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熱心な宝塚ファンとは

≪前回の記事はこちら≫


はじめてのヅカ友ができた。
とは言ってもまだ一度会っただけなのだけれど。


私にはいままでこういった会に参加しても仲良くなった人はいなかった。
たとえば以前の贔屓でファンクラブ活動をしていたとき。
お茶会の席で隣通しになったとしてもその場限りで話して終わり。
本当にうわべだけ、その場かぎりのおつきあいだ。

それは私が以前のファンクラブで大した活動をしていなかったことに起因している。決してコミュ障だから、というわけではない、と思いたい。
きっと入り出の活動をもっと頻繁にしていたらこういった顔見知り程度の人でも沢山できただろう。



ただ今の私は以前の私とちょっとちがう。
以前よりずっと自由がきく。そして以前できなかった宝塚のファン人生を全うしたいという強い思いがある。


ちなみにこの全うしたい、という思いは「どうなりたい」ではなく「思ったことを自分なりに制限なくやってみたい」ということである。


宝塚を好きになると、どうしてもファン活動に制限が出来てしまう。

たとえば通常年に数回公演がある。
兵庫の宝塚大劇場で約一か月、2~3週間後に東京宝塚劇場で一か月の公演。
そして次の本公演までに、バウホール公演、梅田芸術劇場公演などの別箱、全国ツアー、トップになると時期によってはディナーショーやライブなどを行ったりするものだ。


宝塚のファンになると、自分の贔屓が出る公演はできる限り参加するようになる。
多くのファンはこの「行きたい」と「行けない」のジレンマに悩むことになる。
チケットが取れない、という問題もある。特に東京公演などは困難だ。
お金が無い、という悩みも大いに考えられる。チケット代は高額。学生はもちろん普通に働いている人にとっても、何度も観劇するのは厳しいもの。


そんな中でも本当に熱心なファンになると、その公演期間中ほぼすべて入り出や観劇をするようになる。
かなり重症なファンになると住居を移すこともあるらしい。実際住まいは移さないまでも一か月ホテル住まいなどは私でさえも聞いたことがある。


私にとっての制限なくというのはもちろん自分の生活範囲をおびやかさない程度のことなのだ。自分なりにおもいっきりやってみたい。
なぜならトップスターというのはいつ退団してもおかしくない、夢の世界の人なのだから。



次の観劇日がやってきた。
入りの時間になり、私はキョロキョロとあたりを見渡し天使さんを探していた。

すると遠くに天使さんらしき人がチラッと見えた。
あっ!いた!

嬉しくて駆け寄ると、天使さんは大勢のお友達に囲まれている。
みんな椿のファンクラブの常連さんらしい。
仲良さそうにキャッキャと盛り上がっている。

私はちょっと気が引けた。
あの時やさしかった天使さんだもの、そりゃお友達もいっぱいいるよね、と。

すると天使さんからも私が見えたのか、輪の中心から手を振ってくれた。

「こんにちはー!来たのー!?こっちおいでよー」

私に向かって叫んでくれている。
いいのかなぁと思いつつ近寄ってみると、天使さんはお友達に私を紹介してくれた。

「あ、はじめまして」

するとみんなものすごい笑顔で優しく出迎えてくれた。
この時初めて大阪の人って打ち解けるの早いんだな、と気づくことになる。
関東方面では一度や二度会ったくらいの人に、こんなに親し気に話しかけることはほとんどない。


「じゃあ一緒に並ぼう」

天使さんのお友達はそう言って私の手を引きファンクラブの列に並ばせてくれた。

みんな気を使って色々話しかけてくれる。そうして私がこの会にあまり慣れていないことを知ると、色々なことを教えてくれた。



話しを聞いてみると天使さんをはじめお友達の皆さんは、ほとんどの入り出に通っている超常連さんだということがわかった。
皆さんこのあたりに住まいがあって電車で数分の距離らしい。

例えばお稽古の入り出時間の連絡が来ると、速攻で支度をして出れば間に合う。本当に近くに住んでいる人は、不安定な待ち時間を家で待機をしているそうだ。
もう東方面に住まいがある人が敵う相手ではないことは明白だった。

そして椿に関しても本当に色々知っていた。
ただ新参者の私がいることで、その場ではかなり言葉を濁して話していたのがわかる。

それはそうだろう。私だってもし反対の立場なら警戒するもの。

とにかく私はこの仲間に入れてもらえたことで椿のファンクラブ活動に弾みがついたことは確かだ。
未知のファンクラブ活動において、知り合いがいるというのは心強いものだ。


この日の入りは前回の緊張感から解き放たれて大いに楽しんだ。

椿が車から降りて歩く姿も、楽屋口でサッと手を振って素早く入っていったことも、そして口元を真っすぐにしてニコリともしなかったことも。

ぜんぶ常連さんたちが私の気持ちを代弁するように
「今日もいつもの椿だったね」と笑って言った。










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