世界は見えるところまでしかない

求められるのは堂々巡りの物語
同じことを何度でも
形を変えて
語り続ける
飽きずに求めて
この世界を維持するための
自動制御装置
愛　とか　命　とか　縁　とかの
永遠のループを組み合わせて
モザイクみたいに並べる
時代に合わせてコラージュする
簡単な仕組み
そんな物語を消費しながら
続けていくための時間は
本当は存在しないのだが
何もかもが本当は「外側」にあるのに
枠の中からはわからないし
わかる必要がない
知りたくもない
永遠の物語は心地よいから
終わらせる理由もない
ずっと　ずっと　ここにいよう

「ありがとう
楽しかったよ
生まれ変わったら　また
ここで会いたいよ」

ほんとうに。

77年生きた天属の消息をたずねる。
巡らない物語をコレクションして
ケースの中に納める。
水晶の欠片みたいに尖ったそれは
時間を結晶に変えて
ひたすら　増殖する。
目的も理由も意味もない
それはただ　それだけの　物語。
純粋な物語。