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忘れ去られていた、かわいい思いやりのある通帳

突如判明した私の定期預金の存在。

私と母の通帳捜索が始まった。
どこだ、どれだーー!

私が持っていたのは今も使っている通帳。
銀行が違うし、私が社会人になる際に開設したものなので、もちろん目的のものではない。

母が引っ張り出して来たのは、父の通帳。
父は16年前に亡くなっている。
「これがまだ生きてるのか?」
ハガキの案内のあった銀行の通帳だった。
ただ係員さんに言われたのは、今回の取引分はあくまで私の口座であること。家族であっても名義が違うのであれば、それはないと。

母がもう1つ通帳を引っ張り出してきた。
「ミンチョンだけで妹の通帳なかったのよ。これかもしれない。」
見たことがない銀行の通帳だった。
母に聞くと、30年ぐらいに別の銀行に名前を変えたはずだと言う。(その名前の銀行も私はわからなかった。)

私が持っていて妹が持っていない口座か。可能性があるな。
その通帳の銀行の名前をググってみた。
母の言う通り別の銀行に名前を変えていた。
更に統合があり、今回ハガキが届いた銀行に名前が変更になったという!

きっとこれだーー!

通帳の中を見てみると、その通帳は定期預金と普通預金両方記帳できるタイプで、金額も大きく差はなさそう。
いつ開設したのか確認すると、私が3ヶ月の頃だった。わからないはずだ……。
「ミンチョンが生まれて、初めてもらったお年玉を置いておこうって話になって、ついでに口座も作ろうって流れになったんだね。」
母はそう推察した。

かわいいキャラクターが描かれている通帳。
これを大人になった私が使うことを想定して口座開設したのかな。
それなのに、父が亡くなったり、銀行名が変わったりして現在まで存在を忘れられていたなんて…。

「そのお金さ、妹と半分こしてあげてよ。」
母はそう言った。
もちろん、と私は答えた。
通帳には開設時ともう1つ記録があった。
それは妹が生まれて初めての1月だった。

数十分前に止められて使えなくなってしまった通帳とキャッシュカードだけど、父が私と妹のために大切に残してくれた証拠がそこには刻まれていた。

続く


ちなみに、30年前にこんなことがあったのかな?というショートショート作っています。


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