映画『おもかげ』短編から長編へ物語を発展させる試み 息子を失った女性の物語
今週金曜日公開の映画をご紹介します。
スペインの新鋭ロドリゴ・ソロゴイェン監督作『Madre』(2019)です。
『Madre』とは、スペイン語で母親と言う意味。
この映画、もともと2017年に製作された18分の短編映画でした。
この短編は各国の映画祭で評価されまして、最終的には2019年度のアカデミー賞短編実写映画賞にノミネートされています。
この18分を長編映画へと発展させています。
おもしろいことに、冒頭の18分は2017年に製作した短編映画をそのまま使用しているんです。
初めて見たときにはそのことを知らなくて、「なんかすごい熱量のある冒頭シーンだな」と感じていたのですが、後になって宣伝の方から
「実は、あの冒頭は短編映画をそのまま使用しているんです。」と教えていただき、驚きました。
短編から長編映画に発展することってよくあると思いますが、既存の短編映画の続きを作るという面白い試みをしています。
短編の雰囲気を残したまま、その時点では存在しなかった主人公の未来を作るんです。
クリエイティブな思考を刺激されませんか?
ソロゴイェン監督は、予定調和なストーリーにしたくないという思いがあって、執筆パートナーのイザベル・ペーニャさんと脚本を共同執筆するという形をとっています。
しかも、ふたりそれぞれ別で執筆して、あとで物語を摺り寄せるという方法です。
ひとりの発想より、二人以上でアイデアを持ち寄った方が、より深く広く物語が広がるのではないかと最近思うのです。
そういった脚本の作り方が見事に表れていて、想像を超えた予想外の展開になっていきました。
通常だったら、こっちへ行くだろうなという方向性には向いていきません。
主演のスペインの女優のマルタ・ニエトさんがとても美しい方でした。
悲劇に囚われてしまった女性が、暗闇から抜け出せそうな光を見つける。
という難しい役柄を演じていいます。
感情を爆発させる部分と、グッと抑え込む部分のバランスが素晴らしくて、彼女なしではこの映画の魅力は半減してしまったかもしれません。
脚本をクリエイションするという意味でも勉強になる映画ですが、マルタ・ニエトの演技の素晴らしさも一見の価値ありです。
2019年製作/129分/PG12/スペイン・フランス合作
原題:Madre
監督・脚本:ロドリゴ・ソロゴイェン 共同脚本:イサベル・ペーニャ
撮影:アレックス・デ・パブロ 製作:マリア・デル・プイ・アルバラド
出演:マルタ・ニエト、ジュール・ポリエ、アレックス・ブレンデミュール
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