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「私たち」の都合

数時間前にタヌキを見た。
まだ体も華奢な、若いタヌキだった。
車にはねられ、内臓が出てしまっていた。
頭の中から映像が離れない。#9910に今電話した。


犬や猫が飛び出してきても、急ブレーキで止まってはダメと知ったときは、ショック過ぎて、言葉通り、言葉を失った。小学生だった。

数年前にも、道路に「通報済み」の紙とともにタヌキの死骸を見た。

法律上は動物はモノ。
ありえない。 人間は嫌いだ。
小学生のときにも同じように思った。

人間は結局、人間優先の世界で生きる。不都合ものは壊し、殺す世界。
その一員である自分が、悲しくて、悔しい。 嫌だ。

今日もタヌキをそのまま置いて帰ってきた。
詫びの印に、顔とお腹に大きな葉っぱを被せて。


二十歳を過ぎてから、一番好きなジブリ映画になった『平成狸合戦ぽんぽこ』。
「化かされているのは、オレたちなんじゃないか」
とタヌキたちが言う。
エンディングのときには、毎回ティッシュの山ができている。

私たちの住んでいるまちで、彼らも生きている。
「私たち」に人間以外の生き物が入っていないことが間違っている。
せめて、『タヌキの飛び出しに注意』の看板を出すべきだ。
明日、市長さんにお願いの手紙を書こう。
それくらいしか、私にはできないのだから。

2023.7.20


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