【日常的思考・番外編】音楽が外部との関わりを持つとき

ずっと頭の中で考えていたことがようやく言語化できた(普段余程アウトプットしてないんだなというのが手に取るようにわかりますね…)ので、今回は私が幼少期から共にあったゲームを主な題材として考えていこうと思います。
いつもの楽曲制作の話とは少し違ったものになり、若干商業的な観点も含めています(少々長いことと、文体も文章の長さ軽減のため、ですます調からである調にしています)ので、もし興味があれば読み進めていただけると嬉しいです。


とある土曜日の朝、家族が「DARK SOULS」というゲームのサウンドトラックを流していた時のこと。タイトルの通りこのゲームは、滅びゆく終末の世界を舞台に不死人である主人公が炎を継ぐための旅をするというシナリオ。始終、冷ややかな深淵が世界を覆っているため、映像の色も黒が多く使われ、音楽もまた暗い。

創作において外部(音楽以外)との繋がりが生まれることで、自分だけの世界とはまた別の概念が加わり、核となる部分が変化する。このゲームと音楽の関係において重要な共通点且つ核となる部分は「世界観」である。暗黒且つ混沌とした世界は、決して明るくもなければ陽気なものでもない。重厚で荘厳な雰囲気を持つものが相応しいだろう。実際、全シリーズのサウンドトラックの殆どが暗黒世界たる表現を施された楽曲となっていた。

深淵、混沌、闇、暗黒と聞けば日常的な暗さよりもずっと深く、死者の世界や地獄といった到底想像もつかないような惨さを想像するだろう。

他の楽曲を聴いてみても何となく感じられる部分が「主調(曲の主となる調性)への回帰」。楽曲の中で転調はあるものの、始めと終わりは主調に戻ることが多い。そして特徴的な低音。派手な跳躍は少なく、全体を通して主音(この曲の場合はFminorのため主音はFとなる)が鳴り続けていたり、順次進行やなだらかな移動が多く用いられている。
何が言いたいかと言うと、主調への回帰や跳躍の少ない低音は深淵から脱しようとも叶わぬ環境や拡がり続ける闇への印象、停滞を感じさせ、このゲームにおける世界観と見事にマッチしている。

シリーズの象徴となる「篝火(かがりび)」は、主人公の体力回復や探索の準備をする場所といった束の間の安らぎの場であり、闇と対の関係にある。音楽もそれに寄り添い、穏やかであたたかなものとなっている。

例えば、担当した作曲者の趣向として転調やアップテンポな曲の表現を得意とした場合、正反対とも呼べるこの楽曲制作においては自身の表現との乖離が大きくなる。逆にゲーム側が音楽に合わせると闇の世界ではなくなってしまう。互いにとって表現したいものが必ずしも関わるものとリンクするわけではない。仕事として請け負う以上は表現の乖離と向き合い、要望の核となる部分を合わせなければならない。共同作業においては相手との対話が必要不可欠となる。無論、他にも共通点はあるがゲームにおいて「世界観」以上のものは私はまだ見つけられていないので、ひとまず今感じたこととして記す。

あまりピンとこない場合、ゲーム以外でも考えてみる。映像と音楽の場合、核となる部分は「時間」である。この場面でこの演出がある、切り替わりと音楽がマッチすることで映像の良さが引き立つ。これもまた何分何秒で何かの音が鳴る等の演出に合わせた配慮が必要となり、自身のフィーリングと引き離して考えなければならないことがある。

鉄道と音楽はどうだろうか。駅のホームで電車が発着する際はいつも音楽が流れており、音はアラーム音等に用いられるような電子的なものやオールゴールのような金属的な音が目立つ。例えばこれが弦楽四重奏だったら…雑踏にかき消され、耳の遠い高齢者や注意散漫な子供には聴こえないだろう。
中田ヤスタカ氏が地元である金沢駅の発着メロディーを担当していた時の動画を見たことがある。誰もが聴き取れる周波数を最重要項とし、意識して作曲している場面が取り上げられていた。電車と音楽においての核は、ただの音ではなく「誰もが聴き取れる音」であると言える。
カシオペアのキーボーディスト、向谷実氏の考え方は手弾きやメロディーの概念、電子音だけに留まらないあらゆる面から鉄道と音楽への思考を広げている。鉄道会社からの要望の有無によって何が重要かはそれぞれ異なるようだ。


音楽に限らず、外部との接点は生きている以上、発生するものである。友人や同僚、上司、両親、夫婦、先生…上手くやっていくには互いに譲り合い、時にはぶつかりながらも目的に合わせて対応していかなければならない。音楽もまた外部との関わりを持つことで、自分の意思だけでなく関わるものとの関係性を見直し、目的に合わせた楽曲制作をする必要がある。

これまでに挙げたものは、あくまで私が考えた中での一部分に過ぎない。何か引っ掛かる時は、直面している状況にどんな共通点があるのか、何を求められているのかを考えるきっかけになれば、と思い番外編として書き下ろした。

長くなりましたが、お読みいただきありがとうございました。


tohma




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