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新たな労使関係のカタチ~トヨタの”本気度”~

マイクロ人事部長の髙橋実です。

さて、このNoteで、以前こんな記事を書きました。

2020年も、春闘が始まっています。
そして、トヨタが「ベアゼロ(賃金のベースアップゼロ)」を発表しました。

この東洋経済を読むと、非常に興味深い、これまでの労使関係の終焉と、これからの労使関係の新しいカタチが、さらに浮き彫りになってきたように思います。

"世界的に自動車市場が低迷する中でも新車販売を伸ばし、2020年3月期に営業利益2兆5000億円(前期比1%増)を見込む。一時金は6.5カ月要求に対し満額回答(10年連続)したにもかかわらず、なぜ「ベアゼロ」を決めたのか。"

「ベアゼロ」の真意は?

事業業績では順調で、一時金(賞与)は、満額回答。
でも、ベースアップ(ベア)は、ゼロ回答。(コロナウイルスの問題のありなしに関わらず、と、はっきりと言っている)

「今、トヨタは生き残りをかけ、あらゆる分野で必死にチャレンジし、必要な投資を続けている。だが、その回収がいつになるか分からない。(賃金は)すでに日本のトップレベルの水準にあり、一度上げると下げることが難しい賃金ベースをこれ以上引き上げると、競争力を失うことにつながりかねない」(労使交渉の経営側の代表である河合満副社長)
トヨタ労組は賃金水準が製造業のほかの企業と比べても高いことは認めた一方、「組合員の働きぶりが変わっている」として、その頑張りにベアでも報いてほしいと要望。それでも、「会社側の覚悟、腹を決めたところが大きかった」と、光田書記長は振り返る。

すごいですね。今までのような、単なる賃上げの労使交渉ではなく、「これからの未来の組織のカタチ」を見据えた労使交渉だったことが、このコメントだけでも窺えます。

企業は何を守るのか?

3月11日の回答日、豊田章男社長は労使協議の場で、「これからの競争の厳しさを考えれば、すでに高い水準にある賃金を引き上げ続けるべきではない」とする一方、「トヨタで働く人たちの雇用は何としても守り抜く」と断言した。

すごいですね。まさに「企業としての覚悟」を感じます。
「企業は、雇用を守るもの」という、当たり前だけれどとても大切な話。昨今、高賃金で低成長の45歳以上の早期退職制度(リストラ)が、大手企業で横行する中、原点に返った企業としての責任を全うしていると感じます。

そんなトヨタも、過去1度だけ、リストラをしています

もう70年も前の話。でも、創業一族の先人の過去の教訓を、70年経った今でも続けている、それが、豊田章夫社長の、トヨタの凄いところだと思います。

労使と「年功序列の終焉」で合意~これからの企業と労使の在り方~

さて、話を戻すと、今回のトヨタの動きは、言ってみれば「年功序列の終焉について労使で合意している」ということになると思います。

「賃金制度改善分(ベア)のみではなく、根元から、賃金制度維持分の昇給分も含めて、頑張りを反映させるよう、来年から(賃金制度を)変えていくべきではないかと考えている」(桑田副本部長)
この方向性について労組側も同意しており、2019年に設置した労使の専門委員会で議論を行う。そして、早ければ2021年にも制度変更が行われる。前出のトヨタ幹部は、「働き方に応じた賃金制度を作る。年功序列も壊したい。理想を言えば、(トヨタ単体の)社員7万人分の賃金体系を作らないといけない」とまで言う。

この動きは、昨年の春闘、初めて春闘で年次合意せず、秋にずれ込んだ、冒頭の記事から、ずっとこの交渉を続けている、それほど、トヨタの経営陣も、そして労働組合側も、真剣に対峙していることが窺われます。

まさにこれが、これからの企業の労使の在り方ではないでしょうか。
これからの未曽有の時代、少子高齢化による労働人口の減少、国際的な競争力の激化、テクノロジーによるイノベーションで事業競争相手が変化している、そして、今回の新型コロナのような全く経験したことのない有事もあるかもしれない。スピード感が求められるこれからの時代に生き抜くために、労使とも一緒に考えていく、これまでの、労使の「闘い」ではない姿を(まあ正確に言うと労使協調路線への変更から長年手が付けられなかったところではあるけれど)まさに見せてくれた事例なのではないでしょうか。

トヨタは、「経営陣リストラ」も断行している

もう一つ、忘れてはならないのは、トヨタは、数年前から「経営陣のリストラ」を断行しています。これはまさに、従業員だけに押し付けるのではなく、経営陣自身も変わる。その表明ではないかと思います。

さて、そのほかの大手企業は、果たしてどう動くのでしょうか?
中身を伴わない、「トヨタがベアゼロだからうちもゼロで」なんてことだけは、勘弁してほしい。今必要なのは、企業側だけでなく、大手企業の労働組合のメンバーはしっかりと考え、経営と対峙していくべきなのではないでしょうか。

こんな反応は、もう辞めませんかねぇ。


厳しい時代に入るからこそ、企業は、経営だけが考えるものではなく、働く人たち自身が自分事として考えていくべきではないでしょうか?

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