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自己欺瞞の果てに  ワンダと巨像考察

(この記事はワンダと巨像のネタバレと妄想を大いに含みます)

たまに自分の過去記事を読み返したくなる時がある。
その時の熱量がそのまま感じられて、読んでいて微笑ましくなるからだ。
しかし「ワンダと巨像」について書いた最初の記事だけは読むのを避けてきた。初投稿だから文が拙そうだし、恥ずかしいぐらいの勢いで書いた覚えがあるからだ。
ところが、意を決して読んでみた結果気になったのは、文の拙さや勢いなんかではなかった。

「ワンダくん、覚悟ガンギマリすぎない???」
ということで今回は覚悟ガンギマリ美青年こと、ワンダくんについて考察していきたいと思う。初投稿ぶりにワンダについて書くので、原点回帰というか、なんか嬉しい。(前回のワンダ記事↓↓)

まずワンダの覚悟キマリ具合を再確認するために、ドルミンと結んだ契約の内容を今一度振り返ってみようと思う。ワンダがドルミンに求められた条件は以下の二つだ。
①16体の巨像を倒さなければいけない
②倒せても代償は重い(呪いにより容姿が悪魔のように変貌し、体が蝕まれる)
そしてこの二つと引き換えに手に入ることが
「モノちゃんが生き返る」
巨像倒せても、代償重いの???キツくね?????
①の条件をクリアしても、②によって死亡する可能性が高いこの理不尽な契約を、ワンダは即答で受け入れた。

あまりにもキマリすぎている。
いくら好きな女のためとはいえ、何故ここまで自分の命をなおざりにできるのか。
一体何がワンダを、これほどまでに突き動かしているのだろう。
(以下多大な妄想と主観を含むのでご注意ください)


「生き返らせたい」の真意

結論から述べると、ワンダは自己欺瞞のしすぎで、あのような覚悟ガンギマリ人間になってしまったのではないかと思う。

自己欺瞞:自己の本心を偽った行動をとりながら、しかも、それでやむを得なかったのだと無理に自分を納得させてしまうこと。

新解明国語辞典第七版

私が思うに、ワンダは確実にある一点で、自己欺瞞をしている。

その一点とは、ワンダがドルミンの条件を呑んだ先ほどの場面だ。
「生き返らせたい」とは即ち「もう一度会いたい」ということだと私は思う。
ワンダほどモノちゃんを想ってる人なら「会いたい」なんて感情当然持つはずだ。
しかし、ドルミンに提示された条件は自分を犠牲にしなければ成し遂げられないもの。そしてワンダは、こう思う。
「本当は生きてモノに会いたいが、これしか方法がないからしょうがない」
これが自己欺瞞だ。

自己欺瞞とは、自分が傷つくことから避けるための一種の防衛反応である。
生き返らせるには、この方法しかない(実際これしかない)と諦める事で、本当は生きてモノちゃんに会いたいという本心に気付かないようにしている。
自分はモノちゃんに会えないという事実から、心を傷つけないようにしている。

そして自分の心を騙し、抑え続けた結果、生きたいという本心すらも忘れてしまったワンダは「彼女を生き返らせるためなら自分の命など、どうでもいい」
という強力な自己暗示にかけられてしまったのではないだろうか。
そしてその自己暗示が、劇中のワンダを突き動かしていた本質であり、覚悟という名の自己犠牲に結びついてしまったの原因なのだと思う。


死に際に、暗示が解ける

私はゲームをプレイしていた際「どんだけモノちゃんのこと好きなんだ…」とか「どんだけ自分の命に興味ないんだ…」とかワンダに対して色々思っていた。
それは今も変わらないが、自己欺瞞の果ての自己暗示が、彼を巨像狩りという無茶な戦いに奮い立たせていたというなら、少々寂しくなる。
そして、死に際の光から逃れるあの瞬間に暗示がやっと解け、腕力尽きるまで生に執着する最期は、巨像を倒した時と同じような悲壮感に見舞われる。

散々自分の命を軽視してきたワンダが、生きてモノちゃんに会いたがっている

覚悟ガンギマリとか茶化した言い方をしてきたけれど、本当はただただ大切な人と生きたかった普通の青年なのだとわかるこの最後の抵抗は、見ていて辛いものがあった。

全てを投げ捨て、成り立つ献身

私は以前の記事で、ワンダとモノちゃんの関係についてこう記している。

私はこの二人の関係及びワンダの献身に尊さを見出してしまった。(中略)
しかし、全てを投げ捨て、成り立つ献身に尊さを見出していいのだろうか。

綺麗な言語化すぎて、過去の自分を褒めたい。
私には、大切な人のために全てを投げ打つワンダの行動を、肯定して良いのかわからない。自分の命すらも諦めるしかなかったワンダを、軽々しく尊いと思って良いのかわからないのだ。

私は未だに、これらの結論を出せていないが、彼の行き過ぎた自己犠牲に救いがあったエンディングを見て、心から思ったことは

「ああ、よかった。」

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