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山間地の新茶が抱える課題を伝えたい|美濃加茂茶舗と鈴木茶苑が一緒に「山の新茶 2020」を販売した理由

美濃加茂茶舗のオンラインストアでは現在、新茶特別企画商品として『【美濃加茂茶舗×鈴木茶苑】山の新茶 2020』を販売しております。

この企画は、山間部の茶産地が抱える課題を伝えるとともに、日本茶の旬の時期に山のお茶の香りとその美味しさを届けたい、との想いで始まりました。

茶業が抱える課題を1つでも多く伝えたい


「山間部の茶産地が抱える課題」は色々とあります。新茶に関して言うと、環境的な面から新茶の収穫時期が他産地より遅く、新茶発売時期にはすでに市場に各地の新茶が出回りきっていて不利な状況にあることがそのひとつ。

新芽は暖かくなると出てくるため、新茶の収穫は桜前線と同じように暖かい地域から始まっていきます。寒暖差が厳しく5月に入っても時間帯によってはマイナスの気温になるような山間部は、新茶の収穫が他地域に比べて1-2ヶ月遅れます。寒暖差が激しく霧がかかるような環境はお茶の栽培に適しているにも関わらず、こと新茶に関しては、販売が遅れてしまうことから値が付きづらいのです。

オンラインショップ用東白川村風景

構想は昨年からすでにありました。美濃加茂茶舗はただ美味しいお茶を売りたくて始めたブランドではありません。茶業が抱える社会課題を解決することをミッションのひとつに掲げています。

そのため、ブランドが始まって初めての新茶シーズンに、ただ美味しい新茶ができました、と伝えるわけにはいきませんでした。

茶業が抱える課題はたくさんありますが、まず今年は自分たちの産地に根付く課題を知ってもらえるようにしたいと考えました。同時に、美濃加茂茶舗一社だけで販売するより、同じ課題を抱える茶産地と一緒に伝えるべきだと思ったのです。

「山の新茶」を届けるなら絶対にココと組みたい!


お声がけするお茶屋さんは、すぐに決まりました。面白いお茶づくりをされていて、店長の伊藤が美濃加茂茶舗を始める前にも個人的に訪れていた鈴木茶苑さんです。

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鈴木茶苑さんは、美濃加茂茶舗のお茶を栽培している岐阜県東白川村と同じく、山間部の茶産地である静岡県の川根(かわね)で茶業を営まれています。今回の企画についてお伝えしたところ賛同していただけ、新茶のコラボ販売が実現しました。

全部飲んでみてから決めてください!と言われ、いつ出揃うんだろうとドキドキしながら待っていました。笑 なにせ、お互い新茶の収穫が遅いので、他のお茶屋さんから新茶のニュースがひとしきり発信された頃でもなお、販売する商品が決まっていないのですから、気持ちだけが焦る時期が続きました。

Twitterなどで鈴木さんの新茶収穫の様子をウォッチしながら、そろそろかな…と心待ちにしていたところ、新茶のサンプル送付のご連絡がついに!!

届いた翌日にメンバー二人で怒涛の試飲会を行いました。

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当初ひとつだけ選ぶ予定だったのですが、あまりにどれも素晴らしくて決めきれず。蒸し製のものをひとつと、釜炒りのものをひとつ、計2つの商品を選ばせていただきました。

そうして山の新茶セットが完成しました。

山の新茶2020_2_アートボード 1

鈴木茶苑おくひかり(新商品ver

鈴木茶苑ふじみどり(新商品ver


お茶の魅力は「敢えて時間を設ける楽しさ」。お茶づくりの魅力は「二回魂を込められること」


まだ直接会いに行けない状況でしたので、質問に対してコメントしていただく形で、今回の企画にご協力いただいた、鈴木茶苑の鈴木さんにお話を伺いました。

--- 鈴木さんが思うお茶(お茶作り)の魅力や楽しさはなんですか?

