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つる草物語

私は、「屋上太郎」と呼ばれている。
本名は違うけど、このビルの屋上で毎日昼寝をするからそう呼ばれている。
このビルは、「新宿タワー」という名前だけど、実は新宿では一番古くて小さいビルだ。でも眺めは最高だ。
私はこのビルで働いているんだけど、仕事はつまらなくて、昼休みになるとすぐに屋上へ駆け上がって昼寝をする。
新宿の街を見下ろしながら眠りに落ちるのが至福の時だ。
新宿の街は、昼でも夜でも賑やかだ。車や人や電車やヘリコプターが行き交っている。
その喧騒が私には心地よく感じられた。
それは、私が仕事に不満を持っていて、現実逃避をしているからだろう。
ある日、私は屋上で昼寝をしていると、隣に一人の女性がいることに気がついた。
その女性は、「美香」と名乗った。
このビルの近くに住んでいて、このビルの屋上で昼寝をすることが多いらしい。
美香さんはとても綺麗だった。
でも何か悲しそうな目をしていた。
私は美香さんに惹かれてしまった。
「こんにちは」と私は声をかけた。
「こんにちは」と美香さんは優しく笑った。
その笑顔に私はドキッとした。私は美香さんに話しかけることにした。
「あなたもこのビルで働いているんですか?」
「いえ、私はこの近くに住んでいます」
「そうなんですか。じゃあ、なぜこのビルの屋上で昼寝をするんですか?」
「実は、私には理由があるんです」
美香さんは私に、自分のことを話してくれた。
美香さんの父親は、このビルの設計者だった。
でもこのビルが完成する前に亡くなってしまった。
彼は美香さんに、このビルの屋上に何かを隠したという手紙を残していた。
「でも、その手紙には、何を隠したかは書いていませんでした。私は父の遺言を果たすために、このビルの屋上で何かを探しているんです」
「それは大変ですね。でも、もしかしたら、その何かはもう見つけているかもしれませんよ」
「どういう意味ですか?」
「私のことですよ。私はあなたの父さんが残してくれた贈り物です」
私は冗談を言った。でも美香さんは真剣に私を見た。
「本当ですか?」
「えっ、いや、冗談ですよ」
「冗談じゃないと思います。私はあなたに会えて嬉しいです。あなたは私にとって特別な人です」
美香さんはそう言って、私にキスをした。
私は驚いた。でも嬉しかった。私も美香さんにキスを返した。
私たちは昼食を一緒に食べたり、話したりするようになった。
私たちはお互いのことを知り合っていく中で恋に落ちた。
でも美香さんの秘密はまだ解決していなかった。
彼女はまだこのビルの屋上で何かを探していた。
私は美香さんを助けることにした。
私たちはこのビルの屋上を探し回った。
でも何も見つからなかった。
そんなとき、私たちは衝撃的な知らせを聞いた。

このビルは、新宿再開発計画によって取り壊されることになったというのだ。
私たちは慌てて屋上へ駆け上がった。
もう時間がない。
私たちは必死に探した。
そしてついに見つけた。
それは、このビルの屋上に描かれた巨大な唐草模様だった。
その唐草模様の中に、美香さんの父親が残したメッセージが隠されていた。
「娘よ、君は私の宝物だ。このビルも君に捧げる。このビルは小さくて古いけど、眺めは最高だろう?この唐草模様は、君と君の幸せを願って描いたものだ。唐草模様は繁栄や長寿を意味するからね。君はこれからも幸せになるんだよ。私はいつも君を見守っているからね」
私たちは涙した。
美香さんは父親の愛を感じた。
私は美香さんを抱きしめた。
そのとき、爆発音がした。
このビルは取り壊され始めた。
私たちは屋上から飛び降りるしかなかった。
私たちは無事に助かった。
でもこのビルは消えてしまった。
私たちはこのビルの屋上で昼寝をすることはできなくなった。
でも私たちは幸せだった。
私たちは一年後、結婚した。
私たちは今でも、新宿の街を見下ろすことができる場所で、昼寝をすることが多い。
そして、私たちは、唐草模様を見る度に、美香さんの父親の愛と願いを思い出す。
私は仕事に対する考え方を変えた。
私は昼寝をすることで現実逃避をしていたことに気づいた。
私は自分の仕事に誇りと責任を持つようになった。
私は美香さんと一緒に働くことにした。
美香さんは父親の遺産に対する気持ちを整理した。
美香さんは父親が残したメッセージに感謝した。
美香さんは父親が残したビルの設計図や資料を引き継ぐことにした。
美香さんは父親の夢を叶えることにした。
二人は新しい生活を始めることを決めた。
二人は新宿タワーがあった場所に新しいビルを建てることにした。
二人はそのビルの設計者として働くことにした。
二人はそのビルの屋上に唐草模様を描くことにした。
そのビルは「新宿タワー」という名前だった。
でも実は新宿では一番大きくて新しいビルだった。
でも眺めは最高だった。
そのビルの屋上から見える新宿の街は、昼でも夜でも賑やかだった。
車や人や電車やヘリコプターが行き交っていた。
その喧騒が私たちには心地よく感じられた。
それは、私たちが仕事に満足していて、現実に向き合っているからだろう。
私たちはそのビルの屋上で昼寝をした。
新宿の街を見下ろしながら眠りに落ちた。
それは至福の時だった。
私たちは夢の中で、美香さんの父親に会った。
彼は私たちに微笑んだ。
「娘よ、君は私の宝物だ。このビルも君に捧げる。このビルは大きくて新しいけど、眺めは最高だろう?この唐草模様は、君と君の幸せを願って描いたものだ。唐草模様は繁栄や長寿を意味するからね。君はこれからも幸せになるんだよ。私はいつも君を見守っているからね」

おしまい

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