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死に人達よ、起き上がれ!宴会だ!  ~ポーランド 口承文学~


 この話は1966年に現ポーランドの東側で採収されたものです。墓場に酔っ払い、なんとまぁ罰当たりな、と日本ではなにげに想像がつかないのですが(私が知らないだけとか?)ポーランドでは結構聞くんですよね。そもそも、墓場の雰囲気がちょっとちがうといいますか・・・。こちら、墓場には通年お花がわんさか飾られていて、お墓もいろいろ趣向?を凝らしたものがあり、変な言い方ですが普通に散歩コースに取り入れている人がいてもおかしくないですね。お盆などはヘッダーの写真のように、キラッキラですので。
 それにひきかえ、日本の墓場はいろんな意味で雰囲気満載、ご先祖様にお参りが済んだら回れ右!となるのですが、皆様はいかがでしょうか。
 前振りが長くなりましたが、はじまり はじまり~



  あるところに酔っ払いがいたのさ。いつも、墓場の近くをうろつきながら飲んでいたんだ。
「死に人たちよ、起き上がれ!飲み食いできるぞ!」
いつも酔っぱらいながらほっつき歩いて、こう言っていたんだよ。
 お盆の季節になったのさ。
だからか、彼岸に行けない魂が返事をしたんだよ。
「俺たちのために準備しとけよ。皆で行くからな」
この男の酔いはすっかり醒めて、村に戻り神父さんの所に走りこんだのさ。そして、どうすればいいのか、墓場に埋まっているのあれだけ多くの人の魂に、どんな料理を出せばいいのか助言をもらいに行ったんだよ。
 神父さんは聖なる油をこの男に渡し、こう言った。
「では一つ、助言を授けましょう。皿にこの油をおとし、2本の蝋燭に火をつけて聖書を手に祈りなさい。全てのドアと窓は閉めて他の家族は皆、家から出てもらうんです。貴方は一人でテーブルの前に座り、祈りをあげなければなりません」
 この男はテーブルの前に座り、祈って祈ったのさ。
 魂たちがやってきた。ドアの鍵の穴から通り抜けてね。家の中に入ると聖なる油に指を浸し、出ていったのさ。入ってきては、出て行った。
 そしてとうとう首吊り人がやってきた。皿の中に指を入れるが油がない。歯をギリギリならせながら言った。
「あそこ(彼岸)では、俺には何もない。ここでもそうなのか?」
そう怒鳴りつけると、酔っぱらいは恐怖のあまり死んでしまった。話はこれでおしまい。
 



 この世のものではないものに、下手にちょっかいを出してはいけませんね。いえ、この世のものでも、軽々とちょっかいは出してはいけません。下手すると、どちらも倍返しの目にあう可能性が大です。
 この話はキリスト教の影響を多分に受けている話ですね。
 実は今、私たちの多くが耳にしたことのあるキリスト教版ではなく、スラブ神話版の天地創造の話を読んでいるのですが、これまたなかなかユニーク。個人的になぜこれをポーランドの学校の歴史の時間で教えてあげないのかとっても不思議。ご先祖さんの歴史なのにもったいない。なかなかファンタジーで面白いのですよ。いつかご紹介しますね~。

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