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妖怪ボーイ
「やあ、わらちゃん」
今日も、玄関ではなくリビングの窓が開けられて、大きな頭がぬらりと入ってくる。にこにこと笑う好々爺は、家具のひとつも入っていない空っぽなこの部屋によく出入りをする妖怪だった。
「調子はどうだい?」
片手に瓢箪水筒、もう片方の手に膨らんだ巾着を携えている。
水筒は酒臭いが、巾着の方からはいい匂いがした。廊下をごろごろと転がって遊んでいたわらべは、弾けるように飛び上がって巾着を出迎えた。
「小豆飯だ!」
そっと撫でるように触れると、巾着越しにじんわりと温もりが伝わってくる。温かい、とうっとりするわらべに、ひょっひょっひょと爺が笑う。
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