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イギリスのリーグに参戦して学ぶこと

先日、イーリングトレイルファインダーズに所属する玉井希絵さんと一緒に遠隔ではありましたが、念願の"Girls Rugby Channel”に出演させていただきました!!




この中でお話しさせていただいたことについて、もう少し深堀りしていきたいと思います。



1.海外のリーグでスタンドオフとして出場することの大変さ

何に苦労しているかというと意思疎通です。ミーティングなどで新しいサインプレーなどを説明されるときに、図などがあれば理解しやすいのですが、口頭での説明だけだと難易度が高めになります。canかcan'tで大きく意味が変わるし、口語でcan notと丁寧に言う人は少ないので、そういったところを聞き取るのも大変です。そして、私の理解が合っているのかを確認する必要もあります。サインプレーをコールする私の理解や動きが皆と異なっていたらスタンドオフ失格です。

スタンドオフであるかないかは関係なしに、チームに馴染んでいく必要があります。チームメイトのことをよく知っていた方が良いプレーができるし、その逆も然りでお互いに快適にプレーをした方がチームの勝利に貢献できるはずです。

ですから、オフフィールドでの交流も大切にしています。ウスター1年目の時にはチームメイトと住んでいたので、頻繁に他のチームメイトをお家に呼んでご飯を食べていたのでそういった交流できる場が私を助けてくれました。一度ご飯を食べるだけで、翌日以降の挨拶をした時の雰囲気が変わります。何か盛り上がれる共通の話題を持つだけで距離もかなり縮まります。
コーヒーを飲みに行くだけでもいいし、ご飯を作って家に招くでも良いと思います。合わない人と無理に交流する必要はないと思いますが、少しずつでもオフフィールドでの交流を広げていくことは、ラグビーのパフォーマンスにも好影響を与えます。私は仲良いチームメイトに沢山助けてもらっています。感謝!

チームメイトたちと日本食食べました!
次はアメリカンディナーを用意してくれるらしい!



そして、新しいチームのゲームメーカーとして試合に出場することは、同じ言語を話す日本のチームでも簡単なことではありません。新しいサインのコールを覚えて、動きを覚えて、それを試合中に咄嗟に言えるようにならなくてはなりません。その対策として、試合(どのカテゴリーでも可)を見ながら、セットプレーがあることに、自分がアタックチームのゲームメーカーであると仮定して、エリア・時間・モメンタムなどを鑑みて、自分ならどのようなコールをするか?を練習しています。これに関しては、数を重ねるしかありません。



あるあるかもしれませんが、異なるチームでも同じサインコールを使っていることもあります。音は同じなのに、内容が異なることほどややこしいことはありません。ウォリアーズとシャークスでもその現象が起こっています。
しかし、ゲームメーカーとしてチームに貢献するために渡英しているので、やるしかありません!日本人で上手く英語を話せないから…は言い訳にしか過ぎず、であればチームは私を起用することを止めて、他のスタンドオフを起用するもしくは探すだけで解決する世界なので、私はやるしかないんです。ベストを尽くすのではなく、パーフェクトを目指します。


2.クラブのマネジメント

プレミアシップの試合は基本的に有料試合となっています。年末に開催された試合では、その試合のホームチームであったハーレクインズが1万6千人も集客しました。事実上の決勝戦となった昨年のシックスネーションズ、イングランド対フランスの試合では6万人弱のお客さんが来場していました。

トゥイッケナムでのシックスネーションズ観戦


着々と女子ラグビーがビジネスとして成立できるような仕組みが作られてきています。実際に、私が所属していたウスターウォリアーズは破産したので、それが全てのクラブに言えるわけではないですが、その階段は昇っていると思います。

何でも有料にすればいい、ビジネス化すればいい、という訳ではありません。女子ラグビーが人々から注目を浴びて、興行として成立してお金が回っていくようになるのであれば、より存続可能なスポーツになります。
現在、日本の女子ラグビーはスポンサー企業のおかげで成り立っています。日本のラグビー界の大きな魅力の一つでもあります。
実際のところ、観客数も多くはないですし、大会で優勝したチームが賞金を獲得するわけでもありません。他のメジャースポーツと比較すると、大会やチームのスポンサー企業にとって広告費用対効果が高くないです。

私はここまで日本の女子ラグビー界の発展に貢献してくださっている企業の皆様に「なぜここまでしてくれるのだろう」と感謝の意しかありませんが、仮に彼らがサポートを止めると決めたとしたらどうなるのでしょうか。

本当に大好きだったウォリアーズ


私はウォリアーズにいたから分かります。オーナーが変わって、"No”と言ったら本当に終わりなんです。10年契約を結んでいても終わります。だからこそ、大会やクラブのスポンサー企業にとっても、クラブやプレイヤーにとってもWin-Winな関係性を創造することができたら、と考えると、とてもワクワクしませんか。
現段階で現実的ではないことは理解しています。しかし、いつかそんな未来を実現できるように何が必要なのか、考えて、行動に移していきたいです。


3.パスウェイ

各クラブが男子チーム、女子チーム、男子アカデミー、女子アカデミーを持っていて、私が所属した2チームではどのカテゴリーも同じ施設を利用できるようになっています。アカデミーの選手も、試合に出場するときには、そのクラブのジャージを纏うことになります。若い頃から、地元クラブへの愛着が沸き、エンブレムを誇りに思うのにも頷けます。アカデミーには高校生くらいの年代が3学年ほど集まっているそうで、最上級生になると、特に男子アカデミー生はプロ選手として契約できるかどうかがかかっているので、とても真剣でシビアな空気が漂っているそうです。


