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夕食後のから騒ぎ

「あ~って口開けてもらっていい?あ~って。」
「○○さん、ここに入れ歯、入れてもらっていい?」
認知症グループホームでは、入れ歯を外して介護職員へ預けて就寝することになっている。

起きていたいの?

言葉で話せる人で自分で入れ歯を外せる。
でも夕食後、なかなか外してくれない。
「○○さん、歯磨き済んだ?」
「後でする。もうちょっとテレビ見てたいねん。」

夕食は6時すぎには終わってる。
そろそろ7時。
もう一回、声かけてみる。

「歯磨きしてからテレビみたら?
私も忘れるし、覚えてる内に入れ歯だけ出してくれると助かる~」
「そやね、忘れたらあかんもんね。」と洗面所へ。
入れ歯を外してケースに入れて、歯磨きをする。
で、テレビ見にリビングに戻ってくるんかな?って思ってると、そのまま部屋へ行って着替える。

まだテレビ見ててもいいのに。

眠りたいのよ

中には入れ歯を自分で外せない人もいる。
そんな時は、介護職員が入れ歯を外す。

「〇さん、あ~って口開けてくれる?」
と介護職員が口元へ指を伸ばして、上下の総入れ歯を外そうとする。
少し指先を口へ入れて、カパっと外れる時はいい。
でも、ひっかかって外れない日は「痛いんや、何すんねや!」と怒られる。
そして職員の腕を両手で抑え、椅子から立ち上がろうとする。

そこにすかさず、もう一人の職員が来てカパっと外す。
上下とも外れる日もあるけど、上だけとれて「何すんねや!」とまた怒る時もある。
片方だけ残って気持ち悪くないんかなぁ?と思いつつ。
「口ゆすがはったし、また夜中に外すは。」となる。

ベッドに行くと倒れ込むように横になって熟睡。
気持ちよさそうな寝顔を見ながら、トイレに起きてきた時は口開けてなぁ、と念じる。

今日の勝敗

「〇さん、歯、ここに入れてもらっていい?」
「イヤです。」と首を横に振って、固く口をつむぐ。
だから、しばらくしてもう一度。
「イヤです。」

小一時間ほど職員が、代わる代わるケースを持っていく。
「歯、入れてもらっていい?」って。
どうしてもイヤみたい。
お地蔵さんみたいにリビングに座って、口を閉ざして横に首振る。

「〇さんは総入れ歯やし、もうええやん。
また夜中眠ってる時、自分でベッドの上に入れ歯出さはるし。」と職員が諦める。
「〇さん、眠る前にトイレいっとかへん?」となる。
すると勝ち誇ったかのように大きくうなずく。
そう、今日は私らの負けです。

そして夜中に見回りに行くと予想通り。
総入れ歯がベッドの上にデンってある。