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ドラマで勉強「虎に翼」第66話・67話)

ドラマの進行が早く、もうすぐ私が生まれた年になるのでは?とドキドキし始めました。

今の寅子は法曹界のアイドルになっている。
日本で一番有名な裁判官。
調子こいてサインなどしていれば、それは嫉妬を買うだろう。

寅子は気がついていないかもしれないけど。
アイドルになれたのは「女性」だからだ。

性別による差別に立ち向かっていた寅子だが、性別によって持ち上げられている。

でも、これは昔ならあったこと。
私はコムデギャルソンというブランドが好きなのだが、理由は幾つかある。

「ファッション」というジャンルを知らなかった。
服飾専門学校に通っていたバイト仲間に「流行通信」を見せられた。

それはパリコレクションの特集で、最初のページにコムデギャルソンの写真があった。

「これは洋服なのか?」と衝撃を受けた。
洋服だけど、芸術品であり、芸術には思想がある。
約35年前、ファッションという表現方法を知った。

デザイナーは川久保玲。

この人が「日本人」で「女性」であったことがハマった大きな理由。
外国人で男性だったら「ふーん」で終わっていたと思う。

ようやく男女雇用機会均等法が施行された頃。
クリスマスケーキ説(25歳を過ぎたら売れ残り)
「女性は腰掛け」と言われていたし、私も「2年くらい勤めて結婚で辞める」と思っていた。

実際は仕事が楽しくて18年も在籍してしまったのだが。

寅子の時代に「仕事をする女性」、つまり家の外で活躍する女性の憧れになるのは当然かもしれない。
とてもキラキラして映ったでしょう。

家庭裁判所・所長の多岐川はしたたかで、この寅子人気に乗じて家庭裁判所の理念を広げる方向に舵を切った。

寅子主催の少年部・家事部交流昼食会に誰も参加しなかったことを受け、

多岐川「周りが納得する仕事がまだ出来ていない証拠だぞ」

寅子「私はいつも確実にしっかり仕事をしています」

多岐川「それを決めるのは君ではない」

両者一歩も引きません!
と実況中継をしたくなる接近緊張感。

多岐川の言う通り、どんなに自分が頑張ったと思っていても。
実際に頑張ったとしても、評価するのは周り。

周りに評価されてこそ「仕事が出来る人」だと、私も随分経ってから気がつきました。
しかい相変わらず寅子の自己肯定感は強い。

業務以外の仕事も引き受けてしまう寅子。
つまり時間外(休日)にも仕事をすることになる。

ここで新しい登場人物・岡田将生演じる星航一と出会います。
星航一は初代・最高裁判所長官・星朋彦の息子。

仲野太賀に岡田将生をぶつけて来るのか〜
個人的に仲野太賀推しなので、優三さんの存在感が薄まるのが心配。

寅子と航一が共同でする仕事は、星朋彦が書いた「日常生活と民法」を新しい民法に合わせて内容を改稿する作業。

航一は「”あの”佐田寅子さん」と言ったり、「なるほど」を連発したり。
いちいち寅子のテンポとズレる。

なんだか、とっても、すんごく、やりずらい人。

この時間外の作業は仕事とは違う。
寅子は仕事を抜きにして法律と向き合える時間が楽しくて楽しくてしょうがない。

そしてサクッと改稿作業が終わり、星朋彦が序文を書いて出版の運びとなりました。

その間、寅子は星朋彦の経歴、航一と星家の現状を知ることになります。

この2人の作業は星朋彦が「息子・航一のお見合い」的に仕組んだものでは?と勘繰ってます。

そして航一は星家の中で優未みたいな子供だったのでは?と感じた。
朋彦に対する態度が少し斜めに見えた。

寅子が「休日も仕事になりました」と告げた時の家族の雰囲気。
流石に呆れ顔で冷ややか。
ほぼ全員が寅子に背中を向けた。

優未ちゃんとの隙間風も分かりやすくなってきました。

優未「昨日ね、宿題が終わった後にね、花江さんとお漬物を切ったの」

寅子「うん。お手伝いをしてお利口ね」「小学校でお友達は出来た?」

優未「うん」

寅子「そか、良かった。学校のお勉強も頑張ること」

優未「はい」

話が広がっていない〜。
せめて「お友達の名前は?何をして遊んでいるの?」くらいは返して欲しかった。

「お母さんが働くと子供が寂しがり、母親として失格的に言われるのがシンドイ」という意見が多く見受けられました。

この問題は一括りにしてはいけないし、そもそも正解がない。
親と子の性質を踏まえ、個別に対応するしかない。

寅子は生活の為、自分を含めて6人分の生活を一人で支えている。
並大抵のことではない。
ただ、仮に生活がかかっていなくても仕事が好きでバリバリするタイプだろう。

子供はよく見ているし、ちゃんと分かる。

忙しいのが悪い訳じゃない(もちろん、一緒にいる時間が長ければ嬉しいだろう)
とにかく、圧倒的に会話が足りていない。
優未の顔をシッカリ見て、子供の放つ言葉に耳を傾けていない。
子供は敏感だから悟ってしまうのだ。

