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私は今日、ここを卒業します。

2023年3月18日、土曜日。
7時半にアラームが鳴る。
いつも通りの手つきでアラームを止め、天気予報を開く。
うーん、雨か…。今日くらいは晴れてほしかった。

「今日雨だけど、一緒に車で行く?」
ドタバタと準備している私をみて、父は声かけた。
家から学校まで片道徒歩50分かかる通学路。普段ならきっと歩くの面倒くさがって父の言葉に甘えて車に乗ったと思う。雨なら尚更だ。

でも、今日は歩きたい。今日だけは雨でも50分かけて歩きたい。
「ううん、今日は歩いてく。」そう言って、家を出た。
今日は大学院の修了式だ。

他の院生の皆さん、どういう思いでこの日を迎えてるんだろう。わからない。
でも、大学4年間大学院2年間と、同じ学校同じキャンパスに通ってた私にとっては「大学院を修了する」とともに「6年間通い続けた学校を卒業する」を意味する。
(もっというと、高校も大学附属の学校だったので「9年間通い続けた学校を卒業する」ことにもなる。)

感慨深いなぁ。

ヘッドホンをして、いつものように音楽をかけて、歩き慣れた道をゆっくりと歩いた。慣れていたはずだけど、やはり今日は少しソワソワする。

この道も、思い出いっぱいだ。よく挨拶してくれたカフェ店員、朝からオシャレな人でいっぱいの道路の角っこにあるカフェ、学校帰りに串焼きをくれた焼き鳥の店長さん、よく犬の散歩していたお姉さん、私を見かけると笑って大きな声で挨拶してくれる警備員さん、騒がしい商店街、朝から頑張る人がたくさん出入りする駅の改札口、きっと夜までオフィスの明かりが光る高層ビル…。
「皆さん、私、今日で卒業します」と心の中で挨拶しながら、一つ一つの景色を目に焼き付けるように眺めながら、思い出に浸りながら歩いた。

少し早めに大学に着いた。誰もいない。
いや、誰もまだ来てない時間を狙って早く家を出たからだ。
リュックを下ろして、誰もいない図書館前のラウンジにある一番端っこの席に腰をかける。そう、私はこの席に座るのが大好きなのだ。大学に入ってから自分の席なんて概念なかったけど、私は勝手にここを「私の席」にしてた。

この席にはたくさんの思い出がある。授業の課題をやったりテスト勉強したり、勉強に飽きたら周りのみんなが楽しそうに話したり一緒に課題をやったりゲームをしたりしている風景を眺めたり。昼ごはんを食べたり、友達や先輩後輩とおしゃべりしたり、音楽を聞いてドラマや映画見たり。疲れて爆睡したことだってあったなぁ。全てが昨日のことのようで、懐かしい。
卒業する今日この日でも、やっぱりこの席は「私の席」で、変わらず落ち着く。

ピロリンと携帯の通知音。
「もう学校に着くよ!図書館側にいるよ」同じ部活の先輩からの連絡がきた。
前日の夜に「明日卒業式でしょ。一緒に一回学校を端から端まで回らない?寂しいかなって思ってさ」と私の寂しさがりの性格をよく知っている先輩が提案してくれたのだ。大学に入学してから6年間と長い付き合いの先輩でいつも気にかけてくれる先輩、さすがです。今日この日も、またこうやっていつものように気にかけてくださって嬉しいです。ありがとうございます。

図書館、食堂、カフェ、各号館、大教室から小教室まで、部室棟、体育館、道場、研究室と先輩と話しながら学校内を歩く。6年間もこの学校で過ごしているとどこをみても思い出がある。
オンライン授業のために空き教室探して走り回ってたっけ。授業に間に合わせようと部活終わってジャージでクロックスを履いたまま授業に出て先生にツッコマれたこともあった。屋上でアイスを食べながら先輩と深い話もしたし、後輩と購買でお菓子どれを買うかでキャッキャ騒いでたなぁ。

こうやって歩いていくと、ずっとどこか他人事のように思えてた「卒業」を急に実感する。
そっか。
私は卒業するんだ。
今まで当たり前だった、これからもずっと続きそうなこの大学で過ごしていた日常は、たぶんもうなくて、全てが思い出になるんだな。少し泣きそうになった。

修了式が始まる十分前に会場に着いた。
会場前のソファで私のことを待ってくれている両親のもとへ駆け寄る。先輩に「行ってきます」と一礼をして、先輩にかっこいい姿を見てもらおうと、いつもより気持ち背筋を伸ばして堂々と修了式の会場に入る。


私は、今日、この学校を卒業します。
大学、大学院と6年間。高校もいれたら9年間。

6年前、私は「大人らしくヒールを履く綺麗な女性」を思い描いて憧れていた。大学入ったらサークルに入って、華の女子大生をやるんだ!化粧なんかしてオシャレな服をたくさん着て、こなれた女性に成長するんだ!そう思って入学式を迎えた。

ところが、振り返ってみたら、どうだっただろう。

6年経っても私は変わらずスニーカーを履いている。いつもドタバタで、毎日何かしら事件を起こす。今日だって学生証と財布を忘れてきてしまったのだ。変わらず寂しがり屋で、何かあればすぐ泣きそうになって。人前で話すのだって変わらず緊張して声は震えているし、お腹は痛くなる。勉強や研究でも、周りについていくのが必死で、誰よりも時間がかかる。何事も平気な顔でこなす人のことをいつだって羨ましいって思うし、自分もそうなりたくて毎日足掻いてもがいて。

でもね。それでもね。

6年前の私よ、

あなたはちゃんと変わったよ。今のあなたは、自分の中の声に素直に耳を傾ける素直な人だよ。今までのように人に合わせて、引かれたレールに乗っかってばかりではなく、ずっと蓋してきた自分の中の気持ちを大事にして毎日過ごしていたら、素敵なものや楽しいこと、好きなものにたくさん出会えたよ。自分を大事にすることがどんなに大切がわかったよ。嘘をつくことなく、伸び伸びと生きていくことってね、最高に楽しいよ。自分の夢も見つけて、言い訳して逃げることなく向き合えるようになったよ。

そしたら、不思議とたくさんの素敵な人にもたくさん出会えたんだ。

「いつでも味方でいるよ。大丈夫、好きなことを楽しくやってくれたらいい。それが納得することならやっておいで。」といつも私の背中を押してくれる先輩。
「何かあったでしょ。話せよな。」と悩んでいることを気づいてくれる先輩。
「出会えてよかった。本当にどこいようが一生友達でいたいと思えたよ。」と言ってくれた友達。
「先輩のこと尊敬しています。一生ついていきます。」と懐いてくれる後輩。
「いつでも帰っておいで。いつでも待っているよ。」と送り出してくださった先生や部活の監督。

おそらくあなた以上にあなたのことを「大切」だって言ってくれるみんなに出会えたよ。きっと誰か一人でもかけていたら、こんなに変わることができなかったよ。


卒業後、これからは、この6年間で見つけた自分の夢のために頑張ろうと思う。きっと数年経っても変わらず、スニーカーを履いてドタバタと毎日楽しみながらも足掻いてもがいているだろう。

でも、これからは、この学校生活で得た知識や経験、思い出が支えてなってくれる。何よりも心強い支えだ。これが私にとっての一番大きな変化だと思う。だから、今まで以上にもっともっと頑張れる。もっともっと頑張る。頑張れ。


本当に本当に楽しかった。

ありがとうございました。

そして、


私よ、卒業おめでとう!

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