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★ 話の缶詰 ★

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ちょっと読めて楽しめる、肩の凝らない、そんなお話を詰め合わせてみました。 まずはお試しにいかがですか?
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2023年9月の記事一覧

取り返しのつかなくなった話

取り返しのつかなくなった話

 それはたまたまほんの少しの時間、わたしがその部屋に一人きりになったことから起こった出来事である。
 その時ある装置のことをふと思い出したのだ。それは上司の机の引き出しの上から2番目、奥の仕切りをはずした下にあることを、なぜかわたしは知っていた。
 上司と飲みに行った酒の席で、酔った彼がふいに漏らしたのだったか、それとも一緒に得意先に向かう車の中でなんとなく話題が欲しくて彼が冗談めかして話したのだ

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さすらいの土建屋たち

さすらいの土建屋たち

 Yは、その日所用で神戸市北区の国道を車で走っていたのだが、夕暮れにさしかかった時に、崖が続くカーブの途中で奇妙な光景に出会ったのであった。
 小山を切り崩してできた狭い平地に、くたびれたおっさんが3人、車座になって鍋を囲んでいる。
 こういう場に出くわすと、素通りできない物好きな習性がYにはあった。その習性のお陰で今までも散々、どうでもいいやっかい事を背負いこんできたのだったが、この時もやはりそ

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SとTの海物語

SとTの海物語

「海へ行こうか」
「海に行こう」
「間に合うかな」
「今は午後0時15分だから干潮が始まってる頃だ」
「それだったらちょうどいい」
「今から河を下っていけばちょうど砂浜が見られる」
「蟹がいるかな」
「エビもいるよ」
「ヤドカリはあわてて砂にもぐるよ」
「楽しみだな」
「楽しみだ」
「ところであの古い市場の魚屋の裏に海があるのは知ってたかい」
「海があるのかい」
「小さな海なんだ。魚屋の裏手に駐車

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AIをいじめたら、シカトされた話。

AIをいじめたら、シカトされた話。

 今日は午後2時からFM大阪で『山下達郎のサンデーソングブック』を聞きまして、竹内まりやさんとの納涼夫婦放談を楽しみました。
 普段はお一人でしゃべってるパターンから、対談しかも奥様と、というのがなかなか新鮮なんざますよ。
 リスナーからのハガキ質問にも、いつになくちょっとムキになってるように感じられたりして(そんな大したものじゃないんですが)、あら、達さん、カワユ❤️ みたいなファンには嬉しいサ

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