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東京学芸大学附属高校入試に大学が見解「辞退問題なし」

国立の東京学芸大学附属高校が、一般入試にもかかわらず生徒の自由な進路選択を認めずに入学を強要している問題で、附属学校を管轄する東京学芸大学に取材し、大学としての公式見解を伺いましたので発表します。

《初めての方は下のリンク記事から読んでください》

[第一報]東京学芸大学附属高校の異常な入試「入学確約書問題」を考える

附属運営部長の金子一彦教授「辞退できます」と表明

東京学芸大学附属高校を管轄する東京学芸大学に、大学としての附属高校問題に関する公式見解の取材を申し入れていました。

12月25日、取材申し込み対して東京学芸大学附属学校運営部長の金子一彦教授が応じ、公式な回答として「東京学芸大学附属高校の辞退はできる」との回答を得ました。以下、主な質問と回答の概要です。

 ※取材による質疑は、東京学芸大学附属学校運営部長、金子一彦教授より、公式見解として掲載する承諾を得ています。ご承知ください。

Q. 東京学芸大学附属高校が学校説明会や募集要項で「一般入試の手続き後の辞退を認めない」として、推薦入試ではなく、自由な意志が尊重される一般入試で辞退をしないよう圧力をかけている。辞退は認められないというのが大学運営部側の見解か。

(金子運営部長より)「他の学校が受かったら辞退できないのかというと、これは辞退できます。」

Q.入学確約書問題について、東京学芸大学附属高校は「提出後の辞退は認めない」としているが、大野校長が制度を倣ったとする公立高や他の国立大附属に取材したところ、提出後に第一志望校に合格した場合は、当然の権利として辞退を認められることを確認した。東京学芸大学附属高校も同様であるか。

(金子運営部長より)「(入学確約書は)合格者のあくまでも意思を確認して学校が確認するものでありまして、心配のように、入学を強制するものではありません。」

Q.あたかも法的拘束力があるような伝え方を高校側はしているが、法的拘束力はないと考えて良いのか。

(金子運営部長より)「法的拘束力はないと考えておりまして、これについても、公立高校や他の国立附属と同様であると考えています。」

募集要項の「辞退不可」の文言は“気持ち”

Q.辞退は問題ない、法的拘束力もないということだが、なぜ募集要項や説明会では「辞退不可」をうたうのか。

(金子運営部長より)「辞退はできるんですけれども、入学してほしい。気持ちということです。他の学校も共通だと思います。」

Q.大野校長ら高校側の説明と、管轄する大学側の認識に乖離がないか。

(金子運営部長より)「入学確約書を出していただいても辞退はできますし
法的拘束力もありませんので、という実態ですので、ですから、大野校長と募集要項と、私どもの方は、述べた見解と、乖離はないと考えておりますが、おっしゃるように、中学側に対して、趣旨が誤解を生じさせることのないように配慮するようにべきではと考えています。受験生、保護者、中学校が困っている状況があるとすれば、それは配慮して行く必要があると考えております。

Q.高校から中学校に送られた「お叱りの手紙」を根拠に、一部の公立中学校が恐怖し、人権を侵害する異常な進路指導が行われている。これについての見解は。

(金子運営部長より)「辞退するなということですけれども、私の方は大野校長から中学校長へ送られた手紙を手にしているんですが、本校は入学確約書を出したら転勤等のやむを得ない事情以外は入学していただきたいというものを示しています。大学としては、大野校長の文章を見てますが附属高校への入学を強制するものではなくて、附属高校のスタンスだということを示すだけで、結果、第一志望へいってしまうこと、辞退したとしても、それを強制したり、拘束したりするものではないということを理解していただく必要があると考えています。」

(取材おわり)

戸舘圭之弁護士「法的にも正当化は難しい」

袴田事件やブラック企業被害対策の弁護団を務める戸舘圭之弁護士に、東京学芸大学附属高校の問題点を尋ねました。

「結論から言うと、辞退はできます。」

「法的にも正当化することは難しい気がします。」

戸舘弁護士は、以前問題になった「学納金返還訴訟」を語ります。

「大学入試で、併願大を入学手続きした際に仮押さえで入学金や、場合によっては授業料を全納する場合に、辞退の際お金を返還するべきかの裁判がありました。最高裁の判決(注:2006年11月27日)で、授業料は返還、入学金は基本返さなくてもいいということなのですが、大前提として、入学辞退ができることは、最高裁も明言をしています。」(戸舘弁護士)

