アールとジンと。

 うちには犬と猫がいる。犬の名前はジン、猫の名前はアールだ。



 アールの出生についてはわからない。野良猫だったのを保護されたとか何やらかんやら。詳しく聞いたことはない。

 元々、アールはうちの家族になる予定ではなかった。
 里親を探す間、面倒を見てくれと兄貴に頼まれて預かっただけである。初めての対面。初めて訪れる部屋に戸惑い、ベッドの下に隠れた名もなき大人しい猫であった。部屋に慣れるまでは放置していたら、徐々に慣れてきて行動をするようになった。臆病ながらも少しずつ少しずつ。
 その様子を眺めていたら、このまま離れたくないなという気持ちになったので、兄貴に伝えて引き取った。
 名前をつけるとなったとき、何故か頭の中で紅茶が浮かんだ。この子の毛並みの色合いと紅茶が似てるなって思ったんだろうか。
 なので、「アールグレイ」から「グレイ」を取って、アールにした。多分正式名称は「アールグレイ」なのかもしれないけれど、呼びやすいようにアールとした。
 大人しく、周りに気を使う、寂しがり屋だけど強い子。可愛らしい目と鍵尻尾が特徴の子である。
 モフりに行くとたまに「ニャッ」ていうのがたまらなく可愛い。そして、全然怒らない。

 

 こちらがシルバートイプードルのジンである。
 出会いはペットショップ。唸りながら、おもちゃで遊ぶ彼の姿は未だに覚えている。
 えっ?怒ってんの?って思うほどに唸りながら尻尾をぶんぶんふってたのが面白くて、こいつと暮らそうと思った。

 今でこそキレイな銀色の毛並みになってるけど、小さい頃は真っ黒だった。本当にここから色が変わるのか?と思うほどに。
 当初の心配を余所に、ジンもキレイなシルバーになった。本当に美しいな。
 なまえをつけるとき、この子のイメージとして浮かんできたのが「迅」という漢字だったので「ジン」にした。
 素早い風が草原を抜けていくようなイメージというか。何か風みたいなものがイメージにあった。なので、この子は迅でありジンなのだ。
 遊んでるとすぐ唸る。一人で唸りながらおもちゃを運んだり、その場でブンブン振り回す。
 アールを触りに行くと、すぐに鳴き出す。結構なかまってちゃんである。


 犬と猫と暮らしていると、とても面白い。ジンがアールを追っかけたりするのだが、猫は高いところにジャンプして逃げることが可能なのだが、犬は高いところへは移動できないので、その場でクルッと回ったりしている。たまにちょっとジャンプするのだが、跳躍力が違いすぎて微笑んでしまう。
 アールは適度な距離感を保ちたいのに対して、ジンはガンガンに距離を詰める。甘えん坊なんだよね。

 たまにアールが俺に甘えにくるときがあるのだが、そのときに限ってジンが「僕もかまってー!!」という圧で近寄ってきたり、アールの背中や俺の右手などを前足でひっかいたりしてくる。普段はそんなにアピールせんくせに他の子が優遇されるとなるとすぐにこれになる。
 困ったもんだが可愛いものだ。アールも「はいはい、やれやれ…」といった様子で離れていく。そのままジンが甘えにくるのかと思いきや、全然来ない。
 むしろ、邪魔だけして満足してるときが多い。

 アールは注射が嫌いである。しかし、爪を立てて嫌がるほど、逃げ出そうとするほど嫌いというわけではない。諦めを知ってるかのごとく、弱々しく鳴くのである。
 撫でると鳴かなくなるから、案外注射が嫌いというわけではなさそう。注射されてても大人しいしね。よっぽど我慢強いのかもしれないが…。

 ジンに至っては尻尾をブンブン振りながら注射に向かう。めちゃめちゃ嫌がる犬が沢山いる中で、病院に着いてからも診察してもらってる時も嬉しそうである。全く人に対して警戒心がないし、注射を射たれても平気な顔してる。
 むしろ、注射されてる?と、心配になるほど。でも病院に行くのは楽なので、助かっている。

 アールとジンは俺が部屋にいないときに限って、くっついて寝たりするくせに俺が部屋に戻るとすぐ離れる。密会がバレたときのカップル並みの離れ方だ。別に仲悪いわけじゃないから、普通にしてろと言いたくなる。
 くっついてる写真を撮りたいけど、全然撮らせてもらえないもどかしい日々が続いている。しかし、いずれ撮る。だって、家族だしね。たまたま偶然出会っただけかもしれないけど、一緒に生活している家族だから。
 そんな目標を掲げながら、これからも生きていく(?)

 これからも皆で仲良く適当に暮らしていこうな!!!


 


 



 

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