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残したいものは
東京のほんの少しだけ田舎の
とあるショッピングモール。
夜になると鳥たちが
けたたましく鳴き出す。
彼らの声をきいて
思い出すのだ、
ある方からきいたお話を。
〜
その方の好きだった
大きな大きな木、
建物の三階まではあろうかという、タイサンボクの巨木だったとおっしゃる。
タイサンボク(泰山木)は、
梅雨のこの時期に
真っ白で上品な花を咲かす。
その姿は、蓮の花が木の上にあらわれたかのようで、
親指姫が中で眠っていそうな大きな花。
モクレン科の常緑樹。
葉は、分厚く硬くて、艶がある。
水を弾き、火に強い。
不思議なかたちの実から、
赤い種が出てくる。
花は 虫たちを惹きつけ(虫媒花)、
種は 鳥に食べられ、運ばれる。
![](https://assets.st-note.com/img/1720203344219-wQkCQXb1Ha.jpg?width=1200)
木は切られた。
一日で切られた。
すずめが巣を作り、
にぎやかだった。
「切られた理由はそれかな」
その方は、少し寂しそうにおっしゃった。
〜
私たちは奪ったのだ。
彼らの住処を。
何十年も生きてきた
木の命を。
一本の木が育んでいる命は
数え切れない。
それらをすべての営みを。
私たちは
そろそろ学ぶべきだろう。
奪うのは一瞬であることを。
住処も、歴史も、文化も、
約束も、暮らしも、命も。
〜
帰る場所を奪われ、
夜になっても落ち着けず、
鳥たちは鳴き出す。
いえ、泣き出すんだ。
心さまよい、途方に暮れて、
泣いているのだ。
悲しそうには きこえまいか。
嘆きには きこえまいか。
〜
夏がやってきた。
79年前の夏
一瞬で消えた命は幾万か。
死んだら 敵も味方もない。
焼き尽くさないで。
握り潰さないで。
切り捨てないで。
どうかお願いだ。
生きているから
できるんだよ。
誰かと手をつなぎ
心を結ぶこと。
「次、いつ会う?」
そんな何気ない約束で
幸せはできている。
「いつもの時間に、いつもの場所で。」
そんな何気ない約束で
私たちは生きていく。
何十年後も何百年後も
残したいものは何?
奪い合いではないことは
確か。
葉書きの由来となった
タラヨウの葉に刻む。
「ありがとう」と。
2024.7.5
![](https://assets.st-note.com/img/1720201516868-ANNCn1VTGU.jpg?width=1200)
茶色くなってきました。
どう変わっていくか楽しみ♪
はがき(葉書)は、
モチノキ科の常緑広葉樹
「タラヨウ(多羅葉)」が由来。
裏面に、とがったもので字や絵を描くと、やがて茶色っぽく浮かび上がり、乾燥してもそのまま残る。
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