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所属したプレミアの2チームを比較してみた

今回の記事では、私がプレミア(女子)で所属したウスターウォリアーズと所属しているセールシャークスを様々な観点から比較してみたいと思います。


日本国内のクラブと比較しても様々な違いがあると思います。そういった点からもお楽しみください。




1.文化、雰囲気

-1.チームの文化、雰囲気

シャークスは2020-21シーズンからプレミアに参入したチームであるため、若いチームであり、おそらくチームに長く在籍している選手でも今シーズンが4シーズン目だと思います。ウォリアーズでは100Capを迎える選手も数名いましたが、シャークスでは最多でも50cap過ぎです。急ピッチでチームを作り上げる必要のあったシャークスは世界各国から国際レベルでの選手が多いです。特に多いのはアメリカ代表で、プレミアでプレーしているのがそう多くないイタリア代表の選手も2人います。

ウォリアーズにいた欧州以外出身の選手は日本人の私とカナダ人1人だけだったので、シャークスの方が多様性があります。しかし、ウォリアーズの方がよりお互いを助け合いながら活動をしていた気がします。シャークスはイギリスの中でも大きな都市であるマンチェスターに拠点を置くチームで、チームメイトが住んでいる場所が点々としていて、オフフィールドで接点を持つのが難しいです。一方で、ウォリアーズが拠点を置いていたウスターは大きな都市ではなかったので、チームメイトの大半はウスター大学に通う学生か、ウスターで仕事をする選手だったので、オフフィールドでの接点が多かったような気がします。ウスター出身の選手は少なく、皆、ラグビーをするためにウスターに来たような形だったので、よりチームとしてのコミュニティの結束が強かったのかもしれません。
プレミアのチームに幾つか参加してきてウォリアーズに来た元チームメイトが言っていました。「ウォリアーズの人の良さは別格で、本当にみんな仲が良くて驚いた。」
当時の私は移籍することなどないと思っていましたが、実際に移籍してみて彼女の言っていた意味が分かる気がします。
さらに、その結束を加速させた要因の一つに、"練習後の食事"が挙げられます。ウォリアーズのDoRはチームメイトとご飯を一緒に食べてコミュニケーションをとる時間を大切にしていて、ビュッフェ形式での食事だったので、私もその場で練習の振り返りと同じテーブルに座っている人としたり、誰かと休みの日の約束をしていました。シャークスの食事の提供はあるのですが、テイクアウェイ形式なので、そういった時間はありません。

ウォリアーズの練習後の食事。超イギリス。


-2.地域の雰囲気

ウォリアーズのウスターからシャークスのマンチェスターへと移籍した私ですが、この順番で心からよかったと思えるくらい異なる場所です。逆だったら、少し生活に不便さを覚えていたかもしれません。
ウスターは少し落ち着いた街で、中心はそれなりに栄えていますが、少し離れると自然豊かな地域が広がっていています。私の場合ですが、最寄り駅までは徒歩30分(スーツケース持っていた時は地獄)、バスは通っているけど必ずしも行きたい目的地まで路線が張り巡らされているとは限らない、公共交通機関はそんな感じでした。移動は可能な限り、歩くでした。笑

ウォリアーズの休日、試合を見る。
ウスターの中心地から車で30分弱の
Malvern Hillから見れたオーロラ



空港もない街だったので旅行をする際にはバーミンガム、ブリストル、ガットウィックまで行った覚えがあります。
一方で、マンチェスターは本当に大きい都市です。中心地には電車、バス、トラムが充実していて目的地への移動方法に困ることはありません。一度、友達に連れて行ってもらってマンチェスターのシティセンターにトラムで向かいましたが、本当に便利でした。また、マンチェスター空港も街から近い場所にあるのはとても魅力的です。
シティセンター内には何もかもが揃っており、ウスターに住んでいた頃に困っていた日本食レストランや韓国料理屋さん(海外にいると日本食よりも食べたくなる)探し問題が一瞬で解決されました。出かけた際も、本格的な韓国料理屋さんで夜ご飯を食べて感動しました。まだ遭遇したことはないけれど、日本人の方も多くいそうな気がしています。

