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『賢い医師生活2』Ep10 - 相手を思い気遣う、やさしい日常がそこにある

いよいよ「賢い医師生活2」の終わりが近いことを感じさせる展開となったエピソード10。
今回の主なポイントは2つ。

ひとつはギョウルが抱える事情(=父親がDV)が明かされる。
そして、もうひとつはジェハクの妻の妊娠だ。

今回はこの辺りを掘り下げつつ、エピソード10の感想を書いてみたい。


1.自分を優先することは悪ではない

家族の事情をどうしてもジェンウォン言い出せなかったギョウル。
だが、弟の結婚が破談になったことをキッカケに、ついに事実を伝える決意をする。

その内容は深刻だ。父が母を殴り大怪我を負わせた上に、現在そのDVが原因で刑務所にいること。そしてその父の暴力は、ギョウルが子供頃から続いているという事実。

当たり前だが、DVの父親の存在は子供たちのせいではない。子供は親を選んで生まれるわけではないし、生まれた後もそこから抜け出すことは容易ではない。本来、安心して眠れるベッドを与えるのが親の仕事なのに、「家というより地獄だった」と子供に言わせてしまう罪たるや。

そうゆう意味でも、ギョウルには全く非はない。
しかし彼女は、母親が辛い思いをしていると知っていながら、自分を優先して生きてきたことに強い罪悪感を抱いている。



なかなか、重たい状況だけど、すごく突き放した言い方をすれば、母親の人生は母親のものであって、たとえ子供であっても母親の人生に翻弄される必要はまったくない。罪悪感も然り。

でも、そう簡単に割り切れないのが親子関係。
それも、機能不全な家庭に育った子供の場合、必要以上に親に依存されたり、あるいは依存したりしてしまうこともある。

ギョウルの家族の場合、夫婦で解決すべき問題に子供を巻き込んでいることが問題の元凶なのだが、大切な母親を見捨てて、自分だけ幸せになるのが心苦しいという彼女の心情も理解できる。母が夫の暴力に苦しみつつも、母なりに子供を守ることに必死だったことを知っているから。


ともあれ、とても重く深い傷を負っているギョウルだが、彼女は、ジェンウォンに助けてほしいと言うわけでも、支えてほしいそぶりをみせるわけでない。

自分がなんとかしなくてはという責任感と、母を放っておいた後悔を胸に「私も今は母が一番です」と言い切る。彼女の決意がなんだかとても痛々しくて胸が痛くなるシーンでもある。


しかし、ここは心優しいジェンウォンに癒される。

君は何も悪くないから 自分で自分を苦しめないで


この一言にギョウルはどれほど救われただろう。
心の隅で常に罪悪感を抱いていたであろう彼女をジンワリと温めたはず。

そう、あなたは一人ではない。


なにはともあれ、

「自分を優先すること」
それはちっとも悪いことではない。

親を含めた様々な人の助けや支えがあって生きてきたことは間違いないけど、まずは自分が幸せにならねば。そうでなければ人を助けることはできない。


にもかからわず、ギョウルほどのトラウマを抱えていなくても、自分を優先することに罪悪感を感じる人は少なくない。

でも、一番最初にすべきことは自分の足で立つこと。そうでなければ前に進めぬ。利他的であることは悪いことではないけれど、同じように自分を優先することだって悪ではないのだ。

にしても、親って重いね。
イイ意味でも悪い意味でも。


2.人生の選択(ジェハクとその妻の場合)

ジュンワン推しの私としては、弟子であるト・ジェハク先生の存在に癒され、彼にも好感を抱いている。

ジェハクは兄を慕って付き纏う弟さながら、どこまでもジュンワンが好きだし、ジュンワンはジュンワンで、ジェハクをうるさがりながらもその実、彼を可愛がり心配もしている。

エピソード10では、そんなジェハクが愛妻と共にクローズアップされる。

妻との二人暮らしを楽しむジェハクだが、思ってもみなかった妻の妊娠で状況が一転する。妊娠のみならず、同時に妻が乳がんを患っていることが発覚したからだ。

いきなり、重い人生の選択がジェハク夫婦に差し迫る。

選択肢は2つ。

①妊娠を終結させて乳がんの治療を行うか
②妊娠を維持して乳がんの治療を三週間遅らせるか(→その間にガンが成長するリスクがある)


