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『賢い医師生活2』Ep3ー日常の一部としての病院。そして、描写についての考察

「賢い医師生活」シーズン2が始まり、楽しみが増えた今日この頃。
いつもは「ドラマ完走」→「noteに書く」という流れなのだけど、完走前に書きたくなってしまうのもこのドラマならでは。

物語の連続性はもちろんなのだが、それよりも1話1話が丁寧に作られていて、つまりは、1話だけでも満足できる内容だからかも。

何はともあれ、エピソード3について思うところを綴ってみたい。


1.「日常の一部としての病院」が描かれている

エピソード3は1時間36分と長め。
今回は主人公の5人組の話よりも、病院に集う人々、つまりは患者であったり、その家族、主人公以外の医師などに、ややフォーカスが寄った展開だった。

そもそもだけど、ドラマを離れて考えてみれば、病院における主人公は「医者」ではなく「患者」。病院は患者のためにあるのだし、医師も患者がいなければ職業として成り立たないワケで。

そして、今回も様々なタイプの患者が現れる。
嫁の「自然分娩」にこだわる夫やその母、心臓移植を待つ親子、術後の経過を心配する患者とその夫、がんが完治した患者とその息子、難しい肝臓移植に挑む患者とその家族、黄疸の治療に訪れる愛らしい女の子とその母親、などなど。

病状が軽かろうが重かろうが、当事者にとって病気は人生の一大事。
「賢い医師生活2」においても、患者や家族が体験する人生の一大事が描かれるわけだが、それに付随して、彼らが背負ってきた人生や日常が垣間見え、そこにはそれぞれのドラマがあることを知る。



さて、エピソード3で象徴的だったのが、心臓移植のドナーを待つウンジの母親の描写。
彼女は最近入院してきた、同じく心臓移植のドナーを待つミンチャンの母親を励まし、同じ苦しみを抱える彼女を支える。が、ウンジより先にミンチャンのドナーが現れるという展開。

このシーン、ウンジの母親の気持ちになりきってしまい、涙&涙。
もちろん、ミンチャンにドナーが現れたこと嬉しい。その気持ちは嘘ではない。
でも、「ミンチャンよりもずっと長い間ドナーを待ち続けているウンジは?」
母として、そう思わずにはいられない。
人の心とは複雑なのだ。


さて、人生とは日常の積み重ね。
そして、患者にとって病院での出来事は日常の一部であり人生の一部。
病院という場所が人の生死に深く関わる特別な場所であっても、患者にとっての日常はその中にある。そういう意味で、生のみならず死さえも日常の一部なのだと改めて。

病院では、いや、人生では、悲しい出来事も起きれば嬉しい出来事も起きる。でも、人はそれら全てを受け入れ、それぞれの日常を生きるのだ。
このドラマの世界観がその事実を優しくそして淡々と伝えている。


そして、どんな病状の患者に対しても最善を尽くすのが医師の日常。
このドラマでは5人の主人公たちがそんな良き医師として描かれている。

一方で、エピソード3において、その対極として登場するが胸部外科医のチョン教授。彼は無愛想で全くもって患者に寄り添わない、おまけに金や地位には目がない医師として描かれる。巷のドラマで必ず登場する「嫌な奴」なわけだが、「賢い医師生活シリーズ」では稀有な存在。

同じく胸部外科医であるジュンワンと、チョン教授の外来診察シーンにおいて、その対比が描かれる。

それにしても、主役5人の、医師としての有能っぷりは様々な形で描かれるけど、悪役を仕立ててこれ見よがしにそれを表現するのは、今のところチョン教授とジュンワンとの対比だけ(だと思う)。このドラマには「悪い人」があまりいないので、チャン教授を演じるチェ・ヨンウは気の毒な役どころではあるけれど。


2.丁寧、そして気の利いた描写が秀逸な「賢い医師生活シリーズ」

「賢い医師生活シリーズ」はとても丁寧に作られていると思う。

たとえば、診察室で患者を診察する都度、または手術の前、医師たちが必ず消毒液で手を消毒するシーンもそう。
医師としては当たり前の行動だけど、ドラマではそこを省いたところで何の問題も起きない。特にこのドラマの場合、話の筋に全く影響しないのでカットしても良いシーンだと言える。