最高裁の法的見解とは。

「教育を受ける権利を保障する憲法26条1項の趣旨や教育の理念に鑑みると、在学契約を締結した学生が学校で教育を受けるかどうかは、当該学生の意思が最大限尊重されるべきであるから、学生は原則としていつでも任意に在学契約を将来に渡って解除することができる、つまり辞退ができるということです。高校のあいだの在学契約、入学手続きを済ますと、一旦在学契約は締結されますけれども、だからといって最高裁も教育を受ける権利や憲法26条を持ち出すくらいで、子供の側にとってみれば、どこの学校で教育を受けるかというのはまさに権利です。一般入試であればなおさらでしょう。」(戸舘弁護士)

募集要項は「お気持ちの表明とは読み取れない」

募集要項のこの表現について。

他校の合格等の理由による入学辞退はしないでください。令和3年度一般中学生募集要項3ページ)

大学の附属運営部はこの文言を、単なる「気持ち」の表明だと回答しています。

「(募集要項の文面を読む限り)お気持ちの表明ではないですね。そうは読み取れないし、書いた人がそういう気持ちをもっていたかどうかなんて知らない話ですから、書かれたテキストだけを読み取れば、するなと言っているに等しいですね。」(戸舘弁護士)

中学校が忖度「教育を受ける権利侵害の印象」

東京学芸大学附属高校が、辞退者の出た公立中学校にばらまいた「お叱りのお手紙」による圧力について。

「今回、募集要項や、入学辞退できませんと公立中学校にも牽制するかのような文章を出す、中学校側はそれを忖度して、高校との関係を考慮して誓約書を書かせるなどすれば、学芸大附属を断念する子が出てくる可能性が高いです。中学校の先生が受験をさせない、内申書の協力がうまくいかないとかになれば、まさに教育を受ける権利が侵害されている印象を持ちます。」(戸舘弁護士)


東京学芸大学への取材については、附属学校運営部が現状の問題について深く理解に努めてくださり、大変誠実なご回答をいただきました。誤解が生じている点についての配慮の必要性も明言されました。

また、戸舘圭之弁護士からは、法的な観点から東京学芸大学附属高校の入試が人権の侵害に当たる可能性を解説していただきました。

本取材により、東京学芸大学附属高校が繰り返し主張する「手続き後の辞退不可」は虚偽の説明であることが確認されました。

受験生や保護者は、後ろめたい気持ちを持つことなく、堂々と自由な受験選択をして問題ありません。

一部の行き過ぎた指導のあった公立中学校に対しては、教育委員会事務局を通じて、是正の指導をするように申し合わせをしている最中です。

「第一志望限定」にこだわるよりも大切なコト

東京学芸大学附属高校は「第一志望の生徒により多く入学してほしい」と話します。募集要項の縛りはその表れだと。

実際にはどうでしょう。第一志望者しか入学しない学校ってあるのでしょうか。どんな人気校であっても(東大だって)、第二志望者はいますし、辞退者も出ます。

第一志望だけで、受験って成り立ちますか?

ある私立高校に取材に行ったことがあります。いわゆる滑り止め校で、入学者のほとんどが残念組。第3志望、第4志望なんて当たり前。最初の顔合わせで明るい表情の子なんていません。

「本当は○○高校へ行きたかったんだ。」

「こんな高校に来るつもりはなかった。」

こういう声であふれています。

でもこの学校は、3年後で笑顔にして卒業させると評判です。先生達が頑張るんですよね。授業に、行事に、部活動に、本当に一生懸命。

「第一志望ではない」高校が、「誇らしい母校」に変化する。

魔法の学校だと思っています。

それと比べたら、東京学芸大学附属高校はずっと恵まれています。第一志望も多いでしょう。

東京学芸大学附属高校のような日の当たる進学校が成り立つウラには、受験者のほとんどが辞退する、“滑り止め”とされる高校が無数にあります。東京学芸大学附属高校の名声の背景に、こうした踏み台にされる高校の犠牲があります。

「第一志望に受からなかった…」と失意で入学してくる生徒たちを暖かく迎えてくれる高校が存在しているから、受験生は安心して、第一志望校に挑戦できるのではないですか?

東京学芸大学附属高校様、過ちを認め、自らの意志で変わりませんか?

[取材協力]東京学芸大学附属学校運営部、戸舘圭之法律事務所、教育委員会、中学校保護者各位

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