願いが叶うか叶わないかよりも
午前中に散歩していたら強い風が吹いて桜の花吹雪シャワーを浴びた。「気持ちいいなぁ」と思いながら、今年の桜の季節の終わりを感じた。寒い冬から蕾を見つけて楽しみにしていた桜の季節が終わる。
冬に蕾を見つけた時から「いつ咲くのかな」と楽しみにしていた桜。蕾の長い期間を経て咲いて散る。そしてまた長い期間の日々を過ごす。
桜が完全に散ってしまう前に、書こうかどうか悩んだことを書いてみよう。自分の中に秘していようかと思っていたけど、あの時に感じたことを忘れずに記して前を向こうと思ったので。
年末とつい先日、私は20年前に好きだった人に会えたらいいなと思って、それをそのまま行動にしてみた。20年前にあまりいい形ではなく会わなくなってメールも電話も着信拒否をされた。それに気づいた時に「これは本当に嫌われたんだな」と思って私もその人の電話番号もメールアドレスも消して、なかったことにしようと思った。たまに思い出すことはあったけど、ほぼ忘れて生きていた。でも時折なぜかその人が言った言葉が浮かんできて「あれはどんな意味だったんだろう？」と思ったりした。
2年前の秋に何故か急に私が思い込んでいたことは違ってたのかも知れないと思った。意識が急に変わって「アレ？」ってなった。受け止め方が突然変化した自分に驚いた。そしてその人と歩いた道を何となく辿ってみた。嫌な思い出だと思っていたことが、あたたかな思い出に変わった。
それでよかったんだけど、初めてのオリジナル曲を作っていた時にどんとを思って歌を作っていたはずが、どんとの歌との出会いや私がこんな風に文章を綴るきっかけや始まりはその人が居たからだと思って湧き上がった気持ちが歌になった。
歌が出来上がって、それでいいと思っていたのだけど今どんなことしてるのかなと思ってエゴサした。意外な仕事をしてた。その仕事内容に興味を持った。だけど着信拒否されるほど嫌われた私なので、そんな人には会いたくないだろうなと思ったし、冷静に考えて20年越しのストーカーなんてホラーでしかない。私なら嬉しいのだろうか。相手に少なからず好意を持っていたら嬉しいだろうけど、そうでなければ恐怖でしかない。
「怖すぎるな！」と思ったけれど、何だか涌いてきたその想いを無くすことはできなくて、相手にものすごい恐怖を与えてしまうのではないか？とか、複雑な感情になりながら去年の年末に思い切って行動した。どこかに居たみたいだけどわからなくて、帰る直前にそうかなぁと思う人が居たけど女性連れでいろいろ説明して話してるみたいだからそのまま帰った。帰り際に見た桜の木は堅い蕾だった。会えても会えなくてもいいと思っていたのに何故か涙が出た。
時は流れて桜が咲き始めた頃にまた行動してみた。私、怖すぎないか？と思ったけど行動してみた。その人は居なかった。居なかったけど、「いい仕事をしてるね」というメッセージを書き残して帰った。
帰り道にひとりで歩きながら「冬にも春にも会いに行って、私はその人が大好きだったんだな」と思って笑ってしまった。
20年前の20代の頃は、その人のことをよく知らないし、その人の周りにいる女の子たちはキラキラして可愛くて私はそんな風にはなれないし、好きになるのは何か怖かった。あまりに釣り合いとれてないなぁ…私があの人を好きだなんて知られたら、その人にも周りの人からも笑われそうな気がして怖かった。
だけど、20年経って会いに行ってみようと思って、何回も勇気を出してチャレンジするなんて好き以外の何でもないなぁと思って、そんな単純なことを認めないようにしてた自分がおかしかった。そして会うことはなかったけど、すごく怖くて、それでも会いに行ってみようと思って行動できたことが嬉しかった。
本当に好きな人やこと、本当にしたいことに向かっていくのは怖いけど、その心に素直になること。
会えたか会えなかったかとか、願いが叶うか叶わないかよりも、どんなにおかしいことかも知れなくても自分の本当の願いに素直になって、どれだけ近づこうとしたかが大事なんじゃないかなと思った。
そして行動できたことで何か昇華されて、もう会えなくてもいいやと思えた。思い残したものや感情は行動で昇華できたんだろうな。もしかしたら、会えなかったからこそ、そう思えたのかも知れない。きっと会えなくてよかったんだ。
2年前から浮かんできた20年前の想いは、きっとこれで忘れていく。それでいい。それでいいけど、桜の花びらが舞い散るように美しく少しずつ私の中から手放しでいけたらいい。いつかそんな風に思ったことも忘れるだろう。だけど本当に忘れてしまう前に何だか書き残したくなった。何より大切なのは、そんな気持ちになれたこと。その気持ちこそが私にとって大事だったんだろうな。
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