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 ~悪魔の書による悪魔の召還~    ポーランド口承文学


  この話は1966年、ポーランド東部のHutaと呼ばれる場所で採収された話です。2011年の国勢調査で人口数が278人。(現在さらに数が減ってる可能性大)

 この数値だけを見ても、フォークロア魂が震えそうな立派な『村』でございます。

では はじまり はじまり~



 三人の男がいたんだ。その男たちは魔術の本を読んで、黒い鶏から卵をかっさらったのさ。卵はな、その鶏の一番目の卵じゃなきゃいけんのさ。そんでな九日、わきの下で温めたんだよ。

 一人がわきの下に卵をはさんだまま、その三人は連れだって枝道のところに来たんだ。

 そしたら卵が孵ったのさ。

 その卵から生まれた雛は、鳥の足をした男に姿を変えたんだよ。

 そして何が望みかって、聞いたのさ。

 ひとりめの男は、まだ一度も見たことのねぇ、自分の母親の姿が見てぇって、言ったのさ。

 母親の姿が現れたんだよ。

 その男は、ひどく驚いちまって、逃げ出したんだ。そんだがそのあと、頭のほうが、おかしくなっちまったのさ。

 それより一足先に逃げた残りの二人、いの一番に逃げた男は何も苦しまなかったのさ。だが二番目に逃げた男は、ちょいと頭のほうをやられたんだな。

おしまい


  鳥の足・・・ヨーロッパ文化圏で鳥の足をした男、蹄の足をした男といえば、人々の頭の中にピン!とくるのは悪魔の姿です。そういえば、最近足袋の形をした革靴なんかが売られていますが、足袋の存在を知らない人から見たら、「こやつのあしは、蹄なんかい!」と思われてしまうかも。実は私もこれを初めてみた時「ケ、ケンタウロスがいる!」と思ったくちです。


 魔法の卵をかえすのに『わきの下で卵を温める』というのは、ちらりほらりと別の話でも聞きますね。どこかにオリジナルがあるのでしょうか。

 これとほぼ同じような話が、同じ村で別の人からも採収されています。ということで、ここでは一般的なお話のようですね。


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