イングランド生活、一旦終わり。
遅れての報告になりますが、無事にセールシャークスでの2023/24シーズンを終えることができました。これがイングランドで過ごした3シーズン目となりました。
今のところ、直近でイングランドに戻る予定はありません。
2023/24シーズンは、ウスターウォリアーズの財政破綻によるチームの解散から始まったタフなシーズンでした。
イギリス人は比喩で「ジェットコースターのような…」と頻繁に使いますが、まさにジェットコースターのようなシーズンでした。
無事に移籍先が見つかったは良いものの、チーム事情で昨シーズンよりも試合出場の機会が減り、悔しくて苦しい思いをすることが多かったです。
大体、試合週は火曜日の12時頃にメッセージでメンバー発表があるのですが、明らかに力不足ではない限り、12時前にコーチから「今週はメンバー外です。理由は…」といった内容のメッセージがきます。
練習を一度も休むことなく、毎練習で自分を高めて、試合のメンバーの座をとるために頑張っているので、そのメッセージが来た際には悲しいや悔しいといった感情を超えて、怒りが沸き起こります。その怒りをどのように対処したら良いかわからなくて涙も止まりません。
しかも、練習の日は私は13時過ぎには家を出てバスに乗らなくてはいけなかったので感情を整理するのがとても難しかったです。
練習に来ていない人が試合に選ばれることもあったりすると、じゃあ練習に行く意味ってなんなんだろう?と考えてしまったり、でもここで休むのは違うよな~とひねくれたい自分と正しくありたい自分が心の中で戦って。
もちろん休む選択肢は最初から真剣に考えていないのに。笑
イギリスのバスの車内では通話しても問題ないので、泣きながら希絵さんに電話して励ましてもらったり、日本にいる親しい数名の友人に話を聞いてもらったり、多くの人の助けを受けて、乗り越えられたシーズンでした。
希絵さん、ありがとう。
苦しい、涙など、ネガティブが先行しているように聞こえるセールシャークス生活ですが、チームを失ってからすぐに受け入れてくれたセールシャークスには本当に心の底から感謝しています。チームメイトもスタッフも、マンチェスターで出会えた日本人の方々も温かくて、でもマンチェスターは寒すぎて。
だから、必ずセールシャークス生活を笑って締めくくりたいと強く思っていました。
そのために、コーチの話している内容を深く理解して、いただいたアドバイスは大袈裟に実践してみたり、練習でもチームのやりたいラグビーを私が最も遂行できるぞ!ということをアピールしたり。
練習後に「You trained so well」とみんなが言ってくれるようなパフォーマンスをし続けていたら、父が渡英してくれた最終戦のメンバーに入ることができました。ホームでの最終戦、背番号は22番、対戦相手は近年コンスタントにベスト4入りを果たしているブリストルベアーズ(2023/24シーズン準優勝)でした。
最終戦に向けてのミーティングの内容は、「ここにいる選手がラグビーをする理由はひとつではないし、今シーズンの成績は私達が期待したものではなく大変なシーズンだったけど、来シーズンに繋げるためにも、シャークスの戦いを存分に発揮しよう」といったものでした。
私個人としても、シャークスで成長できたところを試合で発揮して、チームに貢献したい気持ちでいっぱいでした。
当日のセールは珍しくは晴天、ラグビー日和でした。
余談ですが、私は5月にイギリスでラグビーの試合をするのが大好きです。
お昼間は暖かく、雨が降る確率も普段と比べると落ち着いていて、観客の皆さんも楽しそうにビールを片手に試合を楽しんでくれて、ラグビー選手としても快適な環境の中でプレーができるからです。
勝利した後の試合後に、バーでみんなと日が長い中でゆっくりするところまで含めて大好きです。
そして、試合では後半20分くらいに出番がきました。その時は22-24で負けていましたが、ホームならではの応援の後押しもあり接戦に持ち込めていました。
何か起こせるような気がして試合に入ったのを覚えています。私がすべきことは至ってシンプルで、今までコーチとのミーティングで勉強してきたことと状況を照らし合わせて、その時の最善策を選択し続けながらチームをドライブすることです。
実際に試合では、毎週火曜日にKaty(元イングランド代表のフライハーフ)とのキックセッションで培ったことを発揮することもできました!
中盤から左奥にボールを蹴りこみ50-22!
敵陣深くでのラインアウトからフェイズを重ねて左隅へトライ!
逆転することができました。そのまま、ブリストルの猛攻を防いでノーサイド。初めてシャークスがブリストルに勝利することができました。個人的にはウォリアーズ時代も勝ったことがない対戦相手だったので、非常に嬉しかったですし、苦しかった日々も一瞬で報われました。
沢山の方のご支援を受けながら2021年の夏に渡英し、そこからご縁があり3シーズンもイングランドでプレーをすることができました。
そして、幸か不幸か2チームを渡り歩くことができました。(今ならそれは間違いなく幸だと言えます。)
様々な国籍の多様なバックグラウンドを持った友達ができて、私自身の考え方も少しずつ変化が在りながら、人間としても、ラグビー選手としても大きく成長させていただいた3年間だったと思います。
紆余曲折しながらも、その締めくくりとなる試合を良い結果で終わらせることができたことがなんだか自分らしくて安堵しましたし、自分らしく在れるように日々サポートしてくださった方々に感謝の気持ちでいっぱいです。
日本人でイングランドへ挑戦している選手は多くない分、勝手に色々と気負うこともありましたが、プロの世界に足を踏み入れることができ、海外を知る前の生活とは大きくかけ離れた生活を経験することができて、総じて幸せな時間でした。
「スポーツで生きていく」
スポーツで生きていくと言っても、スポーツへは様々な立場から関わることが可能です。その中でも今の私が最も魅力を感じている、且つ、寿命も長くないとされる、スポーツをする人=プレーヤーとして体験できていることは非常に光栄なことです。
日本では企業などの大きな母体がラグビーチームを持つ形がメジャーであるため、将来も概ね安定した環境の中でラグビーに集中できる形が優れた点です。
一方で、イギリスでは富豪の方がラグビークラブを所有する形なので、選手はある程度のお給料を貰えますが、急に財政破綻することもありますし、選手視点でもプレータイムが少なかったり、選手生命を脅かす怪我をしてしまった場合には解雇される可能性もあったりと、ハイリスクハイリターンです。
そういった形だからこそ、より必死になってラグビーをプレーし、競技力が高まるのだとも思います。
この両者の立場を経験してきた私だからこそ、取り組める女子ラグビー界の課題があると思いますので、ラグビー選手としてだけではなく、広く活躍していきたいです。
ラグビーナレッジ、スキル、フィジカル、チームメイト、思い出、変な髪形、文化、語学など、沢山の素敵な収穫をラグビー発祥地で経験できたことは幸せなことです。
それを私個人のものだけではなく、多くの方にシェアして、ラグビー界の更なる発展に繋げていくために何ができるのか、日々考えながら生きていきたいと思います。
今後は日本のラグビーチームで活動していきます。また機会がありタイミングがあれば、イングランドに戻りたいと思っているので、"Hey England, Hope we can meet again someday, cheers mate!" と、締めくくっておきたいと思います。
皆様、いつも応援ありがとうございました。
本当に力になりました。
引き続き、全力を尽くして参ります。
山本 実
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