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【日本ちょっとむかしばなし】

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ジーンズ姿で新幹線に乗る雪女、桃はどんぶらこと流れては来ず宅配便で届く… いにしえの日本昔話の住人も、今はこんな風に暮らしてる。かも。
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戸口に立ってる雪女はジーンズ姿でハローと言った。

戸口に立ってる雪女はジーンズ姿でハローと言った。

 玄関ドアを開けたら雪女が立ってた。彼女はジーンズ姿でTシャツを着てた。
 雪女って、真夏はまるで怖くない。なんかちょっと弱々しいし、目にも力がない。
 とりあえず上がってもらって、冷たいカルピス作ってあげたら、「おいしい」って笑う。
 「このところ酷暑でしょ」氷を噛み砕きながら彼女が言う。「夏を乗り切るだけで精一杯になっちゃって、冬もおとなしくしてんのよ」 
 そういや最近音沙汰ないなと思ってた

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調子に乗った水のはなし

調子に乗った水のはなし

 むか~し、むか~し。あるところに桃太郎とおじいさんが住んでおった。おばあさんは2年前に脳梗塞で倒れてしまい、今は麓の介護つき病院に入居中であった。
 10年以上前に鬼ヶ島で鬼からせしめた宝物と未公開株がその後爆裂したお陰で、桃太郎とおじいさんはお金には困らない暮らしができていたのである。

 ある日。おじいさんは、桃太郎にこう言った。「のう、桃ちゃんよ。おまえは嫁さんはもらわないのかね」桃太郎は

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おにぎり山の悲劇 (後編)

おにぎり山の悲劇 (後編)

 前回のお話はこちら↓

 今、おにぎりマシーンには大量のうるち米が投入され、機械がうんうんうなりながらせんべいを作っている最中である。
 やがて、米が炊き上がる香りに続き、せんべいが焼かれる醤油の香ばしい匂いがあたり一面に広がった。

「間もなく焼き上がります!整理券お持ちの方はこちらのせんべい搬出口から出てくるせんべいをお手持ちの袋一杯に詰めて下さい」

 袋を手にした人々が、いっせいにスーパ

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おにぎり山の悲劇 (前編)

おにぎり山の悲劇 (前編)

 おにぎり山は今、秋たけなわ。
 木々は色づき、きのこが各種生え揃い、ネコは枯れ草ベッドで丸くなっている。
 しかし、豊かな実りの秋を迎えているにもかかわらず、ここに一匹のびんぼー人がおった。
 「あー、働きたくニャイよー」という、にゃまけ者である。しかし、失業保険ももう切れる。ニャローワークに行かねばなるまい。

「いらっしゃいませ❤️こんにちはー」
 窓口のお姉さんはやさしくほほえみかけてくれ

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【日本ちょっとむかし話】不思議なピーチパイ🍑

【日本ちょっとむかし話】不思議なピーチパイ🍑

 今よりちょっとむかし、某島根のあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでおりました。
 二人はある日ネットの懸賞でふるさとBIG賞に当選し、岡山産の大きな桃が当たりました。
送られてきた大きなみずみずしい桃を目の前にして、おばあさんは心なしか頬を赤らめ、おじいさんはなんとなく目がギラギラしました。
 そうして二人は顔を見合わせて、そっと、うなずきました。……

❤️

 一年後。
 「じいじ~

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「電話貸して下さい」in電車(実録・関西昔ばなし)

「電話貸して下さい」in電車(実録・関西昔ばなし)

♪ぼうや~よいこだ ねんねしな~ いーまもむかしもかわりなくぅ~♪
 そんな懐かしのメロディーにのせてお送りします、今夜のお話は。

妖怪 電話貸して下さい in電車

 それは今から7年ほど前の、関西の某阪急電車の中での事じゃった。
 夕方ラッシュ時間の混んだ梅田発・特急三宮行きに、仕事帰りのわしも乗っておった。

 ほぼ満員の車内の扉近くにわしは立っていた。そして十三(関西ひとくちメモ~これは

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