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ネット依存の回復ステップvol.4「過剰使用への対策を立てる 」

ネット依存の回復ステップ第4回は、「過剰使用への対策を立てる」をテーマにご説明していきます。

カウンセリングでは認知行動療法や応用行動分析学等の心理学の理論に基づき,ネット中心の生活スタイルからスモールステップで生活習慣の変容を図っていきます。

ネット使用を減らすあるいはやめることができると,最初はやめられていることを嬉しく感じて,よい気分で過ごすことができます。しかし,ふとしたきっかけやストレスを感じる場面で「ネットやゲームをもっとしたい」という欲求が再び生じることがあります。
こうした場面を乗り越えるには,事前に対処方法を考えておくことが重要です。ここでは,対策の立て方やそのポイントについてご説明します。

なぜ対処法を持つことが必要なのか?

「ネットやゲームをしたい!」という欲求が起こったとき,少しの欲求であれば「また前のようになりたくない」と考えて気をそらしたり,我慢したりして何とかやり過ごすことができるかもしれません。

しかし,日常を退屈に感じて刺激を得たい気持ちが強くなったり,イライラやストレスを感じる場面にぶつかったりすると,その瞬間に冷静に考えることができず,手っ取り早くストレスや欲求を解消できる手段を選んでしまいます。その結果,再びネットやゲームを過剰に使用する可能性があります。

そのため,あらかじめ再び過剰にネットやゲームをしそうな場面を想定し,その場面での対処法を具体的に決めておけば,その時に適切な対処行動を取りやすくなります。

過剰使用に至る引き金を整理する

ネットを使いたくなる引き金は人によりさまざまです。引き金は,内的なものと外的なもの2つに分けることができます。

内的な引き金:ネットをする直前の自分の考え,気分,身体反応
外的な引き金:ネットをする直前に誰といるか(人)
       どこにいるか(場所)
       いつネットを使いたくなるか(時間)

例えば,1人でいるときに退屈な気分になると,つい手元にあるスマホでゲームをしてしまうという場面では,内的な引き金は,「退屈」という気分や「暇つぶしをしたい」という考えになります。「ソワソワする」といった身体反応があるかもしれません。外的な引き金は,「1人でいるとき」,「手元にスマホがある」という状況になります。

危ない状況における適切な対処法を考える

どんなものがネットを使う引き金になるかを整理したら,次はそういった引き金を避けるために出来ることを考えます。また,引き金に遭遇した場合にどうするかを考えます。

上記の例では,1日のスケジュールを立てて退屈な時間を作らないようにする,手元にスマホを置かないようにスマホを置く場所を決めるなどが考えられます。1人きりで退屈な場面に出くわした場合は,スマホゲームをする前に友人に電話をしてみるとか,好きな本や漫画を読むなど自分にとって有効な手段を準備しておきます。

また,有効な手段がその場で思いつかない,すぐに実行できない場合は,1人で抱えずに信頼できる人にまず相談することも大切です。使用したくなったときに誰に相談するかも事前に決めておきましょう。

自身で考えた対処法だけでなく,フィルタリングやペアレンタルコントールといった機能,スマホ依存対策のためのアプリなども併せて活用するとさらに良いです。(機能の詳しい説明は今後ご紹介していく予定です)

自分の人生の価値に沿った行動を取る

本来であれば,自分にとって本当に価値のあるものは何かを明確にし,その価値観に基づいて行動できることが理想です。
これは,認知行動療法の1つであるアクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT:Acceptance and Commitment Therapy)においても言われていることです。

ACTでは,ネガティブな思考や感情にとらわれずに,自分の価値や信念に沿った行動を自ら選択し,行動していけるようになることを目指します。

ただ,本当に自分はどうしたいのか,何を大切にしているかを認識するのは難しいことです。特にネット依存の状態に長く居続けると,自分の価値観が分からなくなったり,自暴自棄になっていたりします。

そのため,1人ではなく支援者や家族とともに,回復のステップを踏みながら自分が大切にしていきたいものを見つけていくこと,これも回復に向けてやっておきたいことです。

自分のミライを切り開いていくのは自分自身。
回復した先の人生を自らの力で歩んでいけるよう,私たちもそのサポートをしていきます。

今回でネット依存の回復ステップの連載は最終回となります。
大切なテーマは連載形式で丁寧にご説明していきたいと思います。
記事にしてほしいテーマがありましたらinfo@mira-i.jpまでご連絡ください。


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