街並みじゃないけど雰囲気は最高!マンチェスター。
※普段はこんなに晴れていない。
マンチェスターに来て良かったと思ったこと。イギリスで生肉+生卵が提供されることがあるなんて知らなかった。


ところで、マンチェスターで蜂のマークを沢山見かけるのですが、どうやらマンチェスターといえば蜂らしいです。

イギリスらしい町並みと共に、ゆっくりと過ごしたい方にはウスター、シティの便利さや最先端を行きたい方にはマンチェスターをお勧めします。
あ、大切な追記ですが、マンチェスターの方が北に位置しているとあって寒いですし、雨も多いです。「君のラグビーブーツは半年間乾くことはないよ」と言われたとき、少し泣きたくなりました。



2.環境

-1.施設

総合的に言うと、私はウォリアーズのシックスウェイズスタジアムが大好きでした。理由はシンプルで、何もかもが揃っていたからです。グラウンド(人工芝)、観客席、ジム、室内練習場、分析室、アイスバス&ホットタブ、シャワー、ミーティング会場、バーなど、トレーニングや試合を行うのに申し分のない設備でした。私が日本にラグビースタジアムを作れるとしたら、間違いなくシックスウェイズスタジアムをモデルにします。

大好きなシックスウェイズスタジアム



シャークスの施設もシックスウェイズスタジアムと同じような環境(観客席とバーはない)でとても良いのですが、女子のプログラムは練習会場が月、火、木で全て異なります。練習会場が異なるだけなので、ジムやミーティングまでは同じ場所で行うのですが、チームミーティングが終了し次第、月曜日と木曜日は移動します。その理由は、特に冬は雨や低い気温でグラウンドの状態(芝)があまりよくないことが多いので、チームランを行う木曜日はなるべく良い状態で練習をするために人工芝のグラウンドを持つ、近くの大学へと移動するからです。その時間が少しストレスです。
こちらが普段の拠点となるトレーニングセンターです。男子の選手も使っていて、早くジョージフォード選手に会いたいです!

シャークスのロッカールーム

こちらは男子のホームゲームで使われているスタジアムです。2025年ワールドカップイングランド大会でも使用される予定で、過去にセールシャークスはこのスタジアムを購入しようと試みたと聞きました。シックスウェイズスタジアムのように練習から試合まで全てが同じ場所で完結させたいみたいです。いつか是非、実現してほしいです!


-2.コーチング

どちらも良いです。シャークスの方が少しスタッフが多い気がします。どちらのヘッドコーチ(もしくはDoR)も女性で元国際選手です。ウォリアーズのDoRは元イングランド代表のキャプテンも務めていたスクラムハーフ出身の方で、シャークスのヘッドコーチは元ウェールズ代表のキャプテンも務めていたフランカー出身の方です。興味深いことに、二人とも女子のバーバリアンズを同時期に指揮していました。
シャークスの方があまりキッキングゲームをしない傾向にあります。一方で、ウォリアーズはキックを多用していて、特に9番起点のキックが多かったです。これもチームのヘッドがどこのポジション出身かということが大きく影響している気がします。

-3.練習

シャークスの方がコンタクト練習が多いです。ウォリアーズは週に1回(火曜日)、低いタックルをパッドを使って確認程度でしたが、シャークスは火曜日はフルコンタクト、月曜日、木曜日でも全体練習ではないスキル練習でも少しコンタクトが入ってきます。
あとは、シャークスの方がいい意味でネジが外れている選手が多いので、強くなれそうです。シャークスの方が人数も多く、40人程度はいるので、いつも15vs15ができるのは実践的で良いです。ウォリアーズは日によっては15vs15ができないときもありました。
練習自体もシャークスの方が長く実施しているので走行距離は今の方が高いですが、ウォリアーズは練習の終了間近で目標の走行距離に達していなかった場合にはトップアップでランメニューを追加されていたので、スマートに身体へ良い負荷をかけることができていたと思います。

