分かるって、嬉しいね。
何かを学んで身につけることは
すごく価値があること
なんじゃないか、って思う。
例えば私は
着物が好きで
多少、反物や柄を学んだり
していました。
昨日、四十九日の法要で
父のお骨を無事にお墓に納めた後で
精進落としに行ったんです。
姉がこんなに素敵な
隠れ家的
精進料理の料亭を
予約してくれてね。
入り口に生えていたのは
トクサ(木賊)。
着物の柄によくあるので
覚えていたのです。
姉や母たちが
「この植物ステキね。
何かしら」
と言うので
教えてあげました。
着物の柄になっている
植物を見ると
それだけで嬉しくなる。
同時に歴史を
ロマンを感じます。
むかしむかしから着物の柄として
大切にされていた、ということは
何百年も前からこの植物が
我々の祖先の身近にあった
ということでしょう。
こうして昔の人も
今の私たちと同じように
笑ったり悩んだりしながら
生きてきたんだろうなぁ、って思う。
これって着物の柄を
学んでいなかったら
知らなかった喜びですよね。
暖簾へ向かうと
藍色の美しさに
目が行きました。
この藍、
きっと手染めだな。
ああ、いい色だな、と
近づいて見たら、何と
刺し子でした。
布に興味もなければ
何となく素敵だな、くらいで
特に引き止められることもなく
終わってしまうのでしょうが、
藍染の職人さん、
この刺子をした職人さん、
そしてこれを購入して
飾ったお店の心意気が
嬉しくなりました。
中に入ると
金屏風の前に
お位牌を置くスペースが。
そして目を引いたのが
この衝立です。
サギの文様。
ちなみに
サギは「路」を表現します。
そしてハトの下に
生えているのが
沢瀉(おもだか)です。
拡大すると、これ。
私は沢瀉の文様が
とても好きなのです。
三つの葉が槍みたいなので
「勝ち草」なんて言われて
武家に好まれたこの文様。
勇ましいのに
可愛らしくて
一度見ると忘れられないでしょう?
私の生家では
昔から母が
「私たちは武家の末裔だから」
と言っていて、
それ故に着物の着方も
好みの柄も
京の方、つまりお公家さんとは違うんだと
聞かされて育ちました。
だからでしょうか。
武家が好んだ、なんて言われると
まるで私のためにあるような
気分になってしまいます。
「ああ、沢瀉だよ。
珍しいね」
と私が言ったら
姉が
「詳しいね〜。
さっきの(トクサ)と言い
何でそんなに知ってるの」
と、びっくりしていました。
優秀な姉に褒められると
それだけで嬉しい。
チビはお箸入れの柄が
気に入って、
全員に頼んで
貰っていました。
ああ、そうだね、美しいね。
お母さんね、全部の柄名がわかるよ。
意味も分かる。
全部、伝統的な柄だよ。
チビはどれが好きなの?
それは束熨斗(たばねのし)だね。
※下の左から2番目。
色が柔らかで可愛いね。
お母さんは、これかな。
源氏香(げんじこう)。
※下の1番左。
よく見るようで
あまり見られない柄だよ。
この色も
お母さんが大好きな赤。
そんな話がチビと
出来るのも嬉しい。
勉強してきたから
模様の意味が分かって
生地の美しさが分かって、
それを選択されたお店側の
おもてなしへの想いが理解できる。
これってとても嬉しいな。
たぶんね、
普段生活して行くには
あまり必要のない知識や眼、
なのかもしれませんが
このゆとりが
私を豊かにしてくれている
気がします。
私は例えば
科学のこととか
数学のこととか
よく知りませんが、
きっとそういった分野でも
どんな分野であっても
知識や眼があるということは
そういうことなんだと思う。
分かるって、嬉しいね。
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