日本語教師にはどうして変人が多いのか、英国在住時代から検証してみた。
日本語教師は変人が多い、というのは
この業界では有名な話です。
もちろん、
私のことではありません。
明らかに変な同僚が
自分のことを棚に上げて
「まったく日本語教師は
変な人ばかりよね」と
言っている姿は
とにかくよく目にします。
だから、
私のことではありません。
皆さんよくご存知でしょうが
私は没個性の
よくいるタイプの人間ですから。
理由としては
社会の波に揉まれずに
先輩や上司などに叱られることなく
教職に就いてしまうと、
常識を身につけないまま
育ってしまうから、
というのが一般的な説です。
ですが私はそこに
もうひとつ理由を
付け加えたいと思うのです。
日本語教師は日々外国人と
接していますよね。
だからそちらに染められて
日本人のきめ細やかさなどの
長所が薄くなってしまう
気がするのです。
私は決して変人ではありませんし
それはやはり皆さんの方が
よくご存知でしょうが、
性格が日本人らしいか、と思うと
毎日毎日、言いたいことを言い
やりたいことをする
留学生たちに揉まれて
だいぶ外国人寄りに
なっているような気もするのです。
思えば英国のナーシングホームで
介護士として働いていた
他称25歳の頃。
寮の隣の部屋の男の子が
いきなり大声で
共用スペースの廊下で
歌い始めたのが聞こえて
思わず笑ってしまいました。
それを見ていた
彼と同国人の子が
ひどく驚いて私に言いました。
「何で笑うの?
彼は練習しているんだ」
ああそうか。
公共の場で歌わないのは
日本人だけの常識なんだ、と
この時新鮮に感じた私は
当時は確かに、まだ生粋の
日本人だったのです。
今、授業中に
いきなり歌を歌う留学生が
毎回のようにいますが、
もう慣れてしまいました。
チビを学童にお迎えに行って
2人で帰る道すがら
私はチビのテーマ曲(作詞:みおいち)を
よく歌うのですが、
たまに振り向かれることがあります。
思えば日本人は
道で歌を歌わないのかもしれません。
話を英国の
ナーシングホームに戻します。
お年寄りのお食事の準備に
キッチンへ食事を取りに行った
ある日の話です。
キッチンにはほぼ全ユニットの
介護士が集まって
自分の担当のカートの
準備が出来るのを待っていました。
キッチンスタッフが
食事やらコップやらを
カートごとに置いてくれます。
ピッチャーには
ミルクが入っていました。
その日、ミルクを入れるのを
担当してくれたジョンさん(仮名)は
ピッチャーを各カートに置こうとして
「あれ?ちょっと待てよ?
こっちの方が多いな」
と、ミルクが多いピッチャーを
おもむろに掴み
口をつけて飲んでしまいました。
「ふう、これで同じくらいになったぞ。
いや待てよ。
今度はこっちの方が多いぞ」
そう言ってまた別の
ピッチャーに口をつけて
ミルクをがぶ飲み。
お年寄りが飲むミルクです。
見ていた私とインド人スタッフは
唖然としすぎて声も出せず。
真面目なドイツ人スタッフは
怒り始めましたが、
その他の国籍と英国籍の
その場にいたスタッフたちは
大笑いして喜んでいました。
さて、
このミルクがぶ飲みジョンさんは
当時30歳くらいだったでしょうか。
私にもよく話しかけてくれて
優しく明るいお兄さんでした。
ある日の午前中、
私が休憩の時間に
紅茶をもらおうと
キッチンに入ったとき
ジョンさんにいきなり
怒鳴られました。
「入ってくるな‼︎‼︎」
普段温厚で優しいジョンさんが
切羽詰まったような声で怒鳴るので
私はびっくりして
外へ出たのですが
扉が閉まる前に
苦しそうな
こんな声が聞こえました。
「ごめんね、みおいち」
どうしたんだろう。
その日の午後、3時少し前。
いつものようにお茶の準備に
カートを取りにキッチンへ行った
その日ペアだったサリー(仮名)が、
手ぶらで戻ってきました。
「キッチンスタッフが
誰もいないの。
お茶の準備がされてない。
どうしよう」
少し待ってみようか
という話になり、
暫くして今度は
私がキッチンへ行ってみました。
何も片付けられていない
汚いまま放置された食器。
誰もいないキッチン。
ポカンとしていると
別のユニットのスタッフが来たので
手分けして必要な食器だけ洗い
カートを拭き、
必要なお茶とお菓子を準備して
戻りました。
※このスタッフが
真面目な人で良かった。
お茶の後
手の空いたサリーが別のユニットに
聞き込みに行ってくれました。
どうやらキッチンスタッフは
急に辞めたらしいです。
4人くらいいましたが、
全員。
この当時のマネージャーが
ものすごく変な人だったのですが、
どうやらそのマネージャーが
ジョンさんに暴言を吐き、
怒ったキッチンスタッフが
全員、その場で、辞めたそうです。
あいや〜。
思いきりいいな〜、英国人!
