中国が風力発電機の特許競争力で首位に
中国が2023年に風力発電機の特許競争力で初めて首位になりました。欧州最大手のべスタスを抱えるデンマークを逆転しました。風力発電関連の特許競争力において世界をリードしている中国勢はコスト削減につながる風車の大型化で技術力を高めており、6割に達する世界シェアのさらなる拡大が見込まれます。中国再生可能エネルギー学会によると中国は巨大な自国市場を活かしコスト競争力をつけて風力タービンの輸出を急増させています。また、中国は洋上風力発電の新規容量も世界一、2021年6月末時点で総容量は1110万kWを超えています。
中国では再生可能エネルギー発電容量は既に石炭発電を上回っています。うち風力発電は3億8900万kWと14年連続で世界一を維持しています。ここ数年、風力発電開発が急速に進み、環境的制約を克服して陸上から洋上へと建設範囲を広げています。世界最大規模の風力発電企業、国家能源集団は1994年に新疆ウイグル自治区に達坂城風力発電所を建設・稼働させて中国の風力発電所の商業運営を開始しました。2010年には江蘇省如東県沖合の潮間帯に風力発電所を試験運営し、風力発電所の陸上から洋上への展開を開始しました。2011年には安徽省来安県に低風速に対応する大型風力発電所を建設し低風速地域での実証実験を行いました。2017年に南アフリカで投資・建設したデ・アール風力発電所は新興5か国のエネルギー協力の手本であると評価されました。同社の沿革は中国風力発電産業の発展の縮図と言えます。
中国は洋上風力発電ユニット開発の大規模化が進んでおり、現在は10MWの洋上風力発電設備が量産段階に入っているほか、発電所のスマート化(デジタル技術を用いた点検・監視の導入)も進んでおり、国内初のスマート洋上風力発電所が江蘇省で稼働しています。IEAの予測によると中国の洋上風力発電容量は今後も拡大し2040年にはEUと同水準になると考えられています。
日本では2050年までに温室効果ガスの排出を全体でゼロにするカーボンニュートラルを目指すことが宣言されました。これを受け、洋上風力発電の導入目標(2030年までに1000万kW、2040年までに最大4500万kW)を定めた 「洋上風力産業ビジョン」が掲げられ、その導入資金として約1200億円のグリーンイノベーション基金が創出されています。現在、秋田港や鹿島港に新たな洋上風力発電所の建設が行われています。今後それらの洋上風力発電所が稼働開始すれば、風力発電の導入量は飛躍的に拡大するでしょう。
AI革命により急増する電力需要をどう補うかは喫緊の課題となっています。データセンターを各所に建設・稼働するにあたり、電力はAIによりさらなる需要増加が見込まれます。温室効果ガスの問題もあり、再生可能エネルギーについてはまだまだ日本は世界の中で遅れています。自公政権は原子力発電の推進を行うつもりですが、地震多発国の日本にあって東日本大震災の記憶もまだ残る中、原子力発電所の建設は住民の理解が得られないでしょう。中国が太陽光発電に続き風力発電においても特許競争力で世界一に躍り出たというニュースは米中対立の間にあって日本がますます再生可能エネルギーから後れをとってしまう危機感を募らせます。
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