【長崎新聞連載①】 文化×変化=まさか!?
文化×変化=まさか!?
長崎はいま、100年に一度の変化を迎えている。昨年、出島メッセ長崎や恐竜博物館がオープンし、もうすぐ西九州新幹線が開業する。それに伴い駅前の改修がすすむだけでなく、新しい市庁舎の完成やスタジアムシティ構想など、まちのかたちが大きく変化している最中だ。変化に大きな期待を抱く一方で、長崎の歴史や文化とのつながりがなければ、長崎独自の魅力が失われ、ほかの地域と変わり映えのしないまちになってしまうだろう。
一方で昨年、長崎市は開港450年を迎えた。古くから港町として様々な国と交流しながら築き上げてきた独自の文化は、長崎の魅力の中心となるものだ。県外の友人に「長崎といえば」と尋ねると、カステラやちゃんぽんといった食文化のことや、教会や軍艦島などの名物や史跡の名前が返ってくるが、それを食べたり観るために長崎に足を運んだことがあるかと尋ねると、そうではない人が多い。長崎の文化や歴史の知名度は高いが、それゆえに知ったつもりになってしまい、新鮮味に欠けてしまっているのではないか。
まちの文化を無視して変化することだけを考えてしまえば、まちの独自性や魅力につながらず、文化だけを考えて変化することを忘れてしまえば新鮮味に欠けてしまう。100年に一度の変化と450年の文化の両方が交差する長崎だからこそ、変化と文化の両方の視点を持ち、魅力を再編集していくことが大切ではなかろうか。
たとえば被爆地長崎には独自の平和学習の文化がある。過去を学ぶことが中心だったこれまでの平和学習に、より能動的に子どもたちの興味関心を引き出す「アクティブラーニング」の手法を組み合わせることで、平和構築のための議論のしかたやアイデア発想のプロセスをゲーム感覚で学べるプログラムができるのではないか。そう考えて「Peace Games」という平和学習プログラムをつくり全国の学校へ提供している。
あるいは長崎が港町としていろいろなものを受け入れるなかで磨いてきた「寛容さ」も独自の文化だ。その文化はいま世の中が変化する中で求められているダイバーシティ(多様性)の価値観に通じるもの。港町の文化を「450年前から続くダイバーシティ文化」と捉え直すと、長崎の新しい一面が浮かび上がる。
ほかにも坂の多い長崎の地形も独自の文化と捉えることができる。あの急斜面はオリンピックで注目を集めたスケートボードやBMXといったエクストリームスポーツと相性が良さそうだ。長崎がスケートボード先進地となったら(かつて小嶺忠敏監督を目指して多くのサッカー少年たちが長崎に集まってきたように)若者たちが増えるかもしれない。
平和学習とアクティブラーニング。港町の文化とダイバーシティ。坂とエクストリームスポーツ。文化と変化を掛け算することで、今までになかった「まさか!?」と驚きのあるアイデアを生み出す。文化や歴史をアピールするときには、世の中や価値観の変化を。変化をつくるときには、文化や歴史とのつながりを。それぞれ意識することで長崎の魅力に磨きをかけていく。どうでしょう、それもアリだと思いませんか。
(長崎新聞 2022年4月19日掲載)
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