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雇ってやってる病

みなさんの周りには、退職者を裏切者扱いする人はいませんか?

これは会社が「一生社員の面倒をみる」というスタンスで採用していた終身雇用時代の名残りです。今は会社も「社員の一生なんて責任を持てない」という時代です。実際、社員に定年まで勤め上げるメリットを提示できる会社はほとんどありません。

にも関わらず、未だ終身雇用時代と変わらない忠誠を社員に求めているケースがあります。雇用関係を対等なものではなく、会社の方が立場が上と考えていることから、僕はこれを「雇ってやってる病」と呼んでいます。

「雇ってやってる病」の症状

■社員は会社に借りがあると考える
「育ててもらった恩があるんだから、それを返すべきだ」と常に社員に求めます。ただ、それと向き合ったところで、いつまで経っても「もう十分返してもらった。これからは好きにしていい。」というときは来ません。

■社員の知識は会社のものと考えている
その会社でしか得られないレアな経験ならまだしも、他の会社でも経験できるものや社員が自分で学んで身につけたものまで会社の資産だと考えます。退職後に、会社で得た知識・経験を活用しようものなら、盗人扱いします。

■辞めることを非難する

会社は社員の一生に責任を持てなくなってきている、ということに気付いていないため、「一生面倒みるつもりだったのに」と言わんばかりに、退職する人を非難します。若い人が「同じ会社に居続けるリスクもある」と考えるのが理解できないのです。

■退職者と縁を切る
退職者=裏切者と考えているため、退職を機に縁を切ろうとします。転職者や独立した人と取引するなんてもっての他です。そういう社員がいたら、その人のことも裏切者扱いします。

「雇ってやってる病」の原因

かつて会社が社員に忠誠を求めていたのは、それだけのものを会社が社員に提供していたからです。今は会社もそこまではコミットできなくなっています。それがわかっているから、入社する側もそこまで期待していません。

今は常に転職を視野に入れているのが当たり前な時代です。社員にとってはその会社に固執する理由があまりないのです。だから、社員に「雇ってもらってる」という意識はありません。

「雇ってやってる病」は定年まで勤め上げるつもりの年配社員が多い会社がかかりやすい病です。時代の変化についていけておらず、今も会社は多くのものを社員に与えていると思い込んでいるのです。しかし、今となっては「雇ってやってる」という考えは、ただの勘違いでしかありません。

「雇ってやってる病」の予防

今は会社にとっては採用も、雇用の維持も非常に難しい時代です。「雇ってやってる病」にかかるのは、現場がそういった事情を理解していないからです。

自社の採用事情などが人事部内に留まっており、現場に共有されていない会社は少なくありません。ただ、雇用維持や円満退社は人事部だけの問題ではありませんので、本来は現場も含めて自社の置かれている状況を共有し、雇用と向き合うことが望ましいといえます。

「雇ってやってる病」になると辞める人をダメな奴扱いしがちです。しかし、実際に退職でダメージを受けているのは会社側なのです。「働いてもらっている」と考えろとまでは言いませんが、少なくとも「雇ってやってる」といえる状況ではない、それを社内で共通認識にしていく必要があるのです。

おわりに

今は雇用関係に依存しないつながりが重要になってきています。退職者と良好な関係を維持することにより、わざわざチャネル開拓しなくても、ネットワークが広がることもあります。以前とはビジネスのあり方が変わってきているのです。

ほとんどの人はその変化を認識していますが、中には未だに変化に気づいていない人もいます。僕は「雇ってやってる病」という切り口で情報発信することで、それに気づくひとつのきっかけを作れればと考えています。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

僕のnoteのマガジン【企業の病ファイル】には、「企業の病」の事例をアップしています。他の事例も読んでいただけると嬉しいです。

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