見出し画像

煮込み料理などしてみむとてするなり。

夏だというのに、急に出して来たストウブの鍋。
図書館で見つけた本の、鶏肉とキャベツの煮込み、という簡単そうなレシピを試してみたくなったのだ。
調味料は、塩だけ。水分も加えない。
鋳物は小さいオーブンです、と書かれている。

40分後、嬉しそうにキッチンを覗きに来た妙子は、
蓋を開けてあらわれた地味な見た目に“ふーん”という表情。
一転、うまーい!!!と叫んで、二回おかわり。
そう、見た目は大事だけど、地味な見た目だけじゃわからないよね。
キャベツと玉ねぎがローストされて、そのお焦げも素晴らしく美味しく、滋味深い。
最後に入れてみたペンネも、野菜と鶏から出た水分で味がしっかり染みている。
大袈裟でなく、ポトフーの専門店の味のよう。

鍋を洗う前に、グレイビーをどうするか。
定義としてはグレイビーではないのかも、ただ肉汁と書くのに何か抵抗がある。
椅子に座り、重たい鍋を膝に置き、ちょっと指で舐めてみた。
やっぱりしみじみ、美味しい!
それを見た妙子には、やめなよと言われたけれど。

昔、友達と山奥にあるレストランに行こうと約束した。
ソースを最後まで楽しんで欲しいから、ご飯をおかわりしてソースに投入して食べて欲しいという、イギリス人のご主人。
提供するのはパンじゃなく、ご飯のみ。
だからスープではない料理にも、必ずスプーンも用意しているのだとか。
自慢のソースに惹かれながらタイミングを逃しているうちに、お店を休むことになったと聞いた。
場所が都心から山奥ということ、ご主人か奥さんの占い(手相占いだったかな)も宣伝はしていないが評判だったこと、行かず終いだったことで、宮沢賢治の話のような印象となり、心に残っているお店。
思い出しながら、私は妖怪のように鍋をきれいにしてしまった。

https://www.amazon.co.jp/dp/4259565796/ref=cm_sw_r_as_gl_api_gl_i_5AHDRQ8EXG1WM319JS0F?linkCode=ml2&tag=miomiomio0f-22

この記事が参加している募集

#このレシピが好き

with 料理レシピ本大賞

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?