各クラブが育成プログラムを持つことは国レベルでの競技力の大きな向上に繋がります。また、ラグビー選手を目指している子どもも、アカデミーの存在によって部活動でラグビーを続ける必要がなくなるので、学業で学びたい高校に通うことも可能になります。
イギリスでは独り立ちするまで、親が送り迎えをしているので、アカデミープログラムが実施されている夜に送り迎えをしている親御さんたちは大変そうではあります。
日本でもリーグワンのクラブや女子ラグビークラブがアカデミークラスを持っているところもあるので、それが更に普及することを願っています。


4.若い世代の選手へ伝えたいこと

私は海外に来て本当に良かったと心から思っています。初めて渡英したのは24歳の時でした。コロナ禍の渡英であったため、自主隔離がありました。隔離が明けた時の、ロンドンからウスターに一人で向かう電車の中での感情は一生忘れません。知っている人が一人もいない地に言語が堪能ではない私が向かう不安と、ラグビー選手としてどんな成長ができるのだろうという高揚が入り混じった感情を、今でも同じ車線の電車に乗ると鮮明に思い出します。

少しは顔つきも変わったかな^_^


プレミアシップは世界各国から選手が集まるリーグであるため、様々な国籍の友達ができました。今では、テストマッチをすると対戦相手には大体知り合いがいます。友達の友達は大体友達的な海外の雰囲気が私は好きです。多くのハプニングに遭遇して、多少のことでは動揺しなくなりました。強くなったと思います。様々な人がいることを知り、他人を受け入れることが少し得意になりました。自分を守るために、合わないものからは遠ざかるスキルも手に入れました。海外の美容院では散髪をしない方が良いことも良い学びです(是非みなさん活かしてね)。
海外に出てみて、日本の良さにも改めて気付きました。

Do not trust them
マッシュルームな山本選手



海外に出るチャンスがあるなら是非勇気を出して行ってみてほしいです!
もちろん、海外に出ること=成功ではありません。私は高校卒業後の進路を考えていた際に、海外留学も考えてみました。そこで相談した人からは「海外だからと言っていいトレーニングができるわけじゃない。代表のスコッドに入ってトレーニングしている方が間違いなく強くなる」と助言をいただきました。
"ラグビー選手として"、は恐らくそうかもしれません。なぜなら、イギリスでも高校生のチームを見ているとエース級が2人ほど飛びっきり上手で、全体的には日本の高校生のチームの方がスキルフルだと私は感じるからです。ボールが地面に落ちる回数も圧倒的に違います。

一方で、人間的にはどうでしょうか。異なる文化に触れて、海外の友達を作って、語学も堪能になって、感性が磨かれて、今の私とは異なったと思います。どちらの私の方がいいか、その判断は難しいです。しかし、今の私はラグビーを強く強く軸にして生きてきたから、少し柔軟さが足りないと思う時もありますし、人間らしさが欠ける時もあります。
若い内に様々な文化に触れて、知っておくだけで、そこからアンテナを張っておくだけで、何か機会を得ることができるかもしれません。

ラグビーをしていなくても普通に語学留学したらよいのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。それでも良いと思いますが、ラグビーを使えば友達作りやコミュニティへの参加のハードルが低くなります。知らない地に行って、友達を作るのは容易なことではありません。でもラグビーがそれを簡単に可能にしてくれます。
留学をしてみて海外が合わないと思ったら、それはそれで知れたことが何よりです。今後は日本の素晴らしさを堪能すれば良いのです。海外が合うと思ったら、どうやって海外に行く機会を増やすか、住むかを考えて行動すれば良いのです。また新しい世界が広がって、人生が豊かになっていきます。

生涯で同じ経験をするならば、間違いなく若いうちにした方が、より自分のモノになります。私はあの時、イギリスに行こうと決断した私に感謝しているし、サポートしてくださった方々に再度御礼を申し上げます。有難うございました。



5.今後の展望

若い選手に海外に出ることを勧めていますが、昨今、海外情勢は安定していません。それは保護者の方がとても不安に思うポイントだと思いますし、そもそも、どのような繋がりから海外に人やチーム、学校とコンタクトを取ったらよいか分からない場合が多いと思います。
海外に留学してみたいけど、上記に挙げた点を不安に思う方をサポートしていく仕組みを今後作りたいと思っています。イギリス留学が中心になると思いますが、どのようにしていけば良いか、希絵さんと構想を練っています。

理想を言うと、希絵さんがイギリス滞在中にパートナーを見つけて長期滞在し、私は日本に戻ります。留学を希望される方の国内で必要な手続きなどを日本にいる私がサポートし、渡英した後は希絵さんが不安要素の多い点を中心にサポートします。この事業を成立させるためにも、希絵さんに良きパートナーが見つかるように、皆さん心よりお祈りください!

右側の赤いサンタさんが希絵さん

冗談はさておき、何か海外留学に関しての相談がある方はSNSでメッセージをいただければ、お力になりたいと思うので、ご遠慮なくお問い合わせください!

それでは、今回も長い記事になりましたが、ご精読有難うございました。

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