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反論スルー病

皆さんの会社では、反対意見をいったときにそれが潰されるわけでもなく、ただただスルーされることはありませんか?

人間には、自分にとって都合の良い情報だけを集めようとする性質があります。これを「確証バイアス」といいます。

【確証バイアス】
自分の願望や信念を裏付ける情報を重視・選択し、これに反証する情報を軽視・排除する心的傾向。
https://www.weblio.jp/content/確証バイアス

この性質があるため、人は誰しも「他人の忠告を聞きたくない」という面を持っています。もちろん、それぞれの人生ですから、聞くも聞かないも本人の自由です。しかし、中にはこれが仕事に悪影響を与えているケースがあります。僕はこれを「反論スルー病」と呼んでいます。

「反論スルー病」の症状

■都合の良い情報ばかり集める
情報を収集する際、無意識的に自分の考え(仮説)を証明するために都合の良い情報ばかり集めてしまいます。情報を取捨選択した自覚がないため、その結果を見て「自分の考えは正しい!」とより思い込みを強めてしまう傾向があります。

■ネガティブな情報を無視する
「確証バイアス」が特に強い場合には、都合の良い情報ばかりを集めるだけでなく、その中でネガティブな情報が出てきても無視するという現象が起きることもあります。時間が経つと本人の中で「そんな意見はなかった」ことになってしまうのです。(これは反対意見をねじ伏せるようなケースとは別ものです。)

■メリットしか言わない
企画提案ではメリットばかり挙げます。一見かなり良い提案に見えるのですが、実際はデメリットを伝えていないだけなので、鵜呑みにするのは危険です。特にこれが顧客への提案となると、重大なトラブルの原因になることもあります。

■悪意がない
確証バイアスは無意識で働くものなので、本人は至って真面目にやっているつもり、ということがほとんどです。世の中には意図的に情報操作する人もいますが、悪意はないという点でそういう人たちとは異なります。

「反論スルー病」の原因

「反論スルー病」の根本的な原因は、人間の持つ性質にあります。しかし、これは変えられないものなので、「確証バイアス」に原因を求めても仕方ありません。問題視すべきは個人のバイアスが業務に反映されてしまうことです。

会社が「確証バイアス」の影響を受けるのは情報収集を特定の個人に依存し、周りがその結果を鵜呑みにしているからです。事業が多様化していく傾向にある現在は、経営者ですらすべてを把握することは困難になり、それぞれの業務が「○○さんしか知らない」という状況になりがちです。そのため、会社が「確証バイアス」の影響を受けやすくなっているのかもしれません。

「反論スルー病」の予防

「確証バイアス」の影響を防ぐために重要なのは、客観性を保つことです。医療でもセカンドオピニオンという言葉があるように、仕事でも一人の専門家に依存して業務をおこなうことは危険です。

例えば、専門性が求められる事業をおこなう場合は、専門知識を持った人が2人以上関わる体制を作ることが望ましいといえます。(例えば、一人はプロジェクトメンバーとして参画し、もう一人は外部のアドバイザーとして関わってもらうなど。)

情報収集も同様です。誰か1人の調査結果に依存するのは危険です。2人以上で調査をおこなうか、もしくは第三者による調査結果(信頼性の高い統計データなど)をもとに事業を進めることが望まれます。

おわりに

このように、事業をおこなう中では人間の心理的性質が業務に悪影響を与えることがあります。しかし、会社内のマネジメントにおいて、人間の心理学的側面に着目することはまだまだ一般的とはいえません。

心理学の研究結果はマネジメントにも大いに役立つ知見がたくさんあります。僕の活動が、そういった面にも着目するひとつのきっかけになれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

僕のnoteのマガジン【企業の病ファイル】には、「企業の病」の事例をアップしています。他の事例も読んでいただけると嬉しいです。

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