あけすけに言えば優未は可愛い。
しかし、法律よりは興味がなく、二人の時間を無理をして作るほどでもない。

「仕事なら寝落ちするまで時間を作れる(向き合う)」という行動(アクション)でしっかりと優未に示してしまっている。
これは寂しく感じても無理はないかも。

これまで「寅子らしくない」時期は、妊娠して過労で倒れ、仕事を辞めていた間。
たまたま戦争と重なり、思うように仕事も生活も出来ない期間。

その間、優未をおんぶして世話をしている様子が描かれていた。
でも寅子の顔は浮かなかった。
正直、子供は出来てしまったので産んだのだろう。

これを悪い母と言い切るのは違うと思う。
人の興味を持つ方向がバラバラだ。
それはその時にならないと分からないこともある。

私も自分が仕事を好きになる人間とは思っていなかったもの。
子供を産んだら思いの外可愛くて、仕事を全面的に辞めてしまった友人もいる。

自分の特性を本人が認識し、じゃあどうするか?が検討出来るといいのだけど。

猪爪家は花江ちゃん家族・寅子家族の2世帯。
助け合いながら、ほぼ一つの家族として暮らしている。

ただ寝る時は「花江ちゃんの家族」「寅子の家族」と部屋が分かれていた。
途中、優未は花江ちゃん家族と寝ていた時もあったけど、また寅子の部屋で寝ている。

この1枚の襖が「花江ちゃんは優しいけど私のお母さんじゃない。直人と直治のお母さんで、いつも一緒でいいな」的な線引きをしてしまったんだろうな。
図らずも、である。
いっそ最初からごちゃ混ぜになっていたら良かったのかな。

昔、熟年離婚という言葉が流行ったけれど。
これは仕事人間だった夫が、定年と同時に離婚を突きつけられるケースだった。

「多少生活を切り詰めても良かった。それよりも家のこと、子供のことに関わって欲しかった」

「え、マイホームを持ち、ローンや生活、学費の為に一生懸命働いてきたのに!」
どちらの言い分も間違ってはいない。

母親も子供も言い分があるし、まずはそれを吐き出す機会を与える。

その上で両者の気持ちを伝える機会があれば少しは立て直しが出来るかもしれない。
日本でもカウンセリング文化が育つといいな。

家庭裁判所は本来そのような機能もあるのではないのかな?

働く親と子供の距離感。
同時に母親の「個」として生きる権利。
女性が仕事をしたり、勉強をしたり、生きる選択肢が大いに増えた。
可能性が広がったことによる新しい問題。

子供にとって母親の存在は大きいのだ。
男女の差別の話ではない。
このテーマは女性しか子供を産めない、と言う生物学的理由が解消されるまで続いていく。

母性=母親・女ではない。
性別・血縁関係なく、母性を与える人がいれば良い。
けれど、母親が隣にいれば子は無意識に母性を母親に求めてしまうのだ。
理性を超えたところにある問題だから難しい。

個々に生き方があるように、それぞれの親子関係に誰かが意見するものでもない。自責の念を抱えながら働く人もいるだろうし、外に出れば色々な人の意見を聞くことになる。
追い詰められた母子が頼れる場所や人がいるといいな。

出来上がった本には「補修:星航一、佐田寅子」の名前が記された。
多分、航一は寅子の再婚相手となり、星寅子になる。

優三さんの「佐田」が本に残って良かった。

本は闘病中で、もうすぐこの世を去る朋彦の置き土産だ。
本人は「出がらし」と言っていたが、頑張りきって、時代も変わり。
それでもまだ若い世代に残すものがあるのでは、と最後の力を込めて作ったものだ。

それを受け、寅子は「その時にしか出来ない役目みたいなものは確かにあるのかもしれないわ」と言っていた。

多分、寅子にとって「その時にしか出来ない役目」は仕事ではなく、優未との時間を持つことだ。
子供は成長していくから。

この補修作業が楽しかったのは、法律を通して自身の意見を述べることが出来たからだろう。
航一にも「手伝いの範囲を超えていた」と言われたし。

やはり理想を掲げるスター(水瓶座)な人なんだろうな。
だから常識的な生き方や役割からははみ出てしまう。

最後になったが、序文を読み上げた平田満さん。
蒲田行進曲のヤスのイメージが強いのだけど、初代最高裁判所長官になる日が来ようとは。
ただの朗読なのに、その語り口・内容が「一緒に変わり、一緒に生きていこう」と伝えているようでジンワリした。



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