お客さんの特徴を書いたメモ

お客さんの特徴を書いたメモは絶対にお客さんに見られてはいけない。例えばお客さんが「このTシャツを後で買うからレジに置いといてくれ」と言ったとする。お客さんの名前を聞いてレジに持っていく。レジに着いて思う。お客さんの名前なんだったっけ。週5でバイトしてるとこんなありえないド忘れをすることがある。これはどんな優秀なスタッフにもある。そんな時は「メガネの人」とか「赤いジャケットの人」とかメモを置いておく。本当は「佐藤様」とか書かなきゃいけないんだけどそれはもう仕方がない。

そのメモは絶対にお客さんに見られてはいけない。これは鉄の掟だ。

先日靴を買いに行って試着してた時に、別の店で買い物した袋を椅子の横に置いた。店員さんが丁寧に接客してくれて何足か試着した結果スニーカーを一足買った。帰り道に気付いた。荷物が少ない。買い物袋を椅子の横に置いたまんまだ。すぐUターンしてその店に戻った。

「あの、さっき買った袋を忘れちゃったんですけど、、、」

「あ、預かってますよ。これですか?」

レジにおれの買い物袋があった。

「それです!」

おれの袋の上には何か走り書きされたメモがあった。店員がそのメモを取ってさっとゴミ箱へ捨てた。おれは見逃さなかった。


「黒い人」


メモにはそう書かれてた。確かにその日おれは黒い帽子に黒い上着を着ていた。おれは黒い人だ。顔は色白だけど、黒い人だ。そもそも店員さんに名乗ってないし。特徴を書くしかない。仕方ない。黒い人だ。

丁寧に接客してくれてたのに、あの店員さんおれのこと「色」で認識してたんだなぁ。そう思うとなんとなく悲しくなった。

お客さんの特徴を書いたメモは絶対にお客さんに見られてはいけない。


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