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画の外に画を求める

文人画の芸術観において、書、画、印(篆刻)の三者は密接な相関関係があると言われています。そのような思想のもと博士課程履修時、私も水墨画の他に書道と篆刻を習い始めました。

篆刻に関しては力およばず学習を断念。自ら印章を制作することは出来ませんでしたが、清の趙之謙がうちだした「印外求印」という理論から篆刻を転化させるという発想を得ました。そして独自に「画外求画」(画の外に画を求める)という考えをもとに、絵画と印(篆刻)を融合させた創作スタイルを展開し始めたのが2013年。

この頃の創作の主題は「篆書体を応用した絵画創作」。篆書体と絵画を融合させることで画面のデザイン性を強化し、画面を抽象と具象の間に置くことで作品を斬新かつ表現豊かに展開していくことを念頭に、日本画の絵の具と水墨を媒材に制作しました。

〈画外求画〉は「篆書体を応用した絵画」シリーズの中で、「印篆を応用した絵画創作」の系列作品になります。

清水峰子〈画外求画〉
2013 墨、水干絵具、宣紙
85.8 x 92.4cm

もう一つ、〈紅楼夢〉という作品は、曹雪芹《紅楼夢》第一回「假作真時真亦假,無為有處有還無。」という小説の一文を引用し、文字を使って日本画の絵の具と墨で絵を描きました。文字をわざと欠けさせることで、古典小説や《紅楼夢》が持つ独自の雰囲気を表現してみました。

清水峰子〈紅楼夢〉
2013 墨、水干絵具、宣紙
85.8 x 92.4cm

自分独自の絵画表現とは何かと悩んでいた頃、「画外求画」(画の外に画を求める)という発想から始まり、その後3年の時間を費やして制作した博士課程卒業作品へと発展していくことになりました。これらももう10年前の作品になるのですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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