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最後まで残るもの
昨日の朝、母アサコが突然小さなアルバムを手に持ち見せてきた。
昨日なかなか眠れなくて若い頃の写真を見ていたと言う。
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愛媛の山奥の中学を卒業して神戸の美容学校に出て住み込みで働いていたアサコ。神戸の祖父母は実は養父母。
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ひいばあちゃんの旦那さんが近所の奥さんと不倫の末に逃げて、その奥さんところの子どもも引き取ったひいばあちゃん。
貧しくて長女は九州の富豪の妾に出されたそうで、そこで生まれたのがアサコなのである。
貧しくて修学旅行に行くことができなかったらしいが、中学のソフトボール部では4番サードで活躍してた為にユニフォームは周りの大人たち、先生たちが協力して作ってくれたらしい。兄の中学時代に父兄参加の球技大会ではスライディングして「お母さん無理しないでください!」と先生たちを慌てさせたアサコ。
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忘れがちだが、みんな子どもだった頃や、若い頃があって、それぞれにいろんな思い出がある。
歳をとると最近のことは忘れてしまいがちだが、昔のことは覚えているエピソード記憶というのがある。
幸せな記憶や楽しかった記憶というのは、お金では買えない財産になる。人が死ぬ時に持って行けるのは肩書や名誉やお金ではなくて「思い出」しかないのだ。
母の貧しかった思い出は、芋ばっかり食べてたとか、コートがないからいただきもの寅の敷物を被って学校に行ったとか、いろいろ面白い。母からお金にまつわるネガティブな感情も引き継いでしまったところもあるが、お金がなくても愉快な部分をもっと重視して美点に思ってもいいんじゃないかと思う。それは恥ずかしいことじゃないのだから(本人たちは悔しくて嫌な思いはたくさんあっただろうが)。
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最近は買い物先にものを忘れていたり(私が取りに行く)、かなり忘れてしまうことが多いけど、きっとこの写真の中のことは覚えているのだろうな。
介護施設で一時もうダメかもと思った利用者さんが復活した時、施設に来てからの記憶がごっそりなくなっていた。たくさん話したり、一緒に歌ったことも忘れてるし、私のこともわからないんだなぁと少し寂しくなったが、忘れても相性が合う人は新しく出会い直しても信用してくれるようだ。
いつか母が記憶をなくしても、そういうことを私は覚えていようと思う。
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