今、山梨で活動しているのか?

ロマスタを始めて年月が経過し、新津さん自身も子育てから手が離れ始めた、その頃、自分の中で「子育て」というテーマから次のテーマへと変化し始めていたという。既に子育て支援の活動から行政との関わりが始まっていたことから、協働事業で「ファミリーフェスタ」という子育てをテーマにしたイベントをやらないかという声がかかった。自分たちだけでやるのは大変ということもあり、高校の後輩で地域をテーマに「芦安若人」をいう活動を始めた名取大介さんに声をかけた。それまで、新津さん自身はあまり「地域」ということを意識していなかったが、そういうテーマもあるんだと興味を持ったという。

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いざ、地域で活動を始めてみると、地域でチラシをデザインする人がないということや、せっかくいい商品なのに、パッケージが残念なものがあることに気づき、デザイナーチーム「南アルプス!ロコ」を立ち上げる。

しかしそれには布石がある、以前、NPO法人ちびっこはうすが発行している「ちびっこぷれす」という情報誌の取材を受けた。当時の編集長に文章が書けるのを見込まれて、取材をやってみないかと声がかかった。特にこの分野に興味があったというわけではないが、写真の撮り方も一から指導を受けて、東京にある子ども専門の写真教室にも通った。そんなこともあり、取材から写真撮影、編集などについての経験があった。

立ち上げ当初は、地域のイベントのチラシやポスターづくり、商品デザインなどの情報発信を手がけてきたが、最近は地域でのイベントプロデュースへと活動の幅を広げている。

地域で様々な活動をはじめてみると、いろんな活動をしている人がいるのにお互いにつながっていないことに気づく。そこで、地域で活動する人たちで「南アルプスコミュニティ」というネットワークをつくり、定期的に交流会を開いてきた。それが、「南アルプスWAKAMONO大学」へとつながっていく。

次回につづく

文責:佐藤 文昭(山梨大学地域未来創造センター特任教授)




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