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玻璃窓をノックしてをる冬芽かな

粗大ゴミにはなりたくない。と思いつつ、家内が掃除を始めると何となく居心地が悪くなる。自宅から車で10分ほどの距離に須磨浦公園がある。

家に篭っていたのでは俳句が出来ないと、勇んで吟行に出たものの、冷たい海風が容赦なく吹き付け、結局1時間と持たずに異人館風の観光ホテルへエスケープ。あつあつの甘酒をすすりながら、ようやく一息ついた。

窓の外には桜木立があるが今はすっかり裸木となって、その梢越しに須磨の海が展けている。白い三角波が風に立ち騒ぎ万の白兎が跳んでいるようだ。

ふと気づくと、桜の枝が海風に揺れてこつこつとガラス窓を叩いている。

時折雲間から洩れる陽射しに、たくさんの冬芽がほのかな紅色に輝いて美しい。健気なその情景に生命の尊厳を覚えていた。 

 「ただいま!」

元気をもらって無事帰宅。

 「お帰り!」

と妻。なんだかほっとした。 

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