子供を欲しがっていたジェハクだが、彼は迷わず①を選択する。が、妻は違う。

彼女が選んだのは①でも②でもない選択肢、「出産後に乳がんの治療をする」と言うものだった。

妊娠がわかった当初は子供を産まないつもりでいたジェハクの妻。が、自分のお腹で子供が動く映像に釘付けになる。そして、一瞬にして出産をすることを決意した。

そんな彼女にとって、今、一番大切なのは子供が無事に生まれること。なので、乳がんの治療がお腹の子供に及ぼす影響を危惧し、医者が提示した選択肢を無視したのだ。


医者からすれば論外の結論だが、自身も医者であるジェハクは妻を説得できずにいる。彼の優しさが裏目にでるのはこういう時。
ジェハクの良い資質のひとつである「優しさ」は、弱さの裏返しだったりするのだな。


結局は、クマさんソッキョンの説得でことなきを得るのだが(②を選択)、その時のソッキョンがイケている。

「あなたが自分の妹だとしたら」

と切り出し、厳しいことを穏やかな口調で淡々と言い放つ。
クマなんだけど、いや、クマだからこそ?、頼りになる男なのだ。

ジェハクの愛する上司ジュンワンだって、自分とソッキョンは「水と油」と言いながらも、彼を深く信頼しているわけで。(この二人の関係性が、親友から肝臓の提供を受ける患者のエピソードとリンクする。「親友ってのもいろいろなカタチと関係性があるけど、結局は信頼で結ばれている」ことを示唆している)


話をジェハクと妻に戻す。
この夫婦の場合、ソッキョンの説得でなんとか丸く収まったけど、こんな風に、重要な人生の選択をしなければならない場面はある日突然にやってくる。

そしてその時、何が自分にとって一番大事かを突き詰めることになる。
厳しい選択であればあるほど、自分の気持ちに素直になり、最善の選択は何かを考えなければならない。これは全然簡単じゃない作業だ。

なのに、一瞬の迷いもなく妻を選べるジェハクはすごく幸せな男だと思う。彼のように自分にとって大事なものが何かを知っている人は人生を無駄にしない。ジェハクはそういう生き方ができる男。要は、シンプルなのだ。
これもジェハクの魅力のひとつだよね。


3.今週のあれこれ

大きな展開がてんこ盛りだったエピソード10。

たとえば、ソッキョンのアメリカ行きがそれ。
ついにミナを食事に誘うソッキョンだけど、それが彼のアメリカ行きと、どう絡むのか。

そして気になるのは、最後にぶっ込まれた救急患者。
はっきりとは描かれていなかったけど、会食帰りのイクジュンか、または梨泰院にいとこと飲みに行ったジュンワン、そのどちらかが暴漢に襲われたってことよね?(私はイクジュンだと予想してます)

「賢い医師生活」シリーズらしくない劇的な展開だけど、結果としては深刻な感じにはならず、ほっこりできる結末になるのかしら(そうなってほしい)。

にしても「次を見ずにはいられない」という加速度増な展開がぶち込まれているあたり、シーズン2の最終回が近づいていることを身をもって感じさせられる。
切ない。。(ロス予備軍・・・)。


さてさて、今週の好きなシーントップは、ドライブスルーにはしゃぐ男たちとそれを諫めるソンファの絡み。
男たちが無邪気でカワイく、一方でソンファは学校の先生的で、その対比がツボるのだ。

医者としてではなく、気心知れた友人たちとの時間は貴重で、そして、こんな瞬間があるから人生が彩るのだなと思わせる。
彼らのくだらないやりとりこそが愛おしい。
そして、こーゆー場面の存在に「賢い医師生活」らしさを感じるのであった。


もうひとつ。
ミナの母がめちゃミナ似でなんか嬉しくなってしまった。
っていうか、「パラサイト」の半地下家族母や「愛の不時着」でダン母を演じたチャン・へジンだよね、ミナの母。どの役も母親役なのに、全く別人で、はじめはチャン・へジンとは気づかなかったくらい。



さて、忘れてならぬ人々がもうひと組。

時間を巻き戻すが如く、すご〜くスローに元に戻りつつあるジュンワンとイクスンについて。

自分が傷つきたくなくて あなたを傷つけた
今でも あなたが好き


そう告げるイクスンの言葉に対し、ジュンワンの気持ちになりきってウルウルする私。だって寂しい中年男(ジュンワン)の背中を何度も見てきたのだよ。そりゃウルウルなるさ。


で、ジュンワンはというと、そこでガツガツはしないのだ(中年男の余裕だね)。
「俺も今でも好き」などという直接的な言葉は使わず、自分の気持ちをイクスンに伝える。切なくも良き場面でした。


とにかく盛りだくさんなエピソード10。なんせ1時間51分という連ドラとは思えぬ尺がすごい。そして、この長〜いエピソードでは、登場する人々それぞれが、相手を思い気遣う、やさしい日常が描かれていた。



最後に、イクジュン。
It' my life!  歌、上手すぎだろ。


トップ画像:tvN「賢い医師生活2」公式サイトより引用
http://program.tving.com/tvn/doctorlife2



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