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映画館の鑑賞マナーについて

映画が大好きだ。お芝居の勉強として映画はたくさん観た方がいい。という単純な理由で観るようになったのだけど、勉強はもちろん「映画」という物語を紡ぐ媒体そのものが単純に大好きだ。

レンタルDVDを借りまくっていた時期から始まって、最近はNetflix、アマゾンプライムなど配信サイトにもとってもお世話になっている。往年の名作、見逃したあの作品。観ても観ても、本と同様自分の人生をいくらかけても全ての作品に触れることはできないのだ。
 だから一本一本出会えた事に感謝して大切にみる。合う合わないは勿論あるけれど素敵な作品が世界にはあふれている。

そんな大好きな映画魅力を最大限に味わえる場所は勿論映画館だ。上映時間を調べ、映画館に足を運び、1800円を支払い、ワクワクして席に着く。大きなスクリーン、迫力のある映像・音楽。家では再現できない環境にお金と時間と手間をかけて足を運ぶのだ。すべては大好きな映画を楽しむ為に。

 今日も素敵な映画を観てきた。前評判もよくて期待値も高く、とても楽しみにしていた映画だった。席は全体の真ん中あたり。いい席が予約できた。予告編を見て、映画泥棒の警告を聴き、いよいよ本編が始まる。
 ばたばたと、数人が遅れて入ってきた。主人公の女性がスクリーンで第一声を発する。この映画の物語が動き始めた。
「…ここ?」「違う、もっと前」、と声が聞こえた。肉声だ。セリフじゃない。前方の席に二人組が小走りで収まる。
 物語は進む。彼女の恋する相手がから電話がかかってきた。突然視界の端から眩しい光が差し込む。スマホの明かりを頼りに自席を探す2人組だ。2人がどちらも携帯で足元を照らして前に進む。そして、その2人は前から4列目くらいのど真ん中に、腰をかがめずに入っていく。もちろん視界は彼女たちにさえぎられる。字幕の映画だったらセリフが追えなかった。

 物語の冒頭は、キャラクターや世界観へのヒントが散りばめられている。見逃せないシーンが(映画の中に見逃していいシーンなんてないけど)盛沢山だ。伏線になる部分もあるかもしれない。その部分での集中を切るこの行為、万死に値する。
 勿論、上映時間にやむを得ず間に合わない場合も多いにある。その気持ちはわかる。だけど、笑いながら入ってきたり、観ている人がいることを気遣う気持ちはもって入ってきてほしい。大事なのは周りに人がいることを意識する思いやりと想像力。

 気を取り直して映画に集中。物語はどんどん進み、引き込まれ、先が気にある。あれはどういうことだ?このキャラクターの真意は? 素敵なセリフ、この役者さんの横顔いいな、この音楽好き、今のカット最高! と心の中は大忙しだ。

 「すいません、うまく聞き取れませんでした」
聴きなじみのあるsiriの声が、映画館に響き渡る。タイミング悪く、物語の中は黙りこくった主人公と好きな人とのシーンである。
慌てて止めようと、鞄をガサガサする音。電源は切ってってあんなに上演前に流れていたじゃない!なんで切らないの!なんでsiriちゃんが起動する動きをしたの! 電源は!!映画館に入ったらオフ!!!!!

 またもや気持ちを落ち着け、物語を追う。
「♪~♪~♪~」 
これまた聞き覚えのある着信音が斜め前から。Iphoneの奴だ。聞いたことある。私もIphoneだもん。今鳴ったIphoneの画面割れろ。ガサガサ、止まる。割れたのかな。

 落ち着いて、物語を…
「♪~♪~♪~」
 今度は後ろから!? もうやめてよぉ。今いいところなんだよ……。好きな人が別の女性を連れてきたんだよ。戸惑っているんだよ、この女がなんなのかをさ。Iphoneの音に翻弄されてる場合じゃないの。お願いあなたのIphoneの画面よ突然割れろ。

 ガサガサガサ。

隣の女性がおもむろに鞄を探り始めた。中にコンビニ袋が入っているらしくガッサガサ音がすごい。隣だから余計にでかい。あ、今彼が何かつぶやいた。聞き逃した!!!! え、彼女がそれに対して驚いてるけど何言ったの? え? 動揺してたらお隣さんは落ち着いた模様。注意するタイミングを逃す。

 今回の映画、セリフが無くて表情とか風景とかのシーンが結構多用されていて、でもそれってそこから色々な情報を読み取るとか空気感を感じるとか観てるこっちは忙しいんですよ。思考もしてるし。そこに! 暇なシーンじゃないの! コンビニの袋の音、お菓子の袋を開ける音って自分が開けてるときってそんな大きくなく思うけど、他人が他のことに集中してるときに鳴るとすっっっごく気になるんです! 
 特に映画観てるときとか、映画館の中って気になるんですよーー!