ジョンさんがその日の午前中、
様子がおかしかったのは
そのためだったんですね。
とにかく
感心している場合では
ありません。
お茶はなんとかなりましたが
夕食、どうするの?
その日の夕食は
時間になっても
出来ませんでした。
カンカンに怒る、お年寄り。
本当にどうすんだ、これ?
そこで呼ばれた
リツさん(仮名)。
リツさんは
フィリピン人の
料理が大好きな男性です。
ちなみに既婚者ですが
奥さまと子どもが国にいるのを
いいことに、
大っぴらに金髪の
英国人介護士と
不倫しています。
リツさんはその日
オフでしたが、
ホーム側に呼ばれました。
「今から200人分の
お年寄りの食事を作ってね」
もちろん、
調理師の免許など
持っていないリツさん。
めっちゃくちゃな
無茶振り。
ですが、
さすがリツさん。
作りました。
200人分。あるもので。
ちゃんとペースト食も。
中には糖尿病で
糖尿病食の人もいたのですが、
免許持ちの正規スタッフでも
元からカロリーコントロールなんて
しないんですわ。
毎日、日本のより甘いケーキが
出ちゃうんですわ。
どんなケーキにも
カスタードクリームを
ドロッドロにかけてね。
夕食を待ちに待った
お年寄りの皆さん。
ようやく呼ばれて食堂へ。
出てきたのは
ゴッテゴテの
フィリピン料理でした。
私はその日
給仕をしていたのですが、
とあるマダムにジェスチャーで
呼ばれて伺うと
何とも苦々しいお顔で
「今まで食べた中で
一番まずいわ」と
仰いました。
私はフィリピン料理が
大好きなのですが、
生粋の英国人のそのマダムの舌には
合わないようでした。
リツさんはその日からしばらく
お年寄りの食事を
作り続けました。
ゴッテゴテのフィリピン料理を。
あの〜
一応、こちらは
超高級ナーシングホームです。
無免許で英国料理を作らない
コックの発見は
ありがたかったですが、
問題は、食器洗い。
介護士の皆さん、
自分の分のカートを取りに来て
カートがセットされていないと
ぼんやりしてしまいます。
誰かがやってくれるまで
ひたすら待っています。
おいゴルァ。
キッチンスタッフ全員、辞めたんですよ!
食器洗いやカートの準備を
してくれる人なんていないんですよ!
自分でやれやゴルァ!
仕方なく私が
食洗機を回して
カートをささっと拭き、
「適当に置くから
あとは自分でやりなおしてね!」と
全ユニット分のカートを
準備したら
「みおいち〜💕
私、出来ない〜💕
ねぇん、やって〜ん💕」と、
殺到する人々。
外国人は
手がかかるな。
そしてしばらくの間
なぜか
不倫無免許コックの
リツさんとともに
私が無免許キッチンスタッフに
大抜擢されました。
なんでやねん。
こちとら英国の「介護」を学びに
わざわざ渡英したのですが。
「みおいち〜💕
貴女しか出来る人いないのよぅ💕
ねぇん、お願い〜💕」と
日々お世話になっている
シスター(ホールマネージャー)に頼まれ
暫くキッチンをやりました。
外国人のこのいい加減さ、
何やねん。
と、まあこんな訳で。
大抵の外国人は
かなり適当なのです。
こんな適当で楽しい外国人たちに
帰国後も囲まれているのです。
そりゃあ、
noteで歌くらい
歌うようになりますわね。
変なことを言ってくる輩も
たくさんいますので
気も強くなります。
いちいち気にしていたら
全員を嫌いにならないと
いけません。
日本人のきめ細やかな優しさは
とても素晴らしいけれど、
そういう意味で
外国人のヘンテコだけど
それが許される大らかさ
心の広さというのは、
ストレスが溜まらないで
いいなと思います。
いきなりその日に辞めても、
無免許で料理を提供しても、
仕事をしないでボーッとしていても、
イライラされない。
悪く言われない。
ギスギスしていない。
いや、
イライラさせるし
悪く言われるし
ギスギスしていても、
それが日常茶飯事なので
大ごとにならない、と
言った方が正しいでしょうか。
変、と言われれば変だけど
楽しくて良い面も
あるんじゃないのかな、
と思います。
あ、私は変じゃありませんけどね。
わざわざ言わなくても
周知の事実でしたね。
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