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コロナ禍:1年前の絶望から、きょうまでにできたこと


1年前、私は絶望していた。

私は、この世で必要とされていない存在なのだと、いやむしろ存在するだけで多くの人を不幸にする存在なのだと、思いつめていた。そして絶望していた。

新型コロナウイルスが世界に猛威をふるう前。
私が日本に来る外国人観光客 の通訳や 、外国人観光客を受け入れようとする国内のゲストハウス・飲食施設などをサポートする仕事をしていた。

具体的にはゲストハウスの開業から運営、集客ノウハウについての講演、本の執筆地域の多言語マップの編集・発行。地方自治体のオリンピック対策補助金ありきの収入の割合も多かった。

しかし、 空港はほぼ閉鎖。国内線も大幅減便。
緊急事態宣言というものが発令され、自分のビジネスはおろか、医療職などエッセンシャルワーカー以外の親の子供は保育園前に登園できないという状況になってしまった。

私がこれまで仕事で付き合ってきた 飲食店やゲストハウスはことごとくのれんを降ろした。 多言語メニューを作ったお店や、私が「ここはこういう立地ですのでイスラム教徒向けのメニューがあること近隣ホテルに情報提供しましょう」とか「認証を取らなくてもこういった表示をすればベジタリアンやムスリムの方でも メニューを選びやすくなりますよ」だとかそういったお話をして、アドバイス通りに沿って、そのまま利益を得ていた企業やお店が、次々と悲しい決断をした。

彼らは、私がかかわったから..売上比率の2割~8割を外国人にしてしまったから...廃業となった―――。私は、自分が疫病神なんじゃないかとさえ思えていた。 I am 疫病神。

最初の緊急事態宣言が延期されることが決定された昨年4月末、私は東京新聞の取材に対しこのように話している 。「コロナ後を見据えてオンライン勉強会などに参加したいが子供中心なスケジュールのため思うに任せない。自分が世の中から遅れている取り残されている喪失感があります」

そのなかでもやれたこと1つめ:国家資格取得

その「世の中から取り残された感」から1年。絶望の中で手探りながら、駒を進め、自分のスキルを向上させてきた。自分で「よくやれた」と評価できることは、3つある。
ひとつは、国内旅行業務取扱者の免許取得。「総合」に向けて勉強していたがそちらは試験に落ちた。しかし地域限定もしくは国内の第三種旅行業者として 開業する資格要件を満たすことができた。

これは自信にもなったし、達成感も得られた。
今年は8月の「総合」に再挑戦する。「総合」がとれたら、航空券の手配もできるようになるので、やれることが増える。今すぐ役に立つことではないけれど、自分の人生で使えるカードが増えた。

そのなかでもやれたこと2つめ:語学学習の継続

次は、継続的な英語の勉強。具体的に TOEICのスコアを取ったというわけではないか オンライン英会話を週に1回のペースで継続できていることを、自分で自分を褒めてやりたい。
英会話の相手は 言語交換マッチングサイトで知り合った。一番話す相手は、アメリカ在住の20代後半の黒人男性で、とてもポジティブな考え方の持ち主だった。彼のおかげで 私が前向きになれたと言ってもいいだろう。

言葉とは話さなくなると一気に忘れる。強みであったインドネシア語は目も当てられない状況かもしれない。インドネシア語のラジオ「El-shinta news and talk」ならばインターネット通じて聞けるので、やれるところからやるしかない。

そのなかでもやれたこと3つめ:日雇い労働で自己肯定感GET

そして最後の3つ目、「私がこの世で役に立たない存在だ」という自己否定感から解放してくれたのが、「Caster Biz Visit」の仕事だった。企業への訪問型事務アシスタントサービスを提供するもので、私の仕事は、都内の様々な企業をスポットで訪問し、事務業務を行うものだ。時給おいくら+交通費全額というおちんぎんで、家族や友人には「日雇いOL」と説明している。
時間の切り売りと言ってしまえばそれまでだが、このCaster Biz Visitでの仕事を通じて、私の精神衛生はたちまち改善した。

仕事内容は事務業務のほか、リモートワークが続いて荒れてしまったオフィスの清掃や、備品管理、書類整理...そういったものも含まれていた。
これらの業務は企業にとって「正社員がやるには コストがかかりすぎる(=おちんぎんと生産性が見合わない)タスク」である。

この生産性のないタスク処理は、びっくりするくらい、訪問先の人から感謝されるのである。訪問先の人々はこちらがお金を払いたいくらい、いい人たちばかりだった。
こちらとしては時給同等の仕事をしているつもりなのだが、感謝、というより敬意を示されていることが、私の無能感を浄化してくれた。

また、運営元であるキャスター(本社・宮崎県、やりとりはすべてChatwork)の人たちとの距離感、微妙な絵文字の使い方、焦らせない感じが、すごく、すごく、ものすご~~~く、助かった。

(例えば職場のパワハラやモラハラで学習性無力感にさいなまされて離職した人は、こういう形から社会復帰したらいいと思う。めっちゃ自己肯定感上がる)

そのなかでもやってること3.5つめ:「選択制夫婦別姓」に向けて

4つ目にと数えるには早いので、「3.5つ(さんてんいつつ)」としよう。現在、日本国内での選択制夫婦別姓実現化に向けて、川崎市内を中心とした活動をしている。広報部門を担っており、これまでインバウンド向けに培った広報スキルが、この分野でも発揮されつつある。収益性のある活動ではないが、「週3時間・月12時間の”縛りを設けた広報”でどこまで成果を出せるか」、自分を試す機会を作ることができた。

「ティール型組織とはこれだな」そう実感しながら、知恵を絞って、複数人で動いている。「私は私の得意なことを、ほかの人はほかの人の得意なことを、合わせることで、ここまでできるんだな」そう思えるところまで来た。

I am not 疫病神

とりあえず、自分は疫病神ではなさそうだ。やれることはまだあった。案外、いくらでもあるもんだわ。

まだまだ長い長いトンネルの中にいる。ともしびが見える。「出口まであと●メートル」という表示板のように「ワクチン2回打つのはこちら」という長い行列の表示板がもうすぐ見えてくる気がする。長い長い行列の先頭に立って、腕をめくり、2回目の接種をとったあと、自分は何ができるだろうか。

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仕事で撮影した奴