貢献度と席順の現実ー宝塚のお茶会ー
≪前回の記事はこちら≫
お茶会のテーブルはそれぞれアルファベットと数字で表記されていた。
かなり広い会場なので、どうもブロック分けされているらしい。
そのブロックの何番テーブル、ということだ。
私はもらったチケットを凝視した。何度も見た。けれど、その謎解きみたいな数字の意味がさっぱりわからない。
すると会場入り口付近に人だかりが見えた。
(なにやってるんだろう・・・)
近づくと、座席表が大きく貼りだされている。
(よかった・・・)
あの座席表が無かったら、自分が座る席がまったくわからなかった。
よーし、どこかな?と目を凝らして見ていくと
(あった)
かなり下だった。そしてかなり端っこだった。
もう後ろに1列しかない。
4ブロックあるうちの一番端のブロックだった。
もう嫌な予感しかなかった。
だって会場の入り口扉から入ってくるのはたった一人。椿だけだ。
真ん中から入ってくるに決まってる。
当たり前だけど帰る時だってそうだ。こんな後ろの端っこになにかしらのチャンスなんてくるわけない。
お茶会が始まる前から私の心はどよーんと曇っていく。
こんなに広い会場で、あんなに前にいる椿をどうやって見るのか。
はっ!思い出した!
席取らなきゃ!
私は天使さんから「早い者勝ちだよ」と言われていた座席の確保がまだだったことを思い出した。
(のんびりしてる場合じゃない)
慌ててテーブルの空席を探す。
テーブルの上にハンカチが置いてあるのは、すでに誰かが確保した席だ。
(ここもダメ、ここもダメ・・・)
順に目を落としていくと、やっと空席があった。
残り2席。時すでに遅し。
私はせめて背中側にならない席を選んだ。
宝塚のファンはこういったときに遅刻はめったにしない。
ファンクラブ受付開始の時間は決まっていて、受付開始前から大行列ができている。
そして開場と同時にダダダッと雪崩のように入場する。
ここまでの時間のんびりと会場を見ていた私は、この争いにすっかり乗り遅れた時点で既に敗者となっていた。
◆
しかたない。せめてもの救いで背中側じゃなくてよかった。
そう思いながら会場を見渡し、澪と璃子を探す。
(澪と璃子、今日はどこに座ってるんだろう)
全然見えない。
開場がとにかく広い。おおよその位置もわからなければ見つけることは不可能だった。
こうなったら探してみよう。
開始までちょっと時間がある。会場を見て回っても大丈夫だろう。
確実に私より前にいるのはわかっている。私は時計回りにグルグルと周回してみた。
すると、前から数えたほうが早いテーブルに澪と璃子がいた。
「いたー!こんにちは」と声をかけた。
すると「あっ!会えたー!」と笑顔で答えてくれた。
「もしかして席、この近くー?」と聞かれる。
私は口をあうあうしながら「ずっと後ろの端っこ」と答える。
「もしかして探しに来てくれたの?」と璃子が笑顔で言ってくれた。
「うれしい!今日会えなかったから」と澪が言う。
気を使ってくれてる。私は瞬時に察したけれども気づかないふりをした。
「わぁ、よかったぁ。じゃあまたね」
私は足早にその場を去った。
ファンクラブ最下層の私にとって、この場所は居づらかった。前から数えたほうが早い、良テーブルに座った他の人の目線が痛い。
◆
自分の席に戻り腰を下ろすと、なんだかどっと疲れていた。
前に行った時にチラッと見えたのだが、古参ファンのAさんは前のほうのセンターブロックに座っていた。そして天使さんは前から2列目のサイドブロックに座っている。
そして澪と璃子はそれよりは後ろだが、前から数えたほうが早い席だ。
当たり前なのに、その差を思い知ることになり気持ちがついていかない。
わかってはいる。私はまったく貢献していない。さっきまで席が悪くて当然って思っていたのだから。
ただ、現実は残酷だ。探しに行かなければよかった。
そう思う気持ちと、まだこれからの伸びしろがあるタイプなのだと自分を奮い立たせる心が入り乱れる。
そうこうしているうちに、椿のお茶会が始まった。
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