見出し画像

ルートの中が「負の数の2乗」の哲学(実話に基づく作り話)

おれのバイト先の先輩は時々変わったことを言う。

「ねえ誰か、数学の得意な人いない?」
「何ですか急に」
「わたし、この問題がわからないの」

$${\sqrt{(-17)^2}}$$

「17じゃないすか?」
「やっぱりそう?」
「17ですよ」
「わたし、プログラミングできるの。もしコードの中にこれ入れたら、単純に17っていう数値になるの。でも数学的には意味が違うんじゃないかと思って」
「どういうことですか?」
「もともと-17だったわけでしょ。だったら2乗されて平方根を取っても、こいつのアイデンティティーは-17だと思わない?」
「何の話っすか?」
「わたし、プログラミングする上で、数学は道具として使ってたの。でも数学には哲学があると思う」
おれはいろんな意味で返答に困った。
「・・・たぶんこの部屋に先輩の言ってること理解できる人いないっすよ」
「じゃあどこに行ったらそういう人に会えるかな」
先輩は真剣だった。
数学に詳しそうな人、と考えて、おれは大学には専門の学者がいるだろうと思いついた。
「大学じゃないすか」
「行きたくない」と先輩はあっさり言った。
「なんでですか」
「だって日本語が通じなさそうじゃない?」
「先輩・・・偏見ですよ」
先輩も日本語が通じない時ありますよ、とは言えなかった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?