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インドのモディ政権、3度目の経済政策

 インド総選挙で過半数議席を確保できなかった与党インド人民党(BJP)を率いるナレンドラ・モディ首相は与党連合を構成する政党と会談し、与党連合の支持を確保し3期目続投が決定的となりました。
 インド総選挙ではモディ氏率いるBJPを中心とする与党連合・国民民主同盟(NDA)が下院の定数543議席のうち過半数の293議席を得たもののBJP単独では第一党ながら過半数に満たない240議席にとどまりました。
 事前予想ではBJP大勝でモディ氏は370議席を目指していましたが2019年の総選挙で得た303議席から議席数を減らし政権維持のためNDAを構成する小規模政党に頼る結果となりました。
 インドは着実に豊かになっており中間層は増えています。実質GDPは2023年に8.2%成長率を達成、インフレ目標は4%±2%で範囲内に収まっています。ヒンズー教至上主義でイスラム教を冷遇する政策でした。予想以上に総選挙に苦戦した理由は国民の9割が零細企業や家族企業で働いているため、インドの経済成長の恩恵を感じられなかったことに起因しています。また若年層の高い失業率も政権に対する不満の一因となっています。
 その意味では今回の総選挙の結果はインドで民主主義が機能していることの現れです。2024年の実質GDP成長率は7%でインフレ率4%と予想されていますが、このままインドの成長を継続できるかがカギを握ります。2030年にはGDP規模は倍になると予想されており、世界3位の経済大国に躍り出るのも時間の問題です。十分に対応されていない10億人もの人々が貧困から脱出しもっと教育を受けもっと高い所得を得るようになればインドという市場はさらに大きく成長します。
 インドは外交面でもウクライナ侵攻後もロシアとの関係を維持する一方、日米とも連携するなどしたたかな外交戦略をとっています。基本的に全方位外交をとっており西側諸国にも東側諸国にもつかない中立的な立場をとってきました。最大の国益を得られるようにその時々で最優先に必要な国と協力します。インドは人口規模や経済成長を背景に国際社会での存在感が大きくなっており、どこもインドを味方に取り込んでおきたいという思惑が働いています。
 総選挙の結果を受けて3期目に入るモディ政権の経済運営は国内を優先し、企業や個人に経済成長の恩恵を受けられるような政策に重点を置くと思われます。年収1万3000-5000ドルの上位中間層の占める割合が2024年は10%に達し、2030年に30%、2040年に45%に達すると予想されています。インドは人口14億人を超える国で将来45%も上位中間層を占めるという巨大成長市場は世界中探してもインド以外どこにもないです。
 インドは日本と同じように自由や民主主義の価値観を大切にしています。安全保障面でも中国への警戒という共通点があります。2022年の日印首脳会談では5年で5兆円のインドへの投資を表明し政府は民間企業にもインドへの進出を促しています。理念だけでは動かない実利主義的なインドと日本がすべての分野で一致して連携するのは難しいかもしれません。しかし、人口減少で今後は確実に国力が衰退していく日本にとって今のうちにインドとの連携を緊密にしておくことは重要です。インドの社会開発に投資することでインドが日本にとって新たな成長の源泉になります。

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