-4.栄養

こちらに関してはウォリアーズの方が私は好きでした。ウォリアーズでチームから提供されていたことは、・練習後の食事(火曜日、木曜日)・プロテインシェイク・スナック・ホームでの試合時のブランチでした。
シャークスでチームから提供されていることは、練習後の食事(火曜日・木曜日)・プロテインパウダー・クレアチン・スナックです。
練習後の食事はどちらとも提供していただけるのですが、先程も述べた通り、ウォリアーズはビュッフェ形式で温かいご飯を食べることができていましたし、その場でチームメイトとの交流を図ることができていました。シャークスでは遠方から通っている選手も多いのでテイクアウェイ形式で、家に持ち帰ってから食べます。やはり、練習直後にスタジアムでみんなとご飯を食べていた日々が恋しいです。
また、ウォリアーズにはスナックの提供コーナーがあり、そこには幾つかの味のプロテインパウダーと牛乳や豆乳、オーツミルク、冷凍フルーツ、ピーナッツバターなどとミキサーが置いてあり、自由にプロテインシェイクを美味しく作ることができました。よくチームメイトとトロピカル味のシェイクを作って乾杯をしていました。シャークスは一人ずつにプロテインパウダーとクレアチンを提供してくれて、トレーニングセンター以外でプロテインを飲むときも多いので助かっています。

シャークスからの提供!
クレアチンもあるのはすごく助かる!


両チームともこのカテゴリーでは申し分ないのですが、私の中でウォリアーズが優勢に立つのは、プロテインシェイクの影響が大きいでしょう。

材料はバナナ、冷凍マンゴー、ヨーグルト、ココナッツミルク、蜂蜜、トロピカル味のプロテイン!


-5.プログラム

両チームとも、月曜日スキル中心、火曜日強度高めの練習、木曜日チームランと同じような一週間を過ごします。それらは19時頃から開始する全体練習の話で、スキル練習やIDP練習、分析、ミーティング、ジムなどは練習までに予定されています。シャークスはジムの時間が45分~60分に設定されていて、私はジムのプログラムを進めるのが遅い人なので、時間内に終わらないことが多いので、早めに来て実施したりしています。ウォリアーズは15時~18時の間で好きなタイミングでウエイトトレーニングを実施すればよかったので、じっくり取り組むことができました。また、両チームともにキッキングセッションが入っていて私はとても楽しんでいますが、この点に関してはシャークスが大優勝です。元イングランド代表のフライハーフのレジェンドからキックを教わることができるので、毎回何かしらの学びを得ています。私は実際に受けたことがありませんが、両チームともに"スクラムクラブ"というものも存在し、特にフロントローの選手を中心に、スクラムマシーンを使って、コーチとスクラムの強化を図っていました。

ウォリアーズのキッキングクラブ
キッキングクラブも全部撮影してくれていた。感謝!


-6.スタッフ

スタッフの数はシャークスの方が多いのですが、役割はどちらとも同じような編成でした。コーチは、ヘッドコーチ、アタックコーチ、ディフェンスコーチ、ブレイクダウンコーチ、フォワードコーチ、バックスコーチ(アタック&バックスなどのように兼ねている人も存在)、ストレングス&コンディショニングコーチです。メディカルは、ヘッドトレーナーとサポートトレーナー。いつも映像を撮影してくれたり、分析アプリのHudlに動画をアップロードしてくれるアナリスト、食事指導をしてくれる栄養士、練習後の食事を作ってくれるシェフ、チームの運営に欠かせないマネージャー、チームの活動や試合のメンバー発表などを行うメディアグループなど、沢山のスタッフがいます。今書いたのは、普段トレーニングセンターで顔を合わせるメンバーの役割なので、実際に会う機会は少ないけれど、裏でチームを支えてくれている人たちもいます。
少し特殊だったのはウォリアーズのヘッドがヘッドコーチではなく、DoR(ディレクターオブラグビー)という肩書きだった点です。日本では聞き馴染みのない名前ですが、実際に関わった中では日本でいうヘッドコーチとあまり変わらない気もしますが、チーム全体をマネジメントしているイメージです。勿論、ラグビーのコーチングもしてくれていましたが、自分の周りにいるコーチたちに委ねて、マネジメントにも力を入れていた印象があります。実際にDoRだった彼女は、オーナーと頻繁に会って情報交換をしたり、クラブのビジョンを描いていました。



