酔い続けられるのは"夢"だけなのかもしれないね
心に届く言葉と届かない言葉が
自分の中にあることに、私は気づいた。
夢・希望・友情・愛・成功・努力・勝利・家族……
そういう単語を並べられると、心を閉ざしてしまうようになったのはいつからだろう。
上記の羅列された言葉を使って、巧みに理路整然とすらすらすらすら話す人を見ると心がしおしおと萎んでしまう。
見せかけの言葉ではなく、自らの言葉で話している人がすき。
言い淀んでしまっても、つっかえたとしても私は全くかまわない。
まるで頭よりも心が先走ってしまうような人の話す言葉に、その姿に、惹かれてしまう。
目の前の貴方はどういう風に話す人に感情を動かされる?どんな言葉がすき?
確かに心が弱っているときは、力強い言葉に心が傾きそうにもなる。
もしくは、私を甘やかしてくれる程に単純で優しい言葉にも。
だって救われたいから。
だって"安心"が欲しいから。
誰しもが辛い孤独でいっぱいになる夜があると思う。
身近な人の言葉よりも会ったこともない人の言葉を求めてしまう。
渇望してしまう。
だってすごく辛いんだもん。
貴方だけじゃないと言ってもらいたいから、私だけは貴方を理解してあげるから、大丈夫だよって自分を肯定してもらいたくて。自分だけの都合の良いヒロインを追い求めるかのように。
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色んなジャンルの本を手当たり次第、無作法に読みまくった先に待っていたのは、
夢とか希望といった表の言葉の裏にある
"人"の想いだった。
数年前に、私は高田賢三の自伝と出会う。
『夢の回想録』
ファッションデザイナーとして著名な彼は、亡くなる3年程前に日本経済新聞朝刊に、自らのことを語っていた。
本書はそれに加筆し書籍化したものだ。
賢三の幼少期の生まれ故郷、
兵庫県・姫路市の原体験から始まり、
文化服装学院「花の9期生」の仲間たちとの青春時代、華やかな光と翳が混在するパリでの活躍、自身のブランドを売却することになった事の顛末が語られている。
当時の日本やフランスの文化的時代背景が感じられるのは勿論、カール・ラガーフェルドを筆頭に、賢三が関わる個性的な人々とのエピソードも興味深い。
きっと、ファッションについて詳しくなくても、何かを創造するのが好きな人、
興味がある人だったら
この本のなかで、彼が語ることに、そしてその想いに、強く引きこまれるのではないかと思う。
周囲と違うことをしようと、自分のなかにある想像を何とか形にしようとしたくて、でもどうすればいいかわからない、そう悩んでいる人の曇ってしまった心のうちが、晴れるきっかけにもなると思う。
少なくとも私はそうだった。
筆者の輝かしい才能とパーソナルな部分(謙虚であり陽気であり繊細であり突飛であり、一読者でも何なんだろうこの人はと知りたくなる不思議な魅力)で、ページを捲らせる。止まらない。
私が何よりも気持ちを動かされたのは、
彼が発する"夢"という言葉の無限に広がる可能性であり、イメージであり、力だった。
どこか薄っぺらさすら感じていたその言葉は、
語る人の想いによって、魔法がかけられ、
本来持っていた言葉の一面を
私に思い出させてくれた。
彼は本書の始まり「夢追い人」の中でこう口にする。
冒頭から私は掴まれた、心臓部をぎゅっと。
回想録の終わり「冒険心」の中で夢という言葉とともに、彼は今後を語り締めくくる。
是非、誰でもない貴方に読んでほしい。
現在、入手しづらい状況(絶版で高騰化)だけど、図書館で探してみて。
どんなに強いお酒もいつかは酔いから醒めてしまうけれど、自分の持つ夢だけは永遠に醒めないのだと教えてくれるから。
貴方の中の絶対的不可侵領域には
誰も手を出せない。
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みらきゅるうな日々を貴方と過ごしたい。
そう願ったから、
私は自分の名前"みらきゅるう"の横に
Virtual Dollと付け加えた。
バーチャル・ドール……?
お人形だけどバーチャル?
それってどういうこと?
…………時代に取り残された
おきあがりこぼしのお人形だけど、
私はずっと先の未来まで
貴方と同じ星で存在し続けたいから、だから、
夢でもし会えたら、
私に笑いかけてね。
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