ガサガサガサ

次は逆の隣の人が、小さなお菓子の袋に手を伸ばす。どうやら中々開かないみたい。やーめーてー。そっと手をポンポンして注意を促してみたら、察してくれたようで、ガサガサは収まりました。ありがとうございます。

 そこからは近くで大きな物音が起こることは(そんなに)無く、物語を最後まで楽しむことができました。
 この物語の主人公の気持ちに共通する気持ちを私も持ってる。あのシーンとかこのシーンのあの気持ちに心当たりがありすぎる。エンディングロールはその気持ちを反芻し、終着点までたどり着いた物語を思い返し、余韻に浸り、キャストさん、スタッフさんをチェックするこれまた忙しい時間。
 パタパタと席を立つ方たちもいるけど私は余韻の真っ最中。

ピカーーーーーー

うっ眩しい。隣の隣の席の女の子が携帯を操作しているーーーー。隣の隣だけどめちゃくちゃ明るいな。びっくりするくらい明るいな。黒バックで流れるエンドロールだからか明かりが目立つ目立つ。隣の隣だから声がかけられない。あとスクリーンから目をそらしたくない。

ピカーーーーーー

眩しいよぉ。余韻どっか行ったよ……。あ、スタッフロール、終わっちゃった……。

客電が付き、客席の人たちが席を立ち始める。
立てない。

いつも映画が終わった後は、物語を味わった幸福感と、興奮と、余韻とで足取りも軽く、ふわふわした気持ちでいっぱいなのに。

今日の映画の中身はとっても面白かった。役者さんも素敵で、主人公の気持ちが自分の中にもあるものが多くて共感もたくさんした。思う所もたくさんあった。

だけど私は映画の途中に、映画の物語の中とは全く関係ないことでイラっとしたり、気になったりした。

 その気持ちが最後に残ってしまって、悲しさと悔しさで胸がいっぱいになってしまった。

何度も問題になっている、映画・舞台での携帯電話問題。SNSでもニュースでも、劇場でも何度も繰り返しアナウンスされてもどうしてずっと改善されないんだろう。
 本人の意識の問題なのかもしれない。こんなに気にして怒ったり悲しんだりしている私の集中力の無さが悪いのかもしれない。

でも、作品を楽しみたくて映画館に来たんだもん。おうちで一人で映画を観るときは、私もポテチをボリボリ食べたり、スマホをいじったりすることもあるけど。でも、映画館に来たんだもん。
1000円以上のお金を払って、時間を作って、ワクワクする為の準備をして映画館にいるんだもん。作品の為に時間とお金を割くから全力でその環境を楽しみにきているんだから、その環境を壊す人たちをやっぱり私は許せない。

 過去に、酔っ払いの団体が真ん中側の席に入ってきて開始早々寝て途中で隣で嘔吐されたり、エンディングまでが超楽しみだった作品でエンディングがかかった瞬間からおしゃべりをされたり、おしゃべり、騒音、迷惑行為ははたくさんあって、そのたびに悲しくなってきた。

たとえば、これが初めて映画館で映画を観る、というシチュエーションだったら。私はもう映画館に着たいって思えなくなると思います。
映画館で映画を観るって素敵だなって、思ってもらいたい。いつだって誰かの初めてや、特別な経験の場であるかもしれない。
自分がした行為が、誰かのその体験を踏みにじるかもしれない。そんなの悲しすぎる。

 どうやったら、映画のマナーはもっと周知されるのでしょうか。劇場に訴えるのか(劇場で上映が開始されたら電波をシャットダウンとかできるようにならないのかな) 拡散力に乏しいかもしれないけど、定期的に声を挙げるのか。
 何か出来ることがないのだろうか。とずっとぐるぐるモヤモヤとしています。

とりあえず
映画の上映前に電源はOFF
音の出る電子機器は電源OFF
エンドロールも作品の一部と心得る
コンビニ袋、お菓子の袋の音は気になる
おしゃべりは客電がついてから
人の迷惑になることはしない
それが守れないならそもそも劇場に来ない!

物語の世界はデリケートです。作り手の意図が細部にめぐらされています。それを簡単に壊しちゃいけない。見る側の協力があって、観客がいることによって作品は完成するのだから。その作品を本当に完成させる観る人の仕事を正しい形で全うしたら、その作品をもっともっと好きになれると思います。

大好きな映画をもっと好きになりたいから。
なって欲しいから。
映画のマナー、守りましょう。 

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