3.ラグビー

-1.スタイル

先程も少し触れましたが、シャークスの方がポゼッションに拘ったラグビーをします。その分、ボールの運び方も大切になってくるので、エリアごとにFWの選手の配置を変えたりします。コネクションの重要性を選手がとても理解しているので、よりチームで動こうとしています。
一方でウォリアーズは、個で輝く選手が多かったです。ポッドもベーシックな1331のスタイルでラグビーをしていました。
シャークスよりもウォリアーズの方がラインアウトが安定していて、モールを組んでトライすることが多かったです。スクラムはシャークスの方が安定しています。
キックの回数は圧倒的にウォリアーズの方が多く、9番起点のキックも多用していました。渡英した直後には、「ああイングランドらしいラグビーだな」と思いましたが、それは全チームに当てはまるものではないとシャークスに来てみての感想です。

シャークス初試合、トイメンはウォリアーズに在籍していた10番。惜しくも同じ時期にプレーできなかったけど仲良くなれた。チャージはできてない。


-2.セレクション

基本的に、セレクションはどのチームも試合で勝利するための選抜を行うと思いますが、両チームを比較して、それぞれのコーチが強調するポイントがあるのでご紹介します。
まず、両チームにおいて共通する点は、セレクションポリシーが事前に提示されているということです。チームが掲げるラグビースタイルを体現するために必要なそれぞれのポジションスキルや、求められるフィジカルの数値などが、チームがスタートするタイミングで知らされます。そのため、選手からセレクションに対して大きな不満等の声があがることも少ないです。
ウォリアーズは少数精鋭で大枠のメンバーがある程度、固定されていました。もちろん、怪我等で少しずつメンバーチェンジはありました。また、その中で、コーチが強調していた点は、"対戦相手によって私たちのベストメンバーが変わる。私たちがキックを沢山使うべき試合ではバックスはそのような編成になるし、セットプレーが重要になる試合ではフォワードの編成はセットプレーの安定を重要視したセレクションになる。"ということでした。それゆえに、私が12番で起用されるときは、ボールをなるべく早く外の選手へ運んだり、ボールを沢山動かして相手のDFの穴に攻めていきたい時だと理解していました。ウォリアーズは唯一センター陣が毎試合のように変更されていたので、その点は少しアジャストするのに苦労したのを覚えています。
一方で、シャークスはローテーションを重視しています。ウォリアーズよりもスコッドの人数が多く、それぞれのポジションに質の高い選手が数名ずついるため、それが実現可能です。ローテーションを上手く行うことによって、蓄積する疲労による怪我の発生率を抑えたり、選手のモチベーションを保つことができます。しかし、一緒に住んでいるチームメイト曰く、昨シーズンは試合で上手くいかなかったときの理由に「ローテーションが多くて、隣の選手と息が合わなかった」と言った言い訳になってしまっていたそうなので、そうは言えないくらいに勝利の数を高めていかなければなりません。





4.まとめ

両チームに在籍していたことはかなり貴重な経験で、移籍してみてわかることが幾つかあり、それらをシェアしたいと思ったので今回この記事を書きました。どのチームにもそれぞれの良さや、更によくなれる点があり、チームの選択の際には、自分が大事にするポイントを照らし合わせることが大切だと再認識しました。また、この経験は間違いなく、選手を引退した後にラグビーに携わるキャリアを選んだ際に活きてくると思うので、アウェイの試合の時など可能な限りチームの在り方を学んでいきたいと思います。また、有益な情報があれば皆さんにもシェアします!


かなり長い記事になりましたが、ご精読ありがとうございました!


非常に穏やかな顔の私

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