でもそれをわざわざ描いている。
嫌な奴として描かれる、チョン教授でさえ、手術前には(雑ながらも)、消毒液で手を消毒するシーンがわざわざ挿入されている。(その雑さよって、チョン教授の性格を描いているともとれるけど)

これはほんの一例だけど、この丁寧さが「賢い医師生活シリーズ」をより良きドラマにしていると感じる。そして、この「手の消毒」ってのがミソで、これなら医療に詳しくない視聴者が見ても何のためにそうしているかが安易に理解できるし、コロナ禍の昨今、この描写が安心感を視聴者にもたらす効果もあるような気がする。


そして気の利いた描写も多数登場。
たとえば、5人の信頼関係を表現する描写がいい。
緊急手術のために車で病院に乗りつけたソッキョンが、偶然その場にいたイクジュンに車の駐車を頼むシーンがそれ。

走って病院内に駆け込むソッキョンの「駐車を頼む」のひとことに、理由を聞くでもなく、あくびをしながら「オーケー」とイクジュンが答えるのだ。

なぜソッキョンが急いでいるかは聞かなくてもわかるし、ソッキョンからすれば、言い捨てるだけでもイクジュンが気を悪くするはずもないことを知っている。
彼らが彼ら仕事における優先順位を共有していることや、お互い深く信頼し合っていることを、この1シーンで表現するのはイケている。この手の細かい描写にグッとくるのは私だけではないはず。


ついでにもう一つ、イクジュンの動きに関する描写にも細かい仕込みがある。
たとえば、ソンファとVIP患者の兄が食堂でコーヒーを飲んでいるところに現れたイクジュンのパフォーマンス。彼がふざけて自身の鼻の穴に入れたストローの行方が気になったけど、ちゃんと本人が回収していてホッとした。

また効果音もセンス良し。
呆れた時や白けた時の心情、いわゆる「……」的なシュチュエーションを表現する時に使われる「ぽよょ〜ん♪」というやつ。
「応答せよ」の時も似たような効果音を使っていたと思うけど、これが味があって良いのだ。物語全体をほのぼのとさせるし、平和感が漂っていて癒される。

とにかく、細部にこだわった丁寧な作りや、気の利いた描写が多数登場するのは素晴らしき。その集大成が「賢い医師生活」何なのよね。と勝手に納得している私なのであった。


3.主人公たちの「恋愛」がより前面に出たS2

主役5人の恋の行方が気になるシーズン2だけど、エピソード3までの展開で幸せ度が最も高いのは、ジョンウォンだ。

彼の優しさが全開で、もう、見てる方が恥ずかしくなるほどなんだけど、ギョウルが車に乗る時のエスコートの仕方が素敵&羨ましき。
韓国映画やドラマではよく見かける、女性が乗車する際、頭が車にぶつからないよう自分の手を添えて保護してあげるシーンって良いよね。

シーズン1ではクールな態度でギョウルに接していた彼の変貌が萌えポイントな私としては「素直すぎる男ってちょっとこそばゆいけど、魅力的。。」と思うのであった。


そして、イクジュンとソンファの恋の行方もだんだん面白くなってきた。
「親友」か「男と女」か。
どちらの関係もそれぞれに良さがあると思っている私なので、一概に「男と女」として恋が成就、というパターンじゃない方がいいかなとも思う。
少なくとも、もうしばらくは「親友」の関係で引っ張って欲しい。。

最後にジュンワン。
「賢い医師生活シリーズ」らしからぬ不穏な空気が流れる「エピソード4」の予告編だったけど、「どうかこのまま、平和で癒しの『賢い医師生活』を堪能させて…」と祈るばかり。ドラマ中心人物たちの浮気とか、心変わりとか、恋のドロドロはこのドラマでは見たくないのだ〜。



***


何はともあれ、毎週の配信が間違いなく生きる楽しみのひとつになっている。

「コムタン」が無性に食べたくなった、エピソード3、2周目鑑賞後の休日の朝なのであった。


トップ画像:tvN「賢い医師生活2」公式サイトより引用
http://program.tving.com/tvn/doctorlife2



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