好きnote ３８　「人魚姫という名のイヤリング」

2022年7月5日 01:48

7年前に初めて自分にキラキラしたアクセサリーを買った。

キラキラしたものは似合わないと思っていたし、アクセサリーや宝石にあまり興味がなかった。だけど７年前の1月に知り合った亜季子ちゃんが創り出すアクセサリーは美しくて興味を持った。沖縄にご縁があるところも似ていて波長も合う。亜季子ちゃんにまた会いたいなと思ったし、亜季子ちゃんが作るアクセサリーをたくさん観てみたいと思って京都の三条にある1928ビルで行われた作品展に行った。買うつもりなどまったくなかった。なのに何故か自分にとっては高価で、似合わないと思っていたキラキラしたイヤリングを手にすることになった。

人魚姫という名前がついたイヤリング。もし買うなら小ぶりで控えめで、どんな場面にも邪魔しないイヤリングを買おうと思っていたのに、何故かこのイヤリングを目にした時にそこから離れられなかった。私にはキラキラしすぎだし、高価なアクセサリーを買ってる場合ではない時期だったのに、どうしてもこの人魚姫が気になって手に入れることにした。

その理由にタイトルが「人魚姫」という部分に惹かれたのもあった。アンデルセンの「人魚姫」が大嫌いだから。海で助けた王子にもう一度会いたいと思って自分の声と引き換えにして決死の覚悟会いに行ったのに、王子まったく気づかん上に、他の女と婚約。王子を殺せば声戻るし助かるよって言われて殺そうとするも殺せずに海の泡になりました…ってお前、ひどすぎるやろがっ！！と、人魚姫の話を読む度に腹が立ってた。アンデルセン、何してくれとんねん！っていつも思ってた。

↑人魚姫の本で1番オススメな美しい絵本↑

私は勝手に人魚姫の話を変えたかった。人魚姫は声も捨てずにもっと幸せになってええやろがい！と思って、このイヤリングの人魚姫と共にいろんな世界を見ようと思った。人魚姫を悲劇のヒロインでは終わらせへん！　幸せな人魚姫のストーリーに私が書き換えたる！　見とけよ、アンデルセン！　そんな風に思っていた。

それから7年。人魚姫を身につけて、私はいろんな場所に行ったり、いろんな場所で歌ったりした。いろんなものを見て、体験して、いろんなことを感じて生きてきた。人魚姫のように泡になりたい気持ちになったこともあったけど、逃げたくて仕方なくなりながらも、そういう時に「それもこれもぜんぶ私が引き受ける！」と受け入れる度に強く楽しくなってきた。

そんな風に一緒に歩んできた人魚姫だったのだけど、今年の冬、マスクかマフラーに引っかかったみたいで片方を落として失くしてしまった。

ショックだった。あんなに大事にしてた人魚姫が居なくなるなんて。でも、無くなってしまう時は必要なくなった時なのかもしれないと諦めていた。

だけどその話を亜季子ちゃんにすると、密かに新たな人魚姫を作りだしてくれた。もともとの人魚姫のデザインはそのままに少しパーツを変えて、輝きはそのままに。

そうやって生まれ変わるように大切に作り上げてくれた新しい人魚姫は以前より軽やかで楽しげな空気をまとってやってきた。たまたま数日前に髪を切ったので、人魚姫がより映える髪型になってた。この夏、いろんな場所に人魚姫をつけて遊びに行こう。また色んな景色を一緒に観よう。

アクセサリーと言えども、この人魚姫は、「モノ」とか「アクセサリー」の範疇を超えた不思議な力と縁を感じる。それは亜季子ちゃんが大切に創り出したアクセサリーだからという部分が大きい気がした。それは亜季子ちゃん自身も感じているようで、新たな人魚姫を手渡してくれた時に「こんなに持ち主のところに帰りたがってるのを初めて感じた」と言っていた。

ところで、このnoteを書くにあたり、腹立つだろうけど人魚姫の話を再度確認しようと思って調べていたら、こんな記事を見つけた。

アンデルセン、人魚姫は海の泡になっただけでは終わらせなかったんかい！人魚から精霊になったんかい！　精霊になるのはええけど、「人魚姫の為に親を喜ばせるいい子になりましょうね」って啓蒙もなんかちゃうと思うぞ、アンデルセン！　いい子になるとか、どうとかじゃなく、もっと人魚姫の魂を救済しろや、アンデルセン！　と、やっぱりアンデルセンとは合わへん！ってなったけど、精霊になることを人魚姫が受け入れていたならいいのかもしれない。アンデルセンはアンデルセン。私は私の人魚姫と面白い人生の冒険をして、アンデルセンには絶対書けない人魚姫ストーリーを書いてやる。って、人魚姫という名のイヤリングを好きなことを書くだけのつもりが、ほとんどアンデルセンにケンカ売ってる文章になってしもた…。