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命は命の上に

私はジブリ映画が大好きで、
ほとんどを観ているし、その多くは何度も観ている。

特にお気に入りは、
小学生低学年のときは、『となりのトトロ』。
学校休んだ日は、梅干しおにぎりを作ってもらえて、
トトロか魔女の宅急便を観られた♪(ビデオテープで。あぁ懐かしい。)

高学年のときは、『千と千尋の神隠し』。
千と千尋は、始めて友だちと映画館に観に行った映画。
どっぷりハマって、始めて自分のお金でCDも買いました。

中学生のときは、『耳をすませば』が好きだった。

年齢が低いときは、
同世代が主人公だと、感情移入しやすい気がする。
雫ちゃんも、千尋ちゃんもそうです。

二十歳を過ぎてからは、
『平成狸合戦ぽんぽこ』(高畑監督)が特に好き。
たぬきに感情移入し、毎回号泣。

ラピュタ、魔女の宅急便、ゲド戦記、ハウルも好きです。
映画は、楽しく観たいかな。
ハッピーエンドが安心する。

【君たちはどう生きるか】
は、多くのメッセージが詰まっていた。
熱を出して休んでいるときに、寝転んでも観られる映画ではないと思う。

私は“今ここ”しか生きていないのか、時空がとぶ映画は結構混乱する。
「君の名は」も、この理由で
映画の中でまで、迷子の気分になってしまった。

村上春樹さんの小説がアメリカでは人気なので、本作も受け入れやすかったのではないか、
とラジオニュースでは言っていた。

とは言え、
現実世界と同じく、
映画も全てすっきり分かろうとするのは大変なので、
私の理解できる範囲で楽しみました。
観に行ってよかったですし、
集中して観られました。

ジブリ作品は、自然の画が美しい。合成ではなく描いたものと分かるのに、リアルで、あたたかいです。


【君たちはどう生きるか】
は、タイトル=内容の映画
と感じました。

映画の詳しい感想は書いたことがないのですが、
頭の中を整理したいのと、
このまま流したくないと思ったので、ここにまとめることにしました。

あらすじは書いていませんが、
人の感想は入れたくないな、
これからまっさらな状態で観に行くという方は、
ここまでで。

また読みに来てくださいね。

スタジオジブリのHPより。
常識の範囲で自由に使ってよい、とのこと。


何一つ、下調べせずに観ました。
観たあとも、キャラクターの名前以外は調べていないです。

間違えていましたら、ごめんなさい。

冒頭、
主人公眞人(まひと)の母親が入院している病院が、焼ける場面から始まる。

時代は終戦の数年前。

病院が焼かれる。
逃れようのない人々と、
彼らを助ける人々が死ぬ、
というこの場面は、
ここ数年のニュースで耳にした戦争の様子を思い出す。

母親の実家だった田舎へ引っ越す。
お手伝いのおばあちゃんが何人も住むお屋敷。
母にそっくりという妹のナツコと父が再婚し、子どももお腹にいる。

眞人は、母を失った現実を受け入れられていない様子。
新しい住居に来てしばらく、話をしようとしなかったり、
母が助けを求める夢をみる場面がある。
父とナツコとの関係にも、
複雑な心境を抱く。

冒険に出る、しかも
森に入っていくところから
話が動き出す点は、
物語の定番中の定番。

冒険にいく話は好き。
一緒にドキドキするもの。
私は単純な人間です。

試練を共に乗り越えていく中で友になっていく、
というのも定番。
助け合い、信頼関係で結ばれていく様子は、
やはり気持ちがよい。

アオサギが最後に眞人に、
「あばよ、友」
と言うところ、好き。

ハリー・ポッターをはじめ、よく出てくる“血を引く者”
という宿命のような設定も、入っている。



個人的に一番面白かったのは、
もうひとつの世界(下にある世界)で出会ったキリコという人に、名前を聞かれる場面。
「眞人」と答えると、
キリコの返答が、

「眞(まこと)の人、か。
通りで死の匂いがプンプンすると思った。」

私の名前、「真」から始まるの(笑)。


このセリフは、
眞(真の旧字体)の漢字の由来からかな、と思う。

上部「匕」は逆さまに倒れている死体の象形、
下部「県」は逆さまの生首で、「目」の下から髪の毛が垂れ下がっている様子を表しているそう。
死は、変わらない、変えようのないところから、きているとか。
(注:一つの説です。)

真の字が名前につく方、落ち込まないでくださいね。
私は自分の名前が大好きです。
「自分の好きなところは?」と聞かれたら、
「名前です。」
と答えている。
(俗に言うシワシワネームですよ。)

キリコの登場場面が、なんといってもかっこいいのです。
“かっこいい!”のあと、
“女性かな?男性かな?”
と思っていることに気づき、ドキッとした。
日常でも、そうやって、性別でまず分けて見てしまっているのだなぁ…と感じた。

