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『おみくじ』のはなし

小さいころ、『おみくじの効力期間は自分で決めていい』 とテレビで紹介されていた。【大吉】なら来年まで、【凶】なら1時間だけ、と決めちゃっていいんですよ、結局おみくじなんて個人の気の持ちようだから‥‥といった、なんか「そりゃそうかもしれないけどサ‥‥」な説明だった覚えがある。

もっと記憶の海をたどってみよう。

そういや『おみくじを結ぶときは左手(=効き手じゃないほう)で結ぶと運気がよくなる』なんてことも紹介されていたな。"利き手で結ばない"という修行を達成すれば、そのご褒美としてご利益が‥‥みたいな話だった気がする。

あとは『おみくじをすぐ引きなおしてはいけない』ってのもあった。引きなおしは神仏の啓示を信じていない態度とみなされるのが理由らしいが、もうここまでくるとビジネスマナー講師と同じニオイがして、本当の正解はよくわからない。

よくわからない‥‥といえば、おみくじの序列もまだピンときていない。【大吉】が最高で、【大凶】が最悪なのは納得だが、【小吉】・【末吉】・【吉】・【中吉】の序列はいつも覚えられない。

「たしか自分にとって意外なやつが良かった記憶があるが‥‥【吉】がこの中では最良か?いや、その裏をかいて【中吉】だっけ?」とよく悩んでいたが、ある日【平】という新勢力をひいてしまってさらに混乱したこともある(ちなみに【平】が出るおみくじは京都の下鴨神社などにある)。

とはいいつつも、僕はおみくじが好きだ。寺社仏閣めぐりは複数人でいくと単調でダレがちだけど、おみくじはそんな中で話題を作るキッカケにちょうどいい。結果が悪ければその場で話のタネになるし、左手で境内に結べば運気の面でも大丈夫だ。さらにいえば、結んで帰れば手元に残らないのでそのうち内容なんて忘れてしまう。こうしたおみくじの『揮発性』のおかげで、結果が良かろうが悪かろうが、どっちに転んでも結果オーライだ。

あ、でも昔にひいたおみくじでずっと覚えているものがひとつだけある。それは地元、桑名宗社での初詣。ひいたのは【大大吉】。え?【大大吉】?

ついにおみくじ業界にも少年漫画よろしくパワーインフレの波が‥‥このままでは【大大大吉】【超大吉】【スーパーBIG大吉】【大吉さん太郎】なんか出てきちゃって(いや、なんか逆に安っぽくなっていないか?)‥‥と考えていると、なぜか神社の人から特産品である"貝のしぐれ煮"をもらった。どうやらおみくじ番号1番の【大大吉】を引くと記念品としてもらえるらしい。

持って帰って食べたしぐれ煮はよく味が染みていて、とてもおいしかった。あの味を揮発させてしまうのはもったいないな。つぎに実家に帰れたときはしぐれ煮を買って、もう一度お茶漬けにして食べようと思った。

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