お茶は、精神面での作用が魅力的です。
飲むとほっこり、リラックスできて、カンフル剤にもなる。また、お茶を淹れるには時間が必要です。だからこそ敢えて時間を設ける楽しさがあると思います。
そして最近つくづく思うのが、”茶で繋がる縁”ですね。
茶はSNSだと言う話を聞いたことがありますが、本当に繋いで頂く事を実感します。


お茶作りの魅力ですが、茶は「栽培」と「製造」の二工程があります。
二回魂を込められる、と言いますか。
通常の作物は栽培から収穫で終わると思いますが、茶はそこからまたスタートでもあります。
また、僕は特に製造面から茶に入ったので強く実感しますが、どんな腕の持ち主であっても、原葉(=製造する前の茶葉)そのものを越える事は出来ない。最近特にそう思います。
栽培が有って製造が有る。そして双方は強くリンクしている。それが面白くてたまらないですね。


--- お茶づくりの大変さや苦労についてお伺いしたいです。

僕は敢えてこの道を選びました。
なので、もちろん個々の作業で、キツいとか暑いとか眠いとかホコリっぽいとか(笑)はありますが、そこまで苦にならないですね。

また、父は最盛期からは半分近く栽培面積を減らしています。
圃場(茶畑のある場所)も比較的近所に集約しています。
経営上必要な面積を計算して出すと言うよりは、夫婦二人で無理の無い面積を最初に設定して、その上でどう収益を確保するか、と考えています。
経営的に正しくは無いかもしれませんが、僕はそうしたいです。
苦労と言う意味では、茶を生計の礎にしたいと思いつつ、まだまだそうもいかない点ですかね…。

鈴木茶苑_family


--- 今回、セットで販売する「おくひかり」「ふじみどり」の個性や魅力、楽しみ方などを教えてください

※「おくひかり」、「ふじみどり」は、お茶の品種の名前です。

・おくひかりの魅力について

正直なところ、おくひかりは難しいです。
この辺り(静岡県の川根)で味わえるおくひかりの殆どはやぶきたとそう変わらない味わいだと思います。
だからこそ、どういう魅力を引き出せるのか?という意欲は掻き立てられます。
“おくひかりの魅力”になって無いですね…でも、なんとなくポテンシャルはある気がするんです。

※やぶきた:日本茶の代表的な品種。全国で栽培される約75%の品種がこの「やぶきた」です。

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▲おくひかりの茶葉
収穫期前に直射日光を遮り覆いを被せる「被覆栽培」をすることでうま味がのった茶葉を、一晩萎凋(微発酵)させて華やかな香りを引き出し、個性的なお茶に仕上げています。

・ふじみどりの魅力について…

「ブドウのような〜…」などといった分かりやすいものではないのですが、このお茶にしかない香りが有ると思います。
あまりうまく表現できないですが、他に似てない個性がある品種のお茶です。

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▲ふじみどりの茶葉
収穫後に少し萎凋(発酵)させた茶葉を、釜で炒って作られたお茶。
茶葉の形状は、蒸してから作る一般的な煎茶とは味と香りだけでなく、見た目の形状がかなり違います。


--- 最後に、この企画に賛同してくれたのはなぜですか?どんなところに共感してくれていますか?

賛同と言いますか、誘って頂き嬉しい限りです!
興味をもってもらえるだけでも嬉しいのに、一緒にしてくれるなんて…。

お茶の今後のことについて、高い意欲をお持ちな姿勢が素晴らしいと思っていました。そう言う方と志を同じくしたいですし、少しでも補助になれたら言う事はございません!

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鈴木さん、貴重なお話をありがとうございました。
なかなか聞けない生産者さんのお茶に対する思いが聞け、私たちも改めて学ばせて頂くことも多かったです。


常識にとらわれない製法で作られた鈴木茶苑のお茶は、うま味だけでなく個性的な香りが特徴で、仕事や家事の合間など、気分を緩ませたいお茶としてもおすすめです。


限定販売となっている『【美濃加茂茶舗×鈴木茶苑】山の新茶 2020(新茶3種×限定30セット)』は、好評につき、残りの在庫があと僅かになっております!今回の企画が、たくさんの人に届いたら嬉しいです。




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