キリコの声がぴったり合っていて、
知っている声、誰だろう誰だろうと思って、最後まで。
柴咲コウさんでした。
彼女の歌声、大好きです。
「少年時代」のカバーは、今まで聴いた中で一番好みかも。

私にとっては分かりやすく、また好きなのは、ワラワラの場面。

ワラワラという、すみっコぐらしのような雰囲気を持つ、
白いまるいキャラクターが出てくる。
ジブリ作品では、
ススワタリ / マックロクロスケ(トトロと千と千尋)や、
コダマ(もののけ)
など、
小さいものが、ぞろぞろ出てくる場面がありますよね。
うじゃうじゃ出てきても、
気味悪くないところが不思議です。

クモだったら、生き物好きな私でもゾッとします。
ちなみに自然界では、ほとんどのクモは単独行動ですので、安心してください。
群れで行動する種類は、ごく少数。

白のまんまるがワラワラで、
左がキリコさん、
右が眞人坊っちゃんです。



下の世界の住人はほとんどが生きていない。
そのため殺生ができず、魚を殺すのはキリコで、住人にその魚を売っている。
死んでいるけれど食べる、
しかもだれかに殺してもらった命を食べる、
というところも示唆的だと思う。

眞人はいわゆる坊っちゃん。戦時中でも、米、砂糖、缶詰が、少しとはいえ手に入る環境。
場面から想像するに、魚もさばいたところがない様子。

キリコにうながされ、
慣れない手つきで、血まみれになりながらも、
大きな魚をさばく。

そういう私も、お恥ずかしながらほぼないです。
理科の時間に、先生が目の前で魚をさばいてくれたり(解剖がなかった)、
母がサバを開いているのをとなりで見て、少し手伝った程度です。


かわいい見た目のワラワラは
上の世界に行って“生まれる”そうなのですが、
とぶためには(魚の)腹わたを食べることが必要なのだという。

生まれてくる命は、死んだ命の上にある。

生まれてくるその時点で、
すでに、犠牲になってくれた命がある。
お母さんが食べたもので、
赤ちゃんは生きているもの。

お母さんが生まれてきたときだって、そう。

ワラワラが上の世界に上って(とんで)いくときの様子は、
DNAの二重らせん構造を模しているはず。

たくさんのワラワラが、
まんまるに膨らんでとんでいく。

それにペリカンたちが気づき、ワラワラを次々に食べ始めてしまう。

そのとき、ヒミという火を操れる女の子が、船の上から天に向かって火をとばす。
ペリカンは逃げていくが、
ワラワラも火に巻き込まれていく。
眞人は「やめろ!」と叫ぶ。

キリコは、全滅しないで済んだんだ、
「ヒミ姫さま、ありがとう!」と言う。

このあたりも、命、生まれるということが、
どれだけ奇跡的で、運に近いものかを表しているのかな、と思った。

ワラワラを食べていたペリカンが羽をやられ、キリコの家の庭へ降りる。
気配に気がついた眞人は、
庭に出て、問いただす。
ペリカンの悲しい宿命を知る。
目の前で息絶えたペリカンを、穴を掘って埋める。

最後の最後の場面で、
戻ったもとの世界でペリカンが羽ばたいて飛んでいるのを見て、眞人は、
「よかった」と言う。

相手を知ることは大事だ。
受け入れ難いとき、
嫌なヤツだと決めつけていない?
と問われている気がした。

【君たちはどう生きるか】
というタイトルを象徴するのは、後半に数回にわたって出てくる、石を積む場面だろう。

けがれていない石とか、
悪意がどうのは、
単純な脳ミソの私には分からなかった。次観たときの課題。

より伝えたいメッセージは、私でも受け取れるようにえがくと思うので、
たぶん大切なのは、

石の積み方で世界が変わり、
その絶妙なバランスで世界は成り立っている

というところだと思う。

キーパーソンでもある、
もうひとつの世界の主である大叔父さんに、
「殺し合いのある世界だぞ?それでも戻るのか?」
(言い回しは違うかも)
と問われる。

眞人は、大切な人たちと、
もとの世界で生きることを選ぶ。


***

大切な人と一緒だから、
私たちは困難な世界でも生きていこうと思える。

自分の命も、相手の命も、尊い。

ひとつの小さな石の積み方で世界が変わってしまう。

丁寧に、ひとつひとつ、
積み重ねていこう。
平和な世界になるように、
みんなで。


2024.3.20〜21
(鑑賞日2024.3.17)

インコと長年暮らしていた私からすると、
草食のかわいい小鳥であるインコが、包丁持って襲ってくることは、受け入れがたい。
デス。

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