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俳句とエッセイ

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俳句のある生活は、生かされている喜びと感謝、明日への希望と勇気を与えてくれます。そのような日々をエッセイに綴りました。
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記事一覧

おでん酒企業戦士の彼悼む

おでん酒企業戦士の彼悼む

突然の訃報に思わず神様を疑った。 

俳句仲間で親友だった彼は銀行勤めで一歳年下。

企業の泥戦の中で毒されているぼくに比べて、真面目で誠実な彼の性格は一服の清涼剤のような存在であった。

バブル景気がはじけてから仕事が大変になったらしくほとんど会えなくなり、やがて不良債権処理のために故郷の四国へ転勤になったという情報が入ったのも人伝えであった。

安否が気になりながらも音信のない日々が続いていた

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炉の埃天井遊泳して落ちず

炉の埃天井遊泳して落ちず

真っ白な仙人髭をたずさえたあるじは卆寿だという。

ダム建設で水底となる旧家が移築され千年家史跡として公開されている。煤光りする大きな梁、両手で一抱えしても足りないほどの大黒柱、その柱についている刀傷には謂れがあるという。

広い板畳の部屋の真ん中には泰然と大炉があって、いにしえの生活ぶりを偲ばせてくれる。その炉の間で先祖代代の系図や古文書なども広げて縷々説明を受ける。

確かな口調だった。

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玻璃窓をノックしてをる冬芽かな

玻璃窓をノックしてをる冬芽かな

粗大ゴミにはなりたくない。と思いつつ、家内が掃除を始めると何となく居心地が悪くなる。自宅から車で10分ほどの距離に須磨浦公園がある。

家に篭っていたのでは俳句が出来ないと、勇んで吟行に出たものの、冷たい海風が容赦なく吹き付け、結局1時間と持たずに異人館風の観光ホテルへエスケープ。あつあつの甘酒をすすりながら、ようやく一息ついた。

窓の外には桜木立があるが今はすっかり裸木となって、その梢越しに須

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緑蔭の棋士は王手をさしにけり

緑蔭の棋士は王手をさしにけり

遊歩道のあちこちに「非核宣言都市」と書かれた白い標が立っている。

爆心地であった広島の平和公園は緑が生い茂り、市民の憩いのオアシスとなっている。被災者の冥福を祈って植樹された一樹一樹も、いまは大樹となって、よき緑蔭をつくっている。

その下に茣蓙を敷き、あるいはベンチで老人たちが囲碁や将棋に興じて余念がない。旅行者たちがまたそれを覗き込んで外野席も賑やかだ。 

このような平和を得るために半世紀

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端居して一雨ほしき夕べかな

端居して一雨ほしき夕べかな

結婚して子供が産まれ、そしてマイホームを建てた。高度成長期であったから経済的な不安はなかったけれど、教育費や住宅ローンの返済のために働いているようなもの。悪戯に忙しい日々を重ねるだけの人生で満足なんだろうか、黄昏どきになると何となく心が落ち着かず、虚しさが募ってくる。

自分の存在感って一体何なの? 老後はどうなるのだろう。死後の世界は・・・と、次々と不安が襲ってきて気持ちが塞ぐ。

夕端居しなが

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大秋晴水平線の撓みけり

大秋晴水平線の撓みけり

今朝の須磨浦は、波の子もなく洋々とした景を展けている。 

底抜けに澄んだ青空が広がり一点の穢れもない。海はまたその色を映して深い深い藍を湛えている。紛れもなく大秋晴。

工業化でスモッグが立ちこめる瀬戸内では、一年を通じてはっきりと水平線を認められる日は滅多にない。だが、この日は実に180度のパノラマで見渡せるのだ。

水平だから水平線と呼ぶのは当たり前だが、錯覚で左右の視界の限界では撓んで見え

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妻と吾の灯火親しむ趣味は別

妻と吾の灯火親しむ趣味は別

ようやく朝夕が涼しくなり、たそがれ時になるとほっとする。

夕食後、テレビの紀行番組を家内と二人で楽しむ。旅行好きな彼女は、いままでに訪ねた場所が紹介されると、いろいろな思い出話をしながら今度は二人で行きましょうと必ず言う。

出不精なわたしが生返事をすると機嫌が悪くなるのである。

そのうちに、彼女は食卓の上で何やら書き物をはじめたので、わたしも隣の自分の部屋にこもって、俳句関係の原稿を書き始め

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啓蟄の大地漫画の描かれけり

啓蟄の大地漫画の描かれけり

昨今は漫画隆盛の時代となった。私達はタンクローやノラクロに夢を馳せた世代である。今ならさしずめ、ドラエモンやピカチューであろうか。

あたたかい陽射しに誘われて近くの公園まで足を伸ばすとベンチに先客があった。お孫さんとおじいちゃんのようだ。

幼子は何やら一生懸命地面に漫画を描いて説明しているのだけれど、おじいちゃんはニコニコ笑っているだけで通じないらしい。

この平和な時代がいつまでも続くことを

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不即不離心得てをり道をしへ

不即不離心得てをり道をしへ

人間関係はガラス細工のようにもろい。ちょっとした誤解や行違いで直ぐに壊れる。特に信頼していた人に裏切られたとき、どうしようもないほど哀しくなる。

傷心を慰めようと山道を散策していると斑猫に出会った。近ずくと、「合点!」とばかりに、数メートル先へジャンプしては振り向く。繰り返されるその動作はまるで、人付き合いの極意を教えてくれているようで、じっと見ているうちに、なんだか拘りが消えてきて塞いだ気持ち

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異な草と抜きて吾妹に叱らるる

異な草と抜きて吾妹に叱らるる

夕べのはげしい雨が嘘のように晴れた。朝、目を覚ますと妻は庭の草引きに余念がない。

「手伝って!」

と促されて渋々庭へ出る。蒔かず肥料もやらないのにどうして草はこんなに元気がいいのだろう・・・などと余計なことを考えていると突然悲鳴が上がった。どうやら抜いてはいけないものまで引いてしまったらしい。

「ごめ・ん・・・」 

悪戯をして母親に叱られた腕白少年のように意気消沈。妻はしばらくご機嫌斜めだ

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黙祷の一分間や蝉時雨

黙祷の一分間や蝉時雨

わたしの妻は被爆二世である。帰省ついでに、ときどき平和公園を訪れて鎮魂碑を巡る。 半世紀を経て美しい緑の楽園となった公園には、観光客や修学旅行生たちが屯している。 

当時の想像を絶する悲惨さは、原爆ドームや記念館の資料でしか計り知ることは出来ないけれど、決して忘れてはならないと思う。そして、後世の子供たちにも伝えて行かねばならないと・・・

猛暑の8月6日、今年も広島原爆記念の